2013/07/27

【新湊大橋】アルミの両翼「フラップ」が揺れ幅1/5に低減

新湊大橋(富山県射水市)
ことし6月に通行が可能になった新湊大橋(富山県射水市)の自転車歩行者道。中央径間部に発生した最大35cm幅の揺れ対策が完了し、車道から約9カ月遅れでの開通となった。揺れを低減させたのは幅1mのアルミニウム製導流板。飛行機の離陸時に揚力を確保する可動翼片「フラップ」の原理を応用し、桁の左右に突き出すように設置された。製品提供した住軽日軽エンジニアリングは、既に6橋への導入実績を持つが、後付けの導流板設置は今回が初めてという。


導流フラップを見上げる
◇長さ600mの複合斜張橋

 長さ600mの新湊大橋は5径間連続複合斜張橋で、桁下に全天候型自転車歩行者道をもつ。中央径間部の長さ360mは風などの影響によって揺れ幅が予想以上に大きくなったため、車道開通後も安全を考慮して人や自転車の通行をストップしていた。導流板設置後の揺れ幅は最大7cmとなり、5分の1の低減効果を得た。
 同社の導流板設置は1975年にさかのぼる。末広大橋(徳島県)に初採用されて以来、徐々に件数を伸ばしてきた。直近では12年4月に開通した長さ1291mの阿波しらさぎ大橋(同)に導流板1000mが採用された。服部明郎取締役道路・橋梁営業部部長は「実は、導入するたびに技術面が進化している」と強調する。


◇ハニカム構造

 導流板は、幅1mのアルミ板を両面から貼り合わせたハニカム構造で、橋の形状に合うように1ユニットの長さは約2mに設定した。これまでは揺れ対策として最初から設計に組み込まれていたが、新湊大橋は完成後に採用が決まったため、防護柵の位置を見極めながら、導流板を固定するアルミ支柱も含めて製作した。設置長さは658m。アルミの使用量は32tに達した。
 ハニカム構造のアルミ板ユニットは、建築屋根(シェルター)として商品化している。通常はコア材を蜂の巣状(ハニカム)にしているが、導流板ではあえて筒状の構造を取り入れた。飯田尚明設計技術部担当部長は「一体化させて強い構造体を実現するには、筒状の方が接着しやすい」と説明する。
 建築屋根では表面のアルミ板とハニカム部分を接着剤で貼り合わせるが、新湊大橋の導流板は表面を溶接する「ろう付接合」を施した。熱処理炉で焼くと、融点の低いろう材が溶けるため、金属間結合して一体化する仕組みだ。建築でも複雑なデザインによって強度を確保したい場合にはろう付接合を採用するケースがある。


ハニカム構造
◇LCCも低減

 今回、同社が導流板の注文を受けたのは12年11月。それから1カ月間かけて型起こしを行い、本格的な製造に乗り出したのはことし1月に入ってからだ。約2カ月間かけて330枚を一気に製造した。これまでの導流板は骨材を入れて板金加工で、一つひとつ手作業で組み立ててきた。「コア材を筒状にし、さらにろう付の加工によって、生産効率は高まり、仕上がりも格段に良くなった」(飯田担当部長)。
 幅1m、長さ2mの導流板ユニットは重さ約50㎏。設置作業は施工者のあおみ建設が片側車線を通行止めにし、張り出しバケットの作業車で取り付けた。そもそもアルミは耐食性が強く、海浜エリアなどの厳しい環境でも腐食の心配がない。橋梁本体への荷重負担も少なく、メンテナンスも不要であることから、ライフサイクルコストの低減効果が高い。
 同社は、新湊大橋で試みた後付けによる導流板の設置実績を足がかりに、橋梁保全分野の掘り起こしを加速する方針だ。服部部長は「軽く、強度も出せるアルミの特性はインフラストックの市場ニーズと相性が良い」と、新たな製品投入への意欲をのぞかせる。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年7月24日

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