2013/08/21

【GNSSルポ】進化する衛星測量! 国土地理院の電子基準点がすべてグロナス対応

国土地理院が5月から全国の電子基準点で、準天頂衛星「みちびき」とロシアの衛星「グロナス」の観測データ提供を始めた。これまで米国のGPS(全地球測位システム)だけだった観測情報に加えて配信することで、衛星測位システムの精度は大きく向上する。建設業界にとっては、情報化施工の精度向上など測量業務の効率化も含めて大きな効果が期待できる。日々進化を続ける最新の衛星測量は情報化施工の可能性を新たなステージに導こうとしている。
 写真はGNSS受信機が装備されたバックホウ。


つくばの国土地理院にある電子基準点
国土交通省は2008年2月から情報化施工推進会議を設け、土木分野でのICT(情報通信技術)活用を進めている。ブルドーザーやバックホウなどの重機に、測位技術を使って施工を自動化したり、オペレーターに施工をガイダンスしたり、作業工程は情報化施工によって大きな変革がもたらされている。
 情報化施工の基盤となるのは、トータルステーション(TS)や全地球測位航法衛星システム(GNSS)である。これまでGPSが主流となっていたが、位置を指し示す衛星は日本の準天頂衛星を始め、ロシアや欧州、中国なども打ち上げており、それらを効果的に活用する点がGNSSのメリットだ。これによる情報化施工では、センチ単位(小ぶりの卵程度)の誤差で測量精度が確保できるため、とくに土工分野での活用が期待されている。


◇ネットワーク型RTKが進化

 国土地理院が行った電子基準点の運用変更は「ネットワーク型RTK(リアルタイム・キネマティック)測量」で威力を発揮する。この測量法は、測量情報の利用者が現場で計測した衛星データと、周辺の電子基準点の観測データから生成した補正情報を組み合わせて、高精度で利用者の位置を特定できるというものだ。
 これまでは、数百万円するGPS固定局を現場ごとに設置する必要があったが、ネットワーク型ではこの設備投資が不要になり、これまでよりも情報化施工が導入しやすくなる。


電子基準点の中にはGNSS受信機やルーターが収められている
◇電子基準点の中身

 全国に約1240カ所設置している電子基準点は、内部に衛星信号の受信機と、有線電話網と携帯電話網の2種類の通信装置、バッテリー、傾斜計などが収められており、常にリアルタイムで国土地理院に基準点の位置情報を送信している。ここで受信する衛星の種類が増えたため、測量法の使い勝手が向上した。
 5月から始まった電子基準点のGNSS化では、GPS衛星だけの時よりも捕捉できる衛星数が1.5倍から2倍まで増加した。また、ロシアの衛星軌道は北方向に多いため、日本にとっても捕捉の都合がよくなった。天空を見通しにくい都市部や山間部でも効果を発揮する。
 グロナスを併用したときの誤差の標準偏差も、東西、南北、上下方向ともに精度向上が認められた。また補正情報の配信事業者も、利用者の3分の1がグロナス対応の登録をしているという。

◇情報化施工も垣根低く

 国土地理院の辻宏道測地観測センター衛星測地課長は「民間からの要望でデータ対応を行った。情報化施工には効果が期待できる。地理院としては、使用者が使いやすい環境を整備していくのが仕事だと考えている」と話す。
 今後の課題としては、まだ1基だけで運用している日本の準天頂衛星を24時間カバーできる体制に移行するほか、近代化するGNSS信号と欧州の「ガリレオ」、中国の「Beidou(北斗)」への対応などが挙げられる。
 国交省では3次元モデルデータを利活用するCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の試行導入をスタートし、ワンランク上の情報化施工に舵(かじ)を切った。これにはハードやソフト、導入や運用など広範囲な分野の連携が不可欠だ。さらに測量機器や重機、施工会社、ソフトベンダーなどの民間企業と、行政の組織の枠を超えた協力体制が強く求められている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年8月21日

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