2015/08/11

【本】災害列島に生きる“日本人”とは 大石 久和著『国土が日本人の謎を解く』

帯に、日本人が再び羽ばたくための処方箋(花田紀凱WILL編集長)、災害列島が日本人の思考に何をもたらしたのかを解く(安部順一中央公論編集長)――などの賛辞が躍る。
 前著『国土と日本人』(中公新書)は「国土学」の教科書的位置付けだったが、本書は、国土の自然条件と、そこでの経験が民族の個性を規定すると定義するならば、「日本人であることへのこだわりを捨てて国際人として振る舞えるわけなどない」と説く“日本人論”である。

 地震、津波、火山活動、風水害、それらが飢饉にも結び付いたわが国“自然災害史観”と、自然災害が少ないから積み重なる歴史があり、民族問題・信教の違いを内包する欧米“紛争史観”。国土条件の違いからヨーロッパに育った「公」、日本に育った「共」、中国の「権力」という構造が、どう民族を決定付けていったか、これからどう行動しようとするかという点までをも見通す。
 島国・日本の国土が、長い歳月を通じて、世界に誇るべき日本のアイデンティティーを育んできたことを踏まえながらも、決して日本人礼賛に終始しない。むしろ戒めも添えながら「日本人とは何か」を深耕する。グローバル化やダイバーシティが求められる昨今、日本人が世界で活躍するために知っておくべき大切な知識が詰まった1冊だ。
(産経新聞出版、1300円+税)
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