2012/11/19

【連載・GSAのBIMマネジメント(8)】望む時に望む場所で即座に

FMとBIMを結びつけるEcoDomus
建物オーナーがBIMに期待するのは、3Dによる設計内容の可視化もあろうが、ファシリティマネジメントをBIMでどのように効率化できるかが最も大きい関心事であろう。建物が企画されてから解体処分されるまで必要とされるライフサイクルコストのうち、施設整備のコストは氷山の一角で、大部分は維持管理や運用に費やされる。

 仕上げの種類や機器の能力といった建物の部品の属性情報が含まれたBIMモデルは、建物のデータベースである。設計図面としてのみ使用するのはもったいない。最新の正確な(Live and Accurate)データを、望むときに望む場所で、即座に取り出せるようになれば、施設の維持管理や運用は革新的に効率化されるであろう。
 水漏れが発生した際に、現場で配管の系統図がすぐに取り出せれば、隠れた場所の配管も簡単に特定でき、素早く対応できる。常に更新された正確な機器リストがあれば、機器の劣化度合いが正確に把握でき、予防保全の精度が上がる。集中監視制御システムとの連携で、設計の想定と運用の違いを解析し、設計や運用にフィードバックすることができる。修繕や改修工事を発注する際には、現地調査や現況図作成の手間が低減でき、既存の状況が確認できないために生じていた設計変更や破壊試験も削減でき、さらに、資産評価に使うと、複数の不動産資産をさまざまな指標を用いて横断的に評価することができる。

◇領域超えビジネスライン整理

 これまでも建物の情報を扱うデータベースが各種、開発され、利用されている。GSAでは、①設計、施工のプロジェクトのスケジュールやコスト、契約、出来高の管理、現場との情報共有(ePM)②維持管理の作業指示、モニター、台帳管理、保全計画作成(CMMS)③設備機器の運転制御、監視(BAS)④賃貸業務の管理(RExUS)などのシステムが運用されている。
 GSAはこれらシステムのデータの一元管理を目指している。これまでの図面管理システム(eSMART)では、2次元図面が線と面の情報にしか過ぎないため、システム間でデータを交換するのは困難であった。一方、オブジェクトベースであるBIMでは、図形情報も属性情報も簡単にやりとりできる。そこで、これらのシステムの中心に、BIMモデルデータを用いて施設情報を一元的に管理するレポジトリ(データの貯蔵庫)を構築することを考え出した。
 開発にはオブジェクト単位でのデータ検索方法や、同時編集時の競合対策、履歴管理、データ変更時の周知機能など、さまざまな解決しなければならない技術課題がある。しかしそれ以上に重要なのは、どのように業務を処理していくか、従来の領域を超えたビジネスラインの整理である。BIMを使用してFMを効率化させたいのであれば、ソフトウェア任せでなく、建物オーナーも、自らのニーズをとらえ、ビジネスのあり方を積極的に見直していかなければならない。
(内閣府沖縄総合事務局開発建設部営繕課長 大槻泰士)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年10月24日12面


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