2015/10/10

【木造高層化】CLT(直交集成材)に熱視線! 構造基準告示で地域材活用に弾み


 「2016年度は木材加工業界にとってのターニングポイントになる」と、日本CLT協会の中島洋事業部長は手応えを口にする。一般社団法人化から1年半が経過し、会員企業は250社に手が届く勢い。最近は月に十数社の割合で会員数を増やしている。欧州生まれのCLT(直交集成材)=写真=は国産材活用の流れを追い風に、日本でも法整備が進み、16年度早々には普及の足がかりとなる構造基準が示される見通しだ。木造の高層化が現実のものになると、建設業界や住宅業界が一斉に目を向け始めた。

 CLTの歴史は1990年代に始まる。第2次世界大戦時に森林の大量伐採を行った欧州では終戦後に植林対策がスタートし、それら森林が伐採適齢期を迎えていた。ひき板を繊維方向に交互に直交させながら接着するCLTは新たな構造材として注目を集め、瞬く間に広がった。現在の最大高さはオーストラリアのメルボルンに建設された10階建て共同住宅。ノルウェーには14階建ての建設も進行中で、世界的にCLTを採用した高層木造建築の動きが目立ってきた。

海外では高層プロジェクトで拡大している

 日本でのきっかけをつくったのは、集成材大手メーカーの銘建工業(岡山県真庭市)だった。木材輸入先の欧州で強まっていたCLTの動きを視察した中島浩一郎社長が国産材利用の切り口として国の委員会などの場で提案する機会があり、それが協会発足の道筋をつくった。同業の山佐木材(鹿児島県肝付町)や協同組合レングス(鳥取県南部町)とともに、任意団体の日本CLT協会を発足したのは2012年1月のことだ。
 2年間かけてCLTの日本農林規格(JAS)認定を取得し、製品としての道筋を広げ、14年4月には運営母体も一般社団法人へと発展した。中島社長は協会長として、CLT普及の旗振り役を担う。現在は物件ごとに大臣認定を取得しなければ構造材としての利用ができず、完成したのは5棟にとどまるが、内外装に利用するケースは着実に広がりを見せている。
 日本も欧州と同様に戦後の植林政策によって、スギを中心に適齢期を迎えた大量の森林があるものの、使われているのは全体の5分の1程度にとどまる。林野庁と国土交通省は16年度に基準強度と設計法を告示し、大臣認定によらない簡易な採用ルートを確保する。これに呼応するように、協会は高層建築への対応を見据え、耐火認定を17年度までに取得する計画だ。
 「いよいよ木造高層化が動き出す」と、CLT活用に向けた企業の鼻息は荒い。一般社団法人化の際に103社でスタートした会員数は15年に入って200社を超え、現時点では246社を数える。住宅、建材、金具などのメーカーに交じり、大成建設や清水建設などゼネコンの姿もある。法整備が近づくにつれ、会員数も増加する可能性が大きく、15年度中にも300社を超える見通しだ。
 グループ会社の事務所棟建設プロジェクトにツーバイフォー工法とCLTの組み合わせを試みる三井ホームでは「売上げの1割を占める非住宅分野開拓の重要な技術」(清野明生産技術本部管事)としてCLTを位置付ける。長崎県佐世保市のハウステンボスに建設されるスマートホテルプロジェクトの第2期棟では、設計・施工の鹿島が住友林業と連携する形で構造の一部にCLTを導入する。集成材メーカーも設備投資に積極的だ。けん引役の銘建工業は需要拡大をにらみ、既に大規模加工機を導入済みで、同業他社も追随する構えを見せている。

佐世保のスマートホテルプロジェクトでは、第2棟の構造の一部に採用される

 CLTの強みは、高い施工性にある。ロンドンに建設された8階建てプロジェクトの工期はRCと比べ6週間短縮の12週間。工場で製造されたパネルを専用金具を使って現場で組み立てるため、大幅な工期短縮が実現できる。ただ、コスト面の課題がついて回る。CLTの厚さは通常210mm程度だが、高層になれば厚さ450mmにも達する。価格構成は木材価格が8割程度を占め、製造費用は2割程度。ツーバイフォーと比べた場合、木材使用量は2倍強となるほどだ。
 とはいえ、地方自治体では地域材活用を優先する流れとなり、構造基準が告示されれば、公共建築への広がりは一気に加速する可能性を秘めている。業者選定が進む新国立競技場でも、CLTなどの木材利用が促されている。
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