2016/11/18

【現場最前線】タイルとアーチルーバーの映える「濱江多目的センター」 熊谷組の台湾現法「華熊営造」


 1974年に設立された熊谷組台湾現地法人の華熊営造は、04年完成当時に世界一の高さを誇った「台北101」を始め、これまで台湾国内で数々の実績を積み重ねてきた。現在、同社が台北市で建設を進めている現地大手ディベロッパー「忠泰建設」発注の同社従業員向け福利厚生施設「濱江多目的センター」の現場では、厳格な品質管理を実施し、特徴的なデザインの実現を目指している。中でも、外壁仕上げへの乾式タイル工法の採用は台湾では珍しく、南克己所長は「試行錯誤しながら工事を進めている」と力を込める。

 建設地は台北市中心部へと向かう主要幹線道路や南北の2本の高架高速道路、台北松山空港に囲まれた立地。センターは立面の4面に加え、飛行機の離着陸時に見える屋根面を含めた計5面を主要ファサードとして採用された。タイルとアーチルーバーで構成された外観デザインの特性から外部に柱を設けられないため、外壁に鋼板を入れる構造となった。厚さ25mm、16mm、10mmの3種類の構造鋼板を場所によって使い分け、1500mmピッチで補強リブを設置。その後、コンクリートを圧縮空気でメッシュ筋に高速で吹き付けるショットクリートで、工期短縮やコスト削減を図りつつ外壁の構築を進めた。

 コンクリートの吹き付けでは表面の不陸を管理するため、1.5-1.8mごとに基準材を配置したほか、1日当たりの施工数量を50㎡以内にコントロールし、無理のない品質管理に取り組んだ。あわせて、表面不陸の検査も実施しプラスマイナス3mm以内の管理を徹底した。南所長は「乾式タイル工法ではレールの精度がすべてタイルの表面に現れる。そのため、ショットクリートの表面精度には特に気を遣っている」と明かす。

厚さの異なる2種類のタイルを使い分けている

 外観を特徴付けているタイルは、厚さ20mmと45mmの2種類を使っており、「タイルの厚さが違うので乾式工法でないと対応できない」(稲豊彦董事長)ことなどから乾式工法の採用を決めた。外壁への乾式タイル工法の採用は台湾では珍しいため、事前にテストを実施してから業者を選定した。タイル割りは計9パターンで、目地幅も8-60mmの9タイプとなり、使用する約6万6000枚のタイルは日本から取り寄せた。タイル表面には防汚剤を全面に塗布し、高速道路からの粉塵による汚れを防いでいる。

計25基のルーバーはすべて大きさや形が異なる

 建物上部には平面に9基、コーナーに3基の12基、下部には13基の計25基のアーチルーバーを設けてるが、すべて大きさや形が異なるため、事前に工場で組んでから取り付けられている。アーチルーバーには照明が設置されており、夜間にも存在感のある建物のデザインが映えるように設計された。稲董事長は「さまざまなところから見られることを考慮されてデザインされている」と明かす。
 忠泰建設濱江多目的センターの規模はS・SRC造地下3階地上6階建て延べ8905㎡。建築設計は青木淳建築計画事務所、王克誠、林連璋建築師事務所、構造設計はARUPジャパン、東建工程顧問、設備設計はARUPジャパン、林伸環控設計、照明設計は岡安泉照明設計事務所が担当。工期は13年11月21日から17年4月20日まで。さまざまな方角からの視線と終日の大きな交通騒音に対応するため、開口の大きい低層階と高層階をレセプションルームやVIPラウンジなどゲストを迎えるエリアとし、中層階はレクチャールームやスポーツジムなど研修や福利厚生に活用するエリアとして機能配置されている。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿