2013/07/05

【建設論評】木造ブーム

環境への影響が少ない木材の利用が推進される中、木造建築への注目が高まり、いまや木造ブームと言っても良い。木造に関するさまざまな情報がネットや紙面をにぎわせ、大規模な耐火木造建築の技術開発や海外では高層木造ビルの提案もなされている。
 この木造ブームを後押しするかのように、林野庁は木材利用ポイント事業を7月1日から開始、ポイント発行と商品への交換を始めている。木造住宅の新築・増築や購入あるいは内外装の木質化工事および指定された木材製品の購入にポイントが付与され、商品券やプリペイドカードなどに交換できるようになった。
 木材の利用や木造建築の推進がまるで流行のファッションのように注目されている。
 もちろんこの機を逃す術はなく、木材利用の促進や木造建築の推進に大いに活用すべきであろう。社会の注目を浴びるということは、強力なバックアップを得られるチャンスであり、その力を効果的に活用することが望ましいのである。
 振り返れば、モダニズム建築やポストモダン建築もそんな力に後押しされて、社会や建築界を席巻したのかもしれない。建築界の強い熱意が社会を誘導したのか、あるいは社会の流動的なニーズが建築家の価値観と合致したのか、いずれにしても建築史の1ページをつくり上げたのである。
 今回の木造建築ブームがどこまで社会の中で広がるのか、まだ定かではないものの、国内資源の有効活用や環境問題対策など、さまざまな社会環境への対応に期待を寄せたい。
 木造に関する注目すべき新たな技術としては、木造耐火構造材の開発や、大架構をも可能にする大型木構造材の開発などがある。欠点を補い長所をさらに伸ばすさまざまな技術開発がなされており、今後もこのブームに乗ってさらなる開発が推進されるに違いない。
 それは社会のニーズを受け止め、耐久性や快適性や低コストを実現していくだろう。
 さらに柔軟な使途の拡充は建築家の旺盛なデザインニーズにも応えてくれる。RC造に比べて部材接合のディテールが増加する木造は、違った知識や技術力を要する半面、新たな刺激や応用を与えてくれるかもしれない。
 一つの気がかりは一時的なブームに乗って、表面的なニーズに対応した技術開発や建築デザインが氾濫しないかということである。木材が持っている本来の特徴を効果的に生かす技術開発やデザインこそが求められる。奇抜さやその場しのぎの対応だけでは、木材や木造のメリットを発揮できないばかりでなく社会的な信用を失墜させ、せっかくのブームに水を差す結果となる。社会の正当なニーズから目をそらさず、木造ブームの健全な発展を推進したいものである。
(泰)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年7月5日

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