2013/03/27

【生コン】スランプも数量もデジタル計測 残コンの無駄なくす

生コン車に取り付けられた計測器
「トレーサビリティーの要求が強まる一方で、残コン処理の経費負担に苦しんでいる」と語るのは、住友大阪セメントの直営生コン会社である東京エスオーシー(東京都中央区)の伊藤司常務。東京都内で最大規模の出荷量を誇る同社の芝浦工場では、そうした取り巻く環境の変化に対応しようと、独自システムの導入を積極的に始めた。


東京エスオーシーの芝浦工場

年間の残コンは320万m3

 建設現場に出荷された生コンクリートが使われずに戻される「残コン」は東京都生コンクリート工業組合の試算によると、都内だけでも年間320万m3に達し、総出荷量の約3%を占める。残コンは二次製への転用や回収骨材の再利用という使い道があるものの、その大半は廃棄物として生コン工場が処理しているのが実態だ。
 年22万m3を出荷する芝浦工場では、年間の残コン処理料が4000万円に上る。建築現場への供給が多いこともあり、残コン量は年々増加傾向にあり、現在は出荷量の4%を占める。1現場当たりの出荷量は200-300m3。1日に3、4現場に出荷しており、現場数に比例して残コン量は多くなる。
 現場では近隣への配慮が強まり、コンクリート打設時間を制限し、余裕をもって手配する生コン量を増やす傾向にある。型枠の数量拾いを若手社員が担当するケースも多く、積算時点で誤差が生じる場合も少なくない。残コンの発生はゼネコン側にとっても経費負担になっており、伊藤常務が「ゼロにできなくても最小限に抑えられればお互いにメリットがある」というように、生コン業界にとっての切実な願いでもある。

ICカードに品質情報を書き込む

◇デジタル計を生コン車に設置

 芝浦工場では今月中に保有する生コン車48台すべてに「デジタルm3計システム」の取り付けを完了する。生コンのスランプ状態からドラムの回転数で荷下ろしの数量を厳密に調整できるもので、出荷時の温度状態を把握できる機能も追加でき、現場にとっては温度計を使って生コンの状態を計測する手間も軽減できる。現在、同社では3工場で70台を超える生コン車を保有しており、2013年度中には全車両にシステムを導入する方針だ。
 「いつでも貸し出しができる状態」と胸を張るのは中村明芝浦工場長。ICカードを使って生コンの品質管理情報を現場が把握できるシステムは2年前に開発済みだった。ある大手ゼネコンの現場で試験的に採用した結果、一定の効果を得たことから、各現場への導入を呼び掛けている。同社にとっては出荷現場を間違える「誤納防止」対策にもつながるメリットがある。
 生コン工場と建設現場にパソコンとカードリーダーを設置し、生コン車の運転手が携帯するICカードをリーダーにかざすことで、品質情報を提供できる仕組み。ICタグやICチップを使った管理システムは存在するものの、情報の読み取りに支障が出るケースがあり、ICカードの活用を決めた。伊藤常務は「初採用の現場が決まれば、後に続くはず」と期待している。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年3月27日

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