2014/12/21

【復興現場最前線】首都圏への足を取り戻せ! JR常磐線14.6㎞を内陸側へ移設復旧


震災は首都圏と太平洋沿岸各都市を結ぶJR常磐線にも深刻な打撃を与えた。特に被害が甚大だった宮城・福島県境の駒ヶ嶺駅~浜吉田駅間では、住民が通勤・通学のために日々利用していた3駅舎が流失、線路は壊滅的な被害を受け、現在も運休が続いている。早期復旧に向け、福島県新地町と宮城県山元町では内陸側への移設工事が復興まちづくりと一体となって進められている。2017年春の運行再開を目標に、地域住民や環境にも配慮しながら、トンネルや高架橋の新設工事などが行われている現場を訪ねた。写真は山元工区の戸花山第2トンネル。

 常磐線は内陸部の東北本線とともに、仙台市を始めとする南東北と関東圏をつなぐ沿岸部の重要路線。東日本旅客鉄道(JR東日本)は、特に被害の大きかった駒ヶ嶺駅(福島県新地町)~浜吉田駅(宮城県亘理町)間について、新地、坂元、山下の3駅を含めた約14.6㎞を内陸側に移設して復旧することを決め、5工区に分けて14年度から本格着工している。

坂元工区・高架橋の型枠工事
このうち、新山下駅を含む坂元駅(宮城県山元町)~浜吉田駅の山下工区(約4.8㎞)の施工は鉄建が担当。5工区の中でも最長の区間となる。トンネル2本や橋りょう4橋、高架橋(2462m)などの工種で構成。そのため地盤改良の浅層改良工でもスラリー方式や粉体方式、高架橋の場所打ち杭では先端プレロード工法など、さまざまな施工技術を駆使している。
 工区内の丘稜地は桜の植樹地となっていたことなどから、これを保存するためトンネル構造を採用した。10月に戸花山第1トンネル(177m)が貫通。現在、同第2トンネル(427m)を上下半交互併進掘削工法で掘削している。
 橋梁と高架橋は下部工が完成した部分から順次、上部工の架設に着手している。また、戸花川橋りょう(27m)は軟弱地盤のため、沈下などに対する保守管理の観点から低床高架橋を採用。鋼管杭(900mm)を梁部分と直結することで、基礎の底版部とRC柱を省略する。

柳川厚作業所長(鉄建)
鉄建の柳川厚作業所長は「スピーディーに本体構造物を終わらせないと、軌道工事に間に合わなくなる」とし、「技術者が不足する中、外国人も積極的に採用して常時約320人が作業している。厳しい工程だが、綿密かつ効率よく施工を進めて品質の高い構造物に仕上げたい」と語る。
 一方、新坂元駅を含む新新地駅~新山下駅の坂元工区(約3.4㎞)は、鹿島が担当。5工区内で最も海岸部から内陸部へと移設する。
 メーンは工区内の半分以上を占める全長約1.9㎞の高架橋16橋の新設だ。RC高架橋の橋脚では場所打杭として径1800mm・長さ9-19m36本、径1500mm・長さ7.5m-19.5m169本を打つ。
 工区内の一部が学校や住宅などの居住地と農地になっているほか、農繁期には作業を中断せざるを得ないなど、工程の調整や作業ヤードの確保が工事を進める上での課題だ。

高橋健一作業所長(鹿島)
鹿島の高橋健一作業所長は「地域住民の理解と協力を得て、下水道やガスなどのライフラインの切り回しを行いながら施工している。身近に聞こえる期待の声に応えるためにも、資材調達を円滑に進めて1日も早く仕上げたい」と話す。
 両工区を含めた全5工区は、15年9月までの本体構造物の完成を目指す。その後、別途発注される軌道や駅舎工事などが始まる予定だ。
 沿岸地域住民の足として欠かせない常磐線。復興を大きく後押しする運転再開に向け、復旧工事が急ピッチで進められている。
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