2014/04/06

【建設コンサル】女性技術者を増やせ! 働ける職場への改革

女性の会のメンバー(左から宮下さん、山口さん、北浦さん)
建設コンサルタントなど建設関連業界で、女性技術者を積極的に活用する動きが活発化している。インフラの維持管理や老朽化対策、国土強靱化などで需要が急増していることに加え、少子化で男性にばかりこだわっていると、優秀な人材を確保できないことが背景にある。企業だけでなく団体でも、女性技術者が働き続けることができる環境づくりに取り組み始めた。

 建設産業の中でも土木は、“男の職場”というイメージが強い上、建設コンサルは長時間労働が常態化しているため、結婚や子育て、介護の時期を迎えた女性にとって仕事と家庭の両立が難しく、中途退職を余儀なくされている。
 日刊建設通信新聞社が建設コンサル、地質調査、測量の20社にアンケートした結果にも、こうした状況が表れている。女性技術者の割合は10%以下が13社、1社当たりの単純平均は7.8%で、女性管理職の割合に至っては1%以下が9社と半分を占め、単純平均も1.5%とさらに低くなっている。

 景気回復が鮮明になり他の産業と人材の争奪戦が始まったほか、そもそも土木系の学生が少なくなり、その上、学生の公務員志向が強まっていることから、建設関連業には逆風が吹き荒れている。優秀な人材を確保するには、性別に関係なく採用する必要性が高まっている。
 各社の対応をみると、女性の技術者と管理職の割合がともに最も高かった、いであは、「女性の活用は、優秀な人材の確保、企業の多様性の観点などから重要であると考えており、従来から採用時および評価において男女の違いによる処遇の差は設けていない」と述べている。

■新卒割合20%以上目標
 活用に力を入れ始めた企業も目立っている。建設技術研究所は「新卒採用者のうち女性の割合を20%以上、管理職のうち女性の割合を5%以上」という目標を掲げ、女性基幹職のキャリア形成支援や社内ネットワークづくりなどを実施している。国際航業は、技術者と管理職について「直近の目標ではそれぞれの比率を倍にする」が、「女性、男性ということではなく適材適所または能力に応じた配置を行う」方針だ。
 パシフィックコンサルタンツは、2013年10月にダイバーシティ推進室を新設、ことし7月にはダイバーシティフォーラムを開き、グループ全社の女性社員を対象とした研修・交流を計画している。大日本コンサルタントは、女性の視点から就業環境の改善を目的に昨年、女性技術者の会を発足させた。応用地質も昨年、どうすれば女性が働き続けられるかを探るため、女性職員キャリア委員会を設置して検討した。

■「女性の会」WGが始動
 一方、建設コンサルタンツ協会関東支部は13年度、9社10人の若手女性社員(事務系・技術系)による「女性の会」ワーキンググループ(WG)を発足させた。WGは1月に、「建設コンサルタントで働きつづけるためのネットワークミーティング」を開き、会員企業とその女性社員に実施した「ワークライフバランスに関するアンケート」結果を発表した。
 ミーティングで司会を務めた日本工営社会システム事業部都市・交通計画部の宮下奈緒子さんは、「勝手が分からず手探りで戸惑った」と活動初年度を振り返り、一方的に主張するのではなく会社と一緒になってより良い方向を探っていきたいと話す。
 パシフィックコンサルタンツ事務管理本部労務部の山口佳織WG副主査は「アンケートで分かった課題を、今年度は実行、実現に移したい。会社や女性社員に働き掛けることができる組織にしていきたい」と述べ、2年目はさらに活発に取り組む考えを示した。
 アンケートの分析を担当したエイト日本技術開発保全・耐震・防災事業部の北浦利依さんは、「休むための支援がほしいのではなく、働き続けるための支援が必要だ」と強調、社内でも女性の組織を立ち上げたいという。
 今年度は、アンケートから浮かび上がった問題点を取り上げ、働き続けるための支援措置拡充、業界単位でのロールモデル(お手本)紹介などのほか、他分野の企業の女性社員とネットワークを構築するための交流会も計画している。

■ワークライフバランス(WLB)の アンケート概要
◇女性社員の意識
・仕事の内容に満足している人/5割
・同じ会社で長く働きたい人/4割
・長時間労働などで仕事継続に不安がある人、退職を考えたことがある人/ともに7割
・出産などの休職後に職場復帰の経験がある人/3割
・目標とする女性社員(ロールモデル)が必要と感じている人/6割、実際に存在している/3割
・管理職を目指している人/1割、なりたくない、分からない人/8割
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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