2015/03/28

【現場最前線】綿密な情報共有で近接工事に取り組む 新たなランドマーク「新宿駅新南口ビル」

世界最大級のターミナル駅であるJR新宿駅で、東日本旅客鉄道(JR東日本)が2016年春の完成を目指し『新宿駅新南口ビル(仮称)新築工事』を進めている。オフィスをメーンに、商業施設、文化交流施設からなる延べ約11万㎡の“新たなランドマーク”を創出するプロジェクトだ。その陣頭指揮をとるJR東日本東京工事事務所の牧野俊司新宿駅開発課長が「3月末までに最上階の33階部分まで上棟する」と語るように、南口エリア一の高さ約170mとなる高層複合建築の全容が現れ、今後、設備や仕上げが本格化する。「今夏から秋にかけて最盛期を迎える」現場には、現在の倍となる約1000人が従事する見通しだ。

 巨大ターミナル駅に直結している点が、この現場の大きな特徴だ。国土交通省が建設中の「新宿交通結節点」(交通ターミナル)とも一体化し、人々が回遊する新しい交流拠点を形成する。建物をL字に囲む形で国道20号と、新宿交通結節点をつなぐ導入道路整備も計画されている。また、基礎杭は国道20号に沿って通っている都営地下鉄10号線のシールドを避けるように構築した。

国道20号に面し、JR新宿駅と直結する高層複合施設。手前の「新宿交通結節点」と
一体化し、新しい交流拠点を創出する
JR埼京線との近接工事ともなるだけに、「鉄道運行やお客さまの動線に影響を与えない」(牧野課長)ことが大命題。施工時間も厳しい制約を受ける。工期短縮のため、逆打ち工法を採用。近接部分は近隣関係者の理解を得ながらの夜間作業も含めた「後工区」とし、「先行区間」を追いかけるように2段階に分けて工事を進めている。
 牧野課長は「こうした近接施工での監理が特に重要」とした上で、「土木工事と建築工事の取り合い部分の品質や工程面も含めて、施工者とともに調整し整合性をとりながら進める」ことを施工上のポイントに挙げる。
 数多い関係者との調整会議は分科会を設けて綿密に行っている。2日に1回、場合によっては連日会合を行うことも少なくない。「指揮系統を明確にするとともに、情報をより密にすることが大切」と話す。安全を最優先に、情報共有を重視する。JR東日本独自の「安全会話」も徹底。こうしたたゆまぬ姿勢が災害防止とともに高品質、適正工期の実現につながっている。

フル稼働するタワークレーン「AZUSANo.2」
現場では新宿発の特急にちなんで命名された2機のタワークレーン「AZUSANo.1」と「AZUSANo.2」がフル稼働。鉄骨建方を追いかけるように外壁のカーテンウオールの取り付けも順調に進む。「ゴールデンウイークまでには外壁取り付けも終わる予定だ。外観はほぼ完成の状態となる」と目を細める。
 施設は地下1、2階に駐車場と駐輪場、地上1-5階は商業施設、6-33階を高規格オフィスとする。「フロアの基準階面積は約2100㎡。天井高3mの大規模な整形・無柱のオフィス空間を創出する」計画だ。

外壁のカーテンウオール取り付けも順調に進む
「環境や防災に配慮した施設計画も特長の一つ」(牧野課長)。外壁には省エネ性能の高いLow-E複層ガラスを用いたダブルスキン構造を採用し、空調負荷を抑制。LED(発光ダイオード)照明に加え、南面と屋上には太陽光発電装置を設置した。地域冷暖房システムも導入する。屋上緑化や緑あふれる回廊なども整備。CASBEE(建築環境総合性能評価システム)のSランクを取得済みだ。防災面ではオイルダンパーによる制振構造のほか、72時間稼働可能な非常用発電機や屋上ヘリポートも備える。

【事業概要】
▽発注者=東日本旅客鉄道(JR東日本)
▽設計=JR東日本東京工事事務所・東京電気システム開発工事事務所、ジェイアール東日本建築設計事務所
▽施工者=大林組・大成建設・鉄建JV(建築工事)、日本電設工業・九電工・日本リーテックJV(電気設備工事)
▽運営=ジェイアール東日本ビルディング(オフィス)、ルミネ(商業施設・文化交流施設)
▽構造・規模=S一部SRC造地下2階地上33階建て延べ約11万1000㎡
▽建設地=東京都渋谷区千駄ヶ谷5丁目ほか
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