2013/09/14

【復興版】カタールの贈り物 東北大が「未来の地域を担う子どもプロジェクト」

創造工学センター「発明工房」(HPより)
カタール国が、東日本大震災の被災地復興支援プロジェクトに総額約1億ドルの資金を供出するカタールフレンド基金。これまで2度の公募を含め「子どもたちの教育」と「健康」「水産業」の3分野11事業が採択されている。その一つに選ばれた東北大学の「未来の地域を担う子どもプロジェクト-カタールフレンド基金ホールと子ども科学キャンパス」は、厨川常元東北大学創造工学センター長を中心に科学体験専用施設となるホールを整備。サイエンスショーを始め、最新技術を使った実験や体験を通じて、被災地の将来の産業を担うものづくり人材を育成する役割が期待されている。



◇発明工房

 事業の中核を担う創造工学センター「発明工房」(http://www.ip.eng.tohoku.ac.jp/)は、工学の基礎実験と演習体験を通じて創造性豊かな学生を育成するため、1999年度に設置された。小・中学生を対象とする“子ども科学キャンパス"は、「学校ではできない最先端の道具を使った実験や体験を提供することで、科学技術や工学への理解と関心を高め、日本を支えてきた“ものづくり"の次世代を担う人材を育てたい」(厨川教授)との願いから、センター創設時から取り組んでいる事業だ。
 児童や生徒が幼少期に理系に触れるきっかけとして、仙台市内の小学校高学年約400人を対象に、毎年工学研究科の教授やスタッフたちが指導に当たってきた。こうした取り組みの一方で、「創設時から現在まで、大学全体の志望者に占める理系志望者の割合は大きく変わらないが、近年は情報産業などのソフト系が人気で、ハード系の志望者は減少傾向にある。どちらかに偏らないバランスが大切」と、理系人材の育成事業全体の先行きに懸念を示す。

◇小中学生1万人が対象

 震災を経て、被災地では従来の産業復興に加えて、新産業創出に向けた動きが本格化している。「長期にわたって継続的に人材育成に取り組むことで、10-20年先に、被災地の復興の一翼を担い、地域のものづくりを支える理系人材を育てたい」との思いから事業の拡大を決意。カタールフレンド基金の第2回公募に申請し、60以上ものプロジェクトの中から採択された。
 今回の基金活用事業では、青葉山キャンパス(仙台市青葉区)内にある発明工房の正面にある工学部事務部棟内のホールを専用施設に改修する計画だ。
 年間1万人の子どもを受け入れ、サイエンスショーやラボツアーなどのさまざまなプログラム、イベントに対応する施設となる。事務棟全体の災害復旧工事と並行して改修工事を進めるため、2014年夏ごろの開設を目指している。
 「専用施設完成後は、工学部・工学研究科を始め、全学のバックアップを受けて、対象を宮城県全域の小・中学生に拡大していく。これまで取り組んできた事業の拡充に加えて、新たなプログラムも開発したい」と意欲を示す。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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