2015/08/01

【素材NOW】現場トイレを変える! 「どこでもトイレプロジェクト」が目指す臭いなき仮設トイレ

「仮設トイレという悪いイメージを改めるチャンス」と、日本トイレ研究所の加藤篤代表理事は、国土交通省と共同の『どこでもトイレプロジェクト(仮称)』がスタートすることに、大きな期待を抱いている。災害時や野外の公営イベントでは欠くことのできない仮設トイレだが、一般的に常設トイレには劣る印象を持たれている。「過酷な建設現場のトイレが改善できれば、その波及効果は大きい」と先を見据える。

 国交省では1事務所3現場程度でモデル現場を選定し、良質な現場トイレの検証に取り組むことを決めた。官房技術調査課の久保宜之事業評価・保全企画官は「あえて仮設トイレという表現を使わず、より親しみやすい言い回しを浸透させたい」と前向きだ。東日本大震災では仮設トイレが活躍したが、長期間使い続けた場合には品質低下や臭いなどの問題も浮上した。現場のトイレを足がかりに、公衆トイレのあり方も見据える『どこでもトイレプロジェクト』の意義は大きい。
 24日には東京都品川区の357号東京港トンネル(その2)工事現場でトイレ研主催の視察が行われた。オブザーバー参加した国交省担当者とともに、施工を担当する大林組・鹿島JVとの活発な意見交換も実現した。150人が働く現場では女性が5、6人と少ないが、事務所のトイレは男女別々。「快適な職場環境をつくりたい」という半田剛所長(大林組)の判断で、温水洗浄便座の機能も完備した。

大林JVの現場と意見交換
現場では、トイレ横にある打ち合わせ室の声が漏れ聞こえることから、壁に防音パネルを取り付けたほか、女性を配慮してトイレ入り口に仕切りも設けた。国交省では直轄工事の建設現場に水洗トイレの整備を促しているが、施工ヤード内は下水設備を設けることが難しい。都心部の同現場でも、排せつ物をためておくパックトイレを使っているのが実情だ。
 トイレ研は屋外のトイレ環境を考える際に、臭い対策を重点課題の1つに位置付けている。視察ではシキボウ(大阪市中央区)が開発した消臭加工液『デオマジック』を紹介した。販売を担当する凸版印刷の工藤祥一郎氏は「乳幼児の糞便臭を良い匂いに変える商品だが、成分や使い方を工夫すれば、現場トイレの臭い対策にも効果を見いだせる」と自信をのぞかせる。
 臭い対策については、半田所長も「地元住民への配慮として、現場でしっかりと対応することが必要」と賛同する。デオマジックの消臭加工効果を確かめるため、現場では自主的にサンプル調査に乗り出す予定だ。トイレ研の加藤代表理事は「人に感覚があるように、臭い対策も幅を設けた対応が必要になる」とポイントを挙げる。
 どこでもトイレプロジェクトの目的は、現場トイレの標準化。コスト重視の製品が多いだけに、現場要求を満たした良品が製品化できるか否か。仮設トイレメーカーにとっては臭い対策も強く求められそうだ。
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