2016/08/14

【日建設計】良い仕事は健康から! 運動不足の設計事務所を保健師が変える


 設計活動に没頭し、気付けば生活のすべてを建築にささげていた--。そんな建築設計事務所のイメージを変えるような取り組みが始まっている。日建設計の東京本店では保健師の提案を受け、6月から外部トレーナーを招いたエクササイズ「ラウンド・リフレッシュ」を開始した。「人が財産」と言われる建築設計事務所で、社員の健康をどう守るのか。保健師として同社社員の健康管理に努める坂本侑香さんと諏訪佳世さんに聞いた。

 企業や自治体などで病気の予防やさまざまな健康増進活動に取り組むのが保健師の仕事だ。日建設計では、社員の健康状態調査において日常的な運動不足が顕著に見られたため、特に「運動」を重視した取り組みをしていると坂本さんは言う。「(社員は)ものづくりが好きで、仕事へのモチベーションが高い。仕事に熱中している人が多いため、運動も習慣にしてもらいたい」とその狙いを説明する。
 ラウンド・リフレッシュ活動以外にも運動会の開催やラジオ体操、階段利用の推奨などその活動は多岐にわたる。「良い仕事をしてスキルアップするためには、健康で体力があり、集中力を保つことが不可欠」と強調し、「そのための環境を整え、働きながら健康になれるようにする」ことが保健師の役割だという。
 ただ、運動習慣の確立には継続的な取り組みが不可欠だ。自らの健康をデザインできる社員を増やすため、日常的な運動活動を通じて「ヘルスリテラシー」を身に着けてほしいと語る。「保健師にできることは限られている。自分が健康に働くために必要な情報を選択して実践できるようになってほしい」と期待している。
 社員への運動を啓発するうちに、予想外の効果を実感することもあった。その1つがコミュニケーションだ。「仲間と職場で体を動かすことでコミュニケーションも生まれ、健康だけでなく仕事にも役立つ面もあった」と諏訪さんは指摘する。特にラウンド・リフレッシュ活動は普段の執務スペースで実施しており、業務の気分転換としての効用を実感する機会も多いという。「打ち合わせが行き詰まり、重い空気に包まれていたが、体を動かしたことでスムーズにアイデアを出すことができた」と社員の評判も上々だ。設計部長自らが部下に参加を促すことも珍しくない。

社員の健康を守る坂本侑香さん(左)と諏訪佳世さん

 保健師など専門職能を活用した企業の健康増進活動はメーカーなどを中心に増加傾向にあるが、建築設計界への導入事例は少ないのが現状だ。
 こうした業界意識に対し、諏訪さんは「健康でなければ良い仕事にはならない」と断言する。「設計はモノを売る仕事ではなく、新しいアイデアが求められる仕事だ。価値ある仕事をするためには、健康な状態で最大限の力を発揮できる環境をつくらなければならない」と企業を挙げて健康増進に取り組む重要性を指摘する。
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