2017/01/31

【現場最前線】待っている人のために! 飛島建設が施工する復興工事が終盤戦


 飛島建設が、東日本大震災からの復興に向け、進めてきた復興道路の整備工事と災害公営住宅の建築工事が終盤戦を迎えている。「避難している方々のために、1日でも早く」という思いで、数々の難題を乗り越えている現場のいまを追った。写真は陸前高田道路工事の竹駒工区。ダンプや重機が行き交う

■国道45号陸前高田道路工事
 震災で壊滅的な被害を受けた三陸沿岸部を通る国道45号。「国道45号三陸沿岸道路」は、現道より内陸側の自動車専用道路として整備が進んでいる。飛島建設は、宮城県気仙沼市~岩手県陸前高田市を結ぶ「唐桑高田道路」(長さ約10㎞)のうち、陸前高田市内の(仮)長部インターチェンジ(IC)~陸前高田ICの高架橋とトンネルを除く盛土・掘削区間である「国道45号陸前高田道路工事」(発注者=国土交通省東北地方整備局)を担当している。長部、丑沢、今泉北、竹駒の4地区に担当工区が分散しており、掘削区間の土砂を盛土区間に運び込んでいる。工区が点在しているだけでなく、都市再生機構による高台移転工事や防潮堤新設、三陸沿岸道路工事、災害公営住宅工事など複数の工事が同じ地域内で進んでおり、27日だけでも、他工区からの受け入れも含めて56台のダンプが稼働していた。
 2014年10月のスタートから先行工事の遅れなどにより着手がずれ込み、2度の契約変更で工事内容も大きく変わってきた。工事の最もポイントとなるのは、盛土区間の竹駒地区での土の搬入計画だ。掘削区間の長部地区からだけでなく、他工区からも土を受け入れている。武氣士郎所長は「1日当たりダンプ延べ300台、2万4000m3に及ぶ土の受入量を一定に保てるよう確実に実施することがポイント」と話す。

長部地区における路床面までの道路掘削で、中硬岩が露出したため、発破掘削を行っている。使用したダイナマイトは、2・6kg×50本。発破1分前のサイレンを合図に担当者がスイッチを準備。発破の見た目は地味だが、撮影場所にいると腹に響く衝撃がある。

 当初の工期末だった3月末からは延伸する可能性が高いが、契約変更を含めた現在の工程と比べればほぼ計画どおりで、16年12月末の進捗率は73%。毎週、発注者や他工区との工程会議で掘削場所と盛土場所の調整を図っており、「発注者と各工区がそれぞれの立場で土排出計画を進めることで着実に進められる。18年度の開通に向け、今年度の少しでも早い時期に完成させることが使命。作業員も一体となって、効率的・安全に作業を進めたい」と意気込みを語る。

■南三陸町志津川中央災害公営住宅

南三陸町災害公営住宅A、B、C棟

 津波で町全体が流された宮城県南三陸町では、「南三陸町志津川中央地区災害公営住宅建設工事(第6工区)」(発注者=都市再生機構)と「同(第7工区)」(同)の実施設計・施工を飛島建設・志津川建設JVが担当している。第6工区はRC造4階建ての賃貸住宅2棟(A棟、D棟)総延べ4624㎡、第7工区はRC造4階建ての賃貸住宅2棟(B棟、C棟)と平屋建ての集会所の総延べ3866㎡。
 2015年3月から実施設計に着手し、同12月に工事契約を結んだ。ただ、着手当初から、床付面が予定より1m弱も深いことが判明し、ラップルコンクリートを打つことになった。さらに、床付面の岩盤の間に砂層が発見され、載荷試験の結果、B、C、D棟で耐力の不足が確認された。対策として、基礎断面を大きくすることになり、計画変更を提出し直すことになった。結局、着手日が14-40日遅れた。
 当初の作業人員の計画が崩れ、「予定人員をゼロベースから見直さざるを得えなかった」(三田村信所長)。北海道や首都圏も含めて各方面の協力会社や生コンプラントと再調整して何とか着手し、上棟の際には遅れを9-30日にまで詰めた。修正工程表では、引渡日を延長することなく、完成日に近付いている。
 この踏ん張りには、三田村所長の被災地への強い思いがあった。宮城県柴田町出身で、入社後、県内の「宮城県慶長使節船ミュージアム」や「石ノ森萬画館」を手掛けてきた。震災時は、東日本建築支社勤務だったが、すぐに東北に戻り、仙台市内のホテルや慶長使節船ミュージアム、石ノ森萬画館の復旧に駆け回った。だからこそ、「待っている人がいることを考えれば、そう簡単に工期延長を言い出せない」と工期への思いが強かった。
 16年12月末の進捗率が89.5%で、最後の検査段階に入っているが、3月20日の工期末は迫っている。「これまでの無事故・無災害を引き渡しまで達成し、雪などの自然条件があっても工期延長せずに頑張る」と力強く語った。
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