2014/04/08

【建設論評】25㎏という重さ 運ぶ人への配慮

新入社員のとき、袋詰めセメントは1袋の重さが50㎏あった。現場の職人さんがセメントを楽々と運ぶのを見て私も担(かつ)ごうとしたがビクともしない。肩にはとても背負えず、ようやく両手で前に抱きかかえてよたよた歩くのが精一杯で重かった。
 セメント運搬トラックの運転手が、現場のセメント置き場とトラック荷台の間に足場板を渡し100袋余を1人で黙々と運ぶ姿には、驚きと尊敬の念さえ抱いた。

 袋セメントの重量は、左官業界などの要請で1971(昭和46)年にそれまでの50kgが40kgとなり、さらに96(平成8)年からは現在の25kgとなった。
 また当時の鉄骨の組み立てはボルトではなく、コークスで赤熱したリベットで「かしめ」た。リベットは粗(あら)めの麻袋(ドンゴロス)入りで袋は小さいがセメントより重かった。現在のハイテンションボルトなどは箱入りで約25kg単位である。
 最近は、足場板も重い合板足場板に代わり、重量が6割ほどの鋼製足場板が多用されるようになった。
 建設業以外でも、業務用小麦粉袋や宅急便で送れる重さの限度などで25kgの単位は多く用いられ、社会は軽量化の方向にある。
 労働基準法(年少者労働基準規則)は、重量物の取り扱いで、断続作業では16歳以上18歳未満の女性は25kg以上、男性は30kg以上、継続作業では同じく15kg以上、20kg以上の業務に就かせてはならないと規定している。
 先日、長年海外工事に携わっていた同期の友人が自宅近くの外壁補修工事で、自分の入社当時と変わらない、重いわく組足場を組んでいるのを見て少しも進歩がないことに驚いたという。鋼管を材料とした重いものではなくアルミ合金や高強度樹脂などが使えないものかと問われて、人が持ち運ぶ足場材の、重さへの配慮が足りないことに気づいた。
 わく組足場の部材である建わくや床付き布わくの単位重量は18-20kgであり、階段は29-35kgもある。
 わく組足場などの鋼管足場は、労働安全衛生規則や構造規格に細かな規定があり、現状では材料を規格の鋼管以外に代えることができない。しかし、足場の組払いは高所作業であり、作業者の危険と労力の負担を軽減するために軽い部材が望ましいが、同時に強度や風雨による影響、経年劣化等を考慮する必要がある。
 建設業における死亡災害は墜落が40%以上を占め、そのうちの約16%が足場によるものだ。部材を軽くすることは、足場組払い作業の危険要因の1つを除くことになる。作業者の重量負担を軽減するため、形状、構造や法規則などの見直しが望まれる。
 建設業は今後、中途採用者や女性、高齢者の就労増加への対応が迫られ、現場では作業者が容易に持てる単位重量を考慮した小運搬、取付計画が必要となる。
 新年度が始まった。
 日常作業における人が持てる重さについて、改めて考えてみたい。(傘)建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

1 件のコメント :

  1. 建設業界に関する専門的な記事をいつも面白く読ませていただいております.“小言”ではありますが,記事中の単位で「kg」であるべき箇所が全て「km」となっているようです.

    返信削除