2017/02/12

【首都高速】インフラドクター、活躍の舞台はタイ! 道路維持管理のノウハウ売り込む


 「インフラドクター」、海を渡る--。首都高速道路会社は、道路インフラの維持管理業務を高度に管理・支援するシステムの海外展開に本格着手した。タイの高速道路公社(EXAT)が管理する道路構造物を対象に、3次元点群データを昨年末までに計測・収集。今後、インフラドクターのシステムに取得したデータを取り込んだうえで、3月にEXATに説明する。宮田年耕社長は「将来、タイのニーズに合致したインフラドクターシステムのカスタマイズを実施したい」とし、2018年末を目標に進めていく。

◆GISと3次元点群データを活用
 インフラドクターは、GIS(地理情報システム)と3次元点群データを活用した道路・構造物の維持管理を支援するシステムで、▽GISプラットフォーム▽点検結果台帳▽3次元点群データ活用--の3つの基本機能を備えている。

タイを走るMMS(計測車両)

 首都高速道路会社のグループ企業で、首都圏の道路・構造物の維持管理業務を受託し独自のノウハウを蓄積している首都高技術(東京都港区)と、3次元形状処理とデータ交換の専門的な技術で多くの製造業者の開発プロセス改善を支援してきたエリジオン(浜松市)、さらにGIS技術、自社所有のMMS(計測車両)を使った道路情報の取得・解析技術を持つ朝日航洋(江東区)の3社が共同開発した。

◆高架構造など類似点が多いタイの高速道路
 首都高速道路会社は、これまでに、EXATをはじめ、バンコク高速道路・地下鉄(BEM)、ドンムアン有料道路(DMT)、運輸省国道局(DOH)など、タイの高速道路管理者と技術協力の覚書を結んでいる。さらに、同国のタマサート大シリントーン国際工学部(SIIT)と技術協定に関する覚書(MOU)を2015年7月に締結。同年12月には、MOUに基づき、SIITと首都高技術との間でタイ版インフラドクター開発にかかわる共同研究覚書を締結し、研究を開始した。また、昨年9月には、インフラドクター活用による提案が経済産業省の「新興国市場開拓等事業費補助金(質の高いインフラ詳細事業実施可能性調査事業・東南アジアにおける交通インフラ維持管理技術の効率化事業)」にも採択されている。

タイの高速道路管理者と綿密な打ち合わせを行った

 タイの高速道路は、9割以上が高架構造で、バンコク中心部にODA(政府開発援助)によって整備した長大斜張橋など建設から30年以上経過するものが10%程度を占めている。「供用から50年以上が約10%を占める首都高速道路と比べて20年程の供用年数に開きがあるものの、高架構造が大半を占めるなど類似点が多い」(首都高速道路会社)。

3D点群データで道路構造物を視覚化

 3次元点群データの計測・収集は、EXATが管理する道路構造物を対象に、昨年11月から12月にかけて実施。長大斜張橋、PC連続高架橋、都心部のジャンクションなど計5カ所のデータを取得した。今後は、EXATなど関係者へのプレゼンテーションを行うとともに、同国のニーズを把握する。その上で、18年末を目標にタイのニーズに適したインフラドクターシステムを構築する。
 高速道路の維持管理が国際的にも重要になる中で、タイを足がかりに、高度に管理・支援するインフラドクターを海外展開していく。 

■新スマートインフラ管理システム 17年度から国内で本格適用
 首都高速道路会社は、国内でも効率的な維持管理に向けた取り組みを加速させる。調査・設計、施工、維持管理までの全情報をデジタルデータとして統合管理する新たなスマートインフラ管理システム「i-DREAMs」を、2017年度から本格運用する。
 同システムは、設計、建設、維持管理のプロセスで、判断が必要な各データを速やかに確認でき、維持管理計画の作成を支援する。インフラドクターやICT(情報通信技術)を使った新技術を取り込むとともに、損傷推定AI(人工知能)エンジンを中枢としたシステムとの対話から損傷、補修・補強を自動検知し、効率的な維持管理を実現する。
 具体的には、現状に合った構造検討や、システム上で検討資料の確認ができるなど、調査・設計と施工の効率化につながる。総合的な視点から診断・評価が可能になるほか、接近が難しい個所も含めて、構造物の変状、浮き・はく離などを定量的に把握できる。
 また、CAD図と構造解析モデルの作成を支援し、劣化診断・予測解析につなげる。損傷推定AIエンジンによって、交通量や環境条件データから構造物の劣化状況や進展性を推定し、補修時期や補修工法の決定を支援する予測保全も実現する。
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