2014/05/08

【海岸防災林】人を守り癒す「緑の防潮堤」 岩沼市で実証実験スタート

樹種や造成方法を変えた4パターンを比較検証
震災の大津波によって壊滅的な被害を受けた太平洋沿岸の海岸防災林。その再生や機能強化に必要な科学的知見を集めるため、林野庁は植栽の樹種や方法に関する実証試験をスタートさせる。宮城県岩沼市で25日、「強く豊かな海岸防災林」の再生植樹式を開く。樹種や造成方法を変えた4パターンを試し、海岸防災林としての効果やコストなどを比較検証していく。
 海岸防災林は、飛砂害や風害から人家や農地を守り、津波発生時にはそのエネルギーを減衰させるなどの防災効果を発揮。今回の震災でもその効果は確認されている。また、森林レクリエーションや生物多様性保全の場にもなる国民共有の財産でもある。
 特に仙台平野一帯の海岸林は、仙台藩祖伊達政宗の命により造成され、以来400年以上にわたって地域の生活環境の保全に重要な役割を果たすとともに、クロマツの美しい景観は県民から親しまれてきた。それだけに、その再生に向けた地域の思いは強い。
 海岸防災林は歴史的に、海岸の厳しい気象条件下でも生育できるクロマツを主体に造成が進められてきた。今回の実証試験では、その後の「緑の防潮堤」の取り組み事例なども踏まえ、さまざまな樹種や植栽方法を試す。
 実証試験は、同市寺島地内の直轄治山事業施行地の一部約0.5haで実施する。樹種や客土の有無を組み合わせ、(1)盛土して常緑広葉樹を主体に広葉樹を植栽(2)盛土してクロマツと常緑広葉樹主体の広葉樹を植栽(3)客土してクロマツと落葉広葉樹を植栽(4)海砂を盛ってクロマツを植栽--という4パターンの防災林を造る。常緑広葉樹にはアカガシやスダジイ、シラカシ、タブノキなどを選定。落葉広葉樹はケヤキとコナラを使う。
 植樹後には、根の張り具合や地上部の生育状況、手入れや管理に要する手間とコストなどをモニタリングし、得られた成果は随時、その後の防災林整備事業にフィードバックしていく。
 25日に開催する植樹式には、林野庁関係者のほか、村井嘉浩宮城県知事、井口経明岩沼市長らが出席する予定。地域の歴史や生活と密接にかかわり、長年にわたって先人たちが守り育ててきた海岸林の再生には、これまで以上に地域の協力が必要になるとして、地域住民約100人も招待し、宮脇昭横浜国大名誉教授や日本海岸林学会(吉崎真司会長)などの指導の下、植樹を行う。
 宮城県内では気仙沼市から山元町までの県内全域でほとんどの海岸林が流失、幹折れ、倒伏し、また塩害などによって枯れ、約1450haもの海岸防災林が失われた。その再生には、海岸地域の環境に適した樹種選定とともに、大量の苗木が必要となる。その需給体制の確立も今後の重要な課題となりそうだ。
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