2015/10/31

【建築文化週間】学生WS「Architecture EXPO!!」 ゲーム形式、SNS利用で「新たな出会い」探る


 日本建築学会が主催する建築文化週間2015に合わせ、東京都港区の建築会館で学生ワークショップ「Architecture EXPO!!」が2日間にわたって開かれた。学生や一般市民が「常識を打ち破れ」を合言葉に、著名な建築家や学者などゲストに頼らない新たな建築イベントの姿を掲示した。代表を務めた東大大学院の吉備友理恵さんは「新しい建築の時代が到来しようとする中で、ワークショップも今まで当たり前だったことを今までにない形で問いかける機会にしたかった」と今回の企画背景を明かした。写真は全員参加型コンペティションの様子。

 両日とも建築系学生を中心に全国から参加者が集まり、建築や都市について議論を交わした。
 初日の10月10日はゲーム形式のまち歩きイベント「BATTLE IN TOKYO」を開いた。参加者をいくつかのチームに振り分け、建築会館を中心に港区内を散策して都市や建築の魅力を写真で撮影してSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に投稿した。情報共有した人からの反応の多さをグループで競い合った。
 グループ間の勝敗をゲーム参加の動機付けとしたほか、ストーリーや衣装、演出で没入感を高め、従来のまち歩きイベントにはない熱狂を生み出した。情報をSNSで共有することで建築専門外の市民からの反応を増やし、建築への関心を高める一助とした。

まち歩きイベントで建築写真をSNSに投稿、反応の多さを競った

 青山エリアを担当し、隈研吾氏が設計した「サニーヒルズ」などを見学した日大理工学部2年の小嶋玲香さんは「自分が良いと思っても他人と共有できないことがあると実感した。初めて出会う人とのまち歩きは、異なる価値観と出会うきっかけになった」という。
 最終日の11日は、全員参加型のコンペティション「建築アカデミー賞」を開いた。「現在、問われているコンペのあり方や建築に対する考え方を問い直したい」(吉備さん)という問題意識の下、聴衆全員が審査員としてコンペに参加し、学生の発表を評価した。
 発表内容は建築設計やプロジェクトのほか、構造・環境・材料など多岐にわたったが、発表者と審査員が議論して審査の評価軸を決定することで問題意識を共有しながら参加者全員に当事者意識を抱かせる新しいコンペと議論のあり方を模索した。
 広島県を中心に活動する建築系学生団体「scale」の取り組みについて発表した近畿大学工学部3年の守本怜矢さんは「全国の学生が建築に対して抱く強い思いを知り、大きな刺激を受けた」と興奮気味に語った。「ここで得た経験と刺激を広島に持ち帰り、地元の建築や都市を盛り上げる活動をさらに展開していきたい」と力を込める。
 今回の学生ワークショップに企画段階から携わった建築家の松田達氏は、まちを歩く身体性を重視した初日と全員参加を促す最終日のプログラムの傾向から今回の学生ワークショップを「今の若い世代の気質を象徴するイベントだった」と分析する。「今までの学生ワークショップは実際の建築をつくるものづくり的な方向性を持っていたが、従来とは異なる建築のとらえ方が見えてきた」という。
 全国の学生が一堂に会する場を設けることは「普段出会わない人間とのネットワークを構築するという日本建築学会本来の役割だ」とし、「いまはSNSが普及し、簡単に多くの人間とつながりが持てるようになった。しかし、こうして実際に顔を合わせる機会を大切にすることで学生に建築が社会的な活動であることを実感してほしい」との考えを示す。
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