2014/04/16

【日本建築学会賞】大賞に柴田氏、村上氏 作品部門は菅氏ら3件7名に

学会大賞を受賞した村上周三氏(左)、柴田明徳氏(右)
日本建築学会(吉野博会長)は2014年日本建築学会大賞、学会賞など各賞の受賞者を発表した。学会大賞には推薦を受けた11人の候補者から「構造動力学の研究・教育と耐震工学の発展への貢献」で柴田明徳氏(東北大名誉教授、東北文化学園大名誉教授)、「サステナブルな建築・都市の推進による地球環境問題緩和への貢献」で村上周三氏(建築環境・省エネルギー機構理事長)がそれぞれ受賞した。
 学会賞を構成する4部門のうち、作品部門は41作品の応募があり、このうち8作品を候補作品として選出。現地審査などを踏まえて「明治安田生命新東陽町ビル」の菅順二氏(竹中工務店東京本店設計部長)、「NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)」の山梨知彦氏(日建設計設計部門代表)、羽鳥達也氏(同設計主管)、石原嘉人氏(同設計担当)、川島範久氏(東工大助教)、「SHARE yaraicho」の篠原聡子氏(日本女子大教授、空間研究所主宰)、内村綾乃氏(A studio主宰)の3件7人に決まった。
明治安田生命新東陽町ビル(撮影:小川泰祐)
明治安田生命新東陽町ビルは、無機質で均質になりがちなオフィス空間から脱却した点が高く評価された。ゼネコン設計部が単体で作品賞を受賞するのは1951年に「日活国際会館」で小林利助氏(竹中工務店)が、63年に「リッカー会館」で鹿島昭一氏・高瀬隼彦氏(鹿島)がそれぞれ受賞して以来3度目となる。
NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)(撮影:雁光舎)
NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)は、都市環境に対する建築のあり方を開拓し、新たな環境建築の可能性を示したことなどに評価が集まった。
SHARE yaraicho
またSHARE yaraichoは近年注目の集まるシェアハウスの佳作として高い評価を受けた。
 学会大賞は「若年より今日に至るまで、一貫して耐震工学や地震工学に関する先駆的研究と熱意ある教育を継続」した点や「建築構造物の地震時挙動の解明や応答解析手法の確立、ならびに災害科学や防災研究の推進」などにより柴田明徳氏、「日本におけるサステナブルな建築と都市の評価システムの開発と普及に尽力し、世界においてもその推進に強力なリーダーシップを発揮している」として村上周三氏に贈られる。
 柴田氏は1936年12月生まれ。65年東大大学院博士課程修了。87年に学会賞(論文)、09年に教育賞を受賞した。村上氏は42年11月生まれ。67年東大大学院修士課程修了。89年に学会賞(論文)を受賞したほか、05-07年には日本建築学会長を務めた。
 学会賞(作品)には41作品の応募があり、この中から『SHARE yaraicho』『金沢海みらい図書館』『長岡造形大学展示館「MAROUの杜」』『竹林寺納骨堂』『熊本駅西口駅前広場』『東京スカイツリー、東京スカイツリータウン』『明治安田生命新東陽町ビル』『NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)』の8作品を現地審査対象に選定。討議と投票の結果、『SHARE yaraicho』『明治安田生命新東陽町ビル』『NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)』の3作品に決めた。

 各賞の表彰業績と受賞者は次のとおり(敬称略)
 =学会大賞=
 ▽構造動力学の研究・教育と耐震工学の発展への貢献=柴田明徳(東北大名誉教授・東北文化学園大名誉教授)
 ▽サステナブルな建築・都市の推進による地球環境問題緩和への貢献=村上周三(建築環境省エネルギー機構理事長)

 =学会賞=
 〈論文〉
 ▽生活環境の知覚および認知に関する一連の研究=大野隆造(東工大教授)
 ▽地震に伴う建物内人的被害評価と防災対策への利活用に関する研究=岡田成幸(北大教授)
 ▽家具の挙動推定に基づく地震時の室内被害評価に関する研究=金子美香(清水建設技術研究所安全安心技術センター所長)
 ▽建築内外の空気・温熱環境改善に資する数値解析モデリングに関する研究=近藤靖史(東京都市大教授)
 ▽積雪寒冷都市において風雪の影響を低減する都市デザインシミュレーション手法の研究=瀬戸口剛(北大教授)
 ▽鉄筋コンクリート造耐震壁の破壊形式および曲げ降伏後の変形性能に関する研究=勅使川原正臣(名古屋大教授)
 ▽高発熱機械室の空調方式に関する一連の研究=羽山広文(北大教授)
 ▽構造形態の解析と創生に関する一連の研究=本間俊雄(鹿児島大教授)
 ▽法隆寺建築の設計技術=溝口明則(名城大教授)
 ▽災害対応を考慮した都市・建築空間に関する一連の研究=村尾修(東北大教授)
 〈作品〉
 ▽SHARE yaraicho=篠原聡子(日本女子大教授、空間研究所主宰)、内村綾乃(A studio主宰)
 ▽明治安田生命新東陽町ビル=菅順二(竹中工務店東京本店設計部長)
 ▽NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)=山梨知彦(日建設計設計部門代表)、羽鳥達也(同設計主管)、石原嘉人(同設計担当)、川島範久(東工大助教)
 〈技術〉
 ▽混和材を高含有した低炭素型のコンクリートの開発=一瀬賢一(大林組技術本部技術研究所・生産技術研究部長)、小林利充(同主任研究員)溝渕麻子(同主任)、神代泰道(同主任研究員)
 ▽3層構造の燃え止まり耐火集成材の開発=谷口元(竹中工務店技術研究所長)、長岡勉(同防火グループ長)、大橋宏和(同主任研究員)、五十嵐信哉(竹中工務店先進構造エンジニアリグ本部特殊架構グループ長)
 〈業績〉
 ▽「箱の家シリーズ」から「新しい住宅の世界」へ=難波和彦(難波和彦・界工作舍代表)
 ▽東京駅丸の内駅舎保存・復原=東日本旅客鉄道、ジェイアール東日本建築設計事務所
 ▽木造密集地域の再生の取り組み―新宿区若葉地区におけるエリアデザインとエリアマネージメント=村上美奈子(計画工房主宰)、堀川顕彦(同所員)、新宿区都市計画部
 ▽市役所が、まちなみの形成とにぎわいの創出、及び、市民協働の場の創出に寄与する、新たな空間モデルの提示=森民夫(長岡市長)、隈研吾(東大教授)、森本千絵(goen。主宰)

 =教育賞=
 〈教育業績〉▽積雪寒冷地における建築環境学に基づいた断熱・気密技術、住生活の啓発活動に関する業績=荒谷登(北大名誉教授)
 〈教育貢献〉▽「家づくり学校」―社会にコミットする設計者を養成する教育プログラム、その実践と継続的取り組み=家づくり学校
 ▽環境学習型エコスクールにおけるエコガイド育成プログラム開発と一連の教育・啓発活動=久保久志(東畑建築事務所設計部技師)、堀部篤樹(名古屋市立大研究員)、豊田市立土橋小学校
 ▽「配置図集」を用いた初学者向け建築設計教育プログラムの実践と展開=松岡聡(近大准教授、松岡聡田村裕希代表)、田村裕希(東京藝大教育研究助手、松岡聡田村裕希代表)
 ▽高齢者福祉施設における実践的な火災安全思想の啓発・教育活動=老人福祉施設の避難安全に関する研究会

 =著作賞=
 ▽『庭師 小川治兵衛とその時代』=故・鈴木博之(東大名誉教授)
 ▽『Improving the Earthquake Resilience of  Buildings:The worst case approach』=竹脇出(京大教授)、アッバス・ムスタファ(エジプト・ミニア大准教授)、藤田皓平(京大助教)
 ▽『建築・都市のユニバーサルデザイン―その考え方と実践手法』=田中直人(島根大特任教授)
 ▽『群像としての丹下研究室-戦後日本建築・都市史のメインストリーム』=豊川斎赫(小山工業高専准教授)
 ▽『建築家と建築士-法と住宅をめぐる百年』=速水清孝(日大准教授)

 =奨励賞=
 ▽複雑都市形状を対象としたスカラー濃度プロファイル測定に基づく運動量・スカラー粗度相似性の検証=池谷直樹(九大助教)
 ▽児童・生徒の学習様態からみたワークユニットの空間特性-スウェーデンのワークユニット型学校建築を事例として-=垣野義典(豊橋技術科学大准教授)
 ▽エディルネ旧宮殿の成立と空間構成-前近代オスマン朝の首都性の研究(その2)―=川本智史(日本学術振興会特別研究員・PD、東京外大)
 ▽形状と厚さの同時最適化法の構造位相決定問題への応用自由曲面シェル構造の構造形態創生手法の提案(その2)=木村俊明(佐々木睦朗構造計画研究所)
 ▽免震部材の多様化に対応した免震建物の設計用地震荷重分布=小林正人(明大准教授)
 ▽中庭型集住体の裏中庭の所有と利用―パタン旧市街地における共同的空間管理システムに関する研究 その3―=サキャ・ラタ(東大大学院、日本学術振興会外国人特別研究員)
 ▽事務所ビルにおける自然換気時の室内空気質環境および省エネルギー性に関する研究=庄司研(大成建設技術センター主任研究員)
 ▽鉄筋コンクリート造そで壁付き柱のせん断耐力評価ポリマーセメントモルタルを用いて補強したそで壁付き柱の構造性能 その1=杉山智昭(大成建設技術センター副主任研究員)
 ▽新しい展開型構造物の提案とその理論解析=高塚真央(名大大学院、日本学術振興会特別研究員・PD)
 ▽日本二十六聖人殉教記念施設における今井兼次の初期構想について 日本二十六聖人殉教記念施設にみる今井兼次の建築思想に関する研究(その1)=原衣代果(前橋工科大嘱託員)
 ▽有孔集成材梁の設計耐力式の提案=土方和己(積水ハウス主任)
 ▽平安宮内裏の土庇と雨儀―平安宮内裏の空間構成と儀式に関する歴史的研究 2―=満田さおり(京大大学院)
 ▽昭和初期の神戸背山における開発と風致保護 山地開発論争と風致地区指定問題の顛末=山口敬太(京大助教)
 ▽建物規模・用途別の熱源システム採用状況を考慮した地域冷暖房施設導入可能性評価に関する研究=山口容平(阪大助教)
 ▽大阪府営住宅におけるグループホーム及びケアホームの使用に関する研究=山田信博(大阪市立大都市研究プラザ特別研究員)

 =作品選奨=
 ▽高志の国文学館=伊藤恭行(CAt/シーラカンスアンドアソシエイツ代表取締役、名古屋市立大教授)
 ▽帝京大学小学校=隈研吾(東大教授)、小泉治(日本設計第2建築設計群副群長チーフアーキテクト)、藤田雅義(日本設計建築設計群主管)、中野洋輔(日本設計建築設計群主任技師)
 ▽清水建設本社=見城辰哉(清水建設設計本部担当)
▽柿畑のサンクン・ハウス=小嶋一浩(CAt/シーラカンスアンドアソシエイツ代表取締役、横浜国大教授)、赤松佳珠子(CAt/シーラカンスアンドアソシエイツ代表取締役、法大准教授)
 ▽北海道工業大学体育館“HIT ARENA”=佐藤孝(北海道科学大教授)、芳川朝彦(a-plus芳川朝彦建築設計室主宰)、種田俊二(清水建設設計本部医療福祉施設設計部設計長)
 ▽さざなみの森=竹原義(無有建築工房代表)
 ▽東京工業大学環境エネルギーイノベーション棟=塚本由晴(東工大准教授)、竹内徹(東工大教授)、伊原学(東工大准教授)、福田卓司(日本設計取締役専務執行役員)、平山浩樹(日本設計建築設計群主管)、讃井章(日本設計建築設計群主管)
 ▽竹の会所=陶器浩一(滋賀県立大教授)、高橋和志(高橋工業代表取締役)、永井拓生(滋賀県立大助教)
 ▽神戸国際中学校・高等学校河野記念アルモニホール=中西正佳(竹中工務店設計部)、福垣哲朗(竹中工務店設計部設計グループ長)
 ▽実践学園中学・高等学校自由学習館=古谷誠章(早大教授、NASCA代表取締役)、八木佐千子(NASCA代表取締役)、新谷眞人(オーク構造設計取締役)、高間三郎(科学応用冷暖研究所所長)
 ▽NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)=山梨知彦(日建設計執行役員設計部門代表)、羽鳥達也(日建設計設計部門設計主管)、石原嘉人(日建設計設計部門設計担当)、川島範久(東工大助教/元日建設計設計部門設計担当)
 ▽中川政七商店新社屋=吉村靖孝(吉村靖孝建築設計事務所代表取締役)
 =文化賞=
 ▽惜櫟荘の修復保存と『惜櫟荘だより』の刊行による建築文化への貢献=佐伯泰英(作家)
 ▽歴史的環境および文化的景観の保存再生における国際交流とわが国自治体への指導助言に関する功績=パオラ・エウジェニア・ファリーニ(ローマ大サピエンツァ建築学部教授)
 ▽遠野物語を核とする民俗学と建築文化の振興および歴史的町並み修景の業績=本田敏秋(遠野市長)

 =作品選集新人賞=
 (「作品選集」掲載作品の中で、応募年の4月1日時点で40歳未満の筆頭設計者を表彰する。表彰式は2014年度日本建築学会大会(近畿)で行う)
 ▽Miss Hiroshima=小川文象(FUTURE STUDIO代表)
 ▽一橋大学空手道場=木下昌大(京都工芸繊維大助教、KINO architects)
 ▽向陽ロッジアハウス=金野千恵(KONNO代表、日本工業大助教)
 ▽森のオフィス=菅原大輔(SUGAWARADAISUKE代表)
 ▽神戸国際中学校・高等学校 河野記念アルモニホール=中西正佳(竹中工務店設計部)
 ▽東急プラザ表参道原宿=中村拓志(NAP建築設計事務所代表取締役)
 ▽立教大学ロイドホール18号館=原田由紀(日建設計設計部門設計主管)
 ▽house I=寳神尚史(日吉坂事務所(株)代表取締役)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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