2017/01/25

【大高正人】業績振り返るシンポ 都市と建築をつなぐ触媒の役割に注目 展覧会は2/5まで


 建築家・大高正人氏の展覧会「建築と社会を結ぶ 大高正人の方法」を開催している国立近現代建築資料館は21日、東京都港区の全日本海員組合で大高正人氏の業績を振り返るシンポジウム「大高正人の出発点を語る」を開いた=写真。パネリストには曽我部昌史氏(みかんぐみ・神奈川大教授)、藤原徹平氏(横浜国大大学院準教授)、藤本昌也氏(現代計画研究所取締役会長)、増山敏夫氏(すぺーすますやま代表)、松隈洋氏(京都工芸繊維大教授)らが参加し、大高氏の作品を論じた。

 坂出人工土地や横浜の都市デザインなど具体的な活動を紹介した曽我部氏は傾斜地住宅や横浜の水辺など「建築と都市が融合する状態」を実現した事例を挙げ、大高氏がレム・コールハースから受けた強い影響を指摘した。続いて藤原氏は大高氏の特徴を「水際開発と引き替えに高度経済成長を実現した怒りがある」とし、工業機能の集約化と自然を残すことが都市・建築・地形を融合した背景にあると語った。
 また大高建築設計事務所で設計に取り組んだ藤本氏は、大高氏のもとで全日本海員組合を設計した経験から「内部と外部をどうつなぐかを考え続けた建築家だった」と振り返った。「(最近は)建築家が建築をつくりこみ過ぎてしまうことがあるが、(大高氏は)都市と建築をつなぐ触媒の役割を果たそうとしていた」という。
 シンポジウム後、司会を務めた野沢正光氏(野沢正光建築工房代表)は「戦中に学生時代を過ごし、戦後の荒廃した風景をどうするかを考えたことが原点にあったのだと思う」とした上で、「建築を信じながら、風景をどうつくるのか。濃密な日本の風景への信頼を抱いた建築家だった」と総括した。
 展覧会「建築と社会を結ぶ 大高正人の方法」は2月5日まで公開している。
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