2014/05/12

【建設論評】会社に不祥事が起きたとき、従業員に対応すべきこと

従業員が思い悩む事柄の1つに、勤め先が事件や事故などに関係した際の社内外における自分の立ち位置と、事件化で知った親族や第三者との当該事態に関するコミュニケーションがある。
 筆者の独自集計だが、直近6カ月間(2013年10月-14年3月)に日本経済新聞不祥事報道で記述された固有名称数は延べ554(企業・団体/組織・個人)あった。同期間の個別報道数で多かったのがJR北海道で51件、製薬会社ノバルティスファーマと関連大学25件、カネボウ化粧品9件というところ。

集中報道では、みずほ銀行の不当融資は10月だけで23件、昨年12月末発覚のマルハニチロ/アクリフーズ事件は38件に達した。ほかに猪瀬前東京都知事関連33件、徳洲会グループ関連26件、そして食材のメニュー虚偽表示は11月だけでも33件で計98ホテルで起きていた。そして3月にはSTAP細胞関連で15件あった。これらの報道で不信感を抱いた関係者数はどれほどに達するのだろうか。
 建設関連では、延べ38企業・組織が記載されていた。BtoB(企業間取引)が主の建設産業で経営にマイナス影響を及ぼす不祥事は、人命や工事の休止にかかわる重大事故と事業周りの法令順守違反に関連する事態であった。
 不祥事のメディア報道では通常、当該企業の公式コメントとして「事態は事実だが、真摯(しんし)に対応している」や「原因究明と再発防止そして関係者の処分を検討したい」とする記事が多い。大半の企業は社会的責任からメディア対応を重視する傾向にあるが、同等かそれ以上に気を配りたいのが従業員の不安感を取り除く対処であろう。報道以前に事態を知った場合、従業員の多くは、まず自分の仕事内容と待遇への影響の有無、次に報道で事態を知ることになる家族や知人・友人、そして取引先などとのコミュニケーションをどうすればよいかを悩み考えるだろう。
 そこで事件や事故時に企業が従業員に伝えるべきポイントを挙げたい。基本内容は5つある。
 1つは事実概要と会社姿勢および謝罪の具体的な言葉である。特に触れるべき内容として、さまざまな教育や指導施策を決定している役員や上層部門長らが関与した不当行為に関する真摯な対応姿勢がある。2つ目は待遇や就業変更の有無。3つ目として従業員の親族への理解が得られるための会社姿勢や今後の施策内容。4つ目が事業継続の願い。5つ目は話題にしてよい場の提示である。まずは、前線の従業員に不安や不信を抱かせない社内統一した内容を整備することが大事である。
 不祥事はヒューマンエラーも含め、どんな産業や企業でも起こりうる。企業内の結束を目指すために誰がどのような内容を、いつ、どのような手段で伝えるかが重要となる。同じタイプの事象を抱えても、メディアや従業員などを含むすべての利害関係者への事後の対処いかんで、その後の業績動向に差異が出てくることはこれまでの事例からも明らかであろう。(次)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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