2012/08/30

11月から地下水バイパス稼働へ 福島第一原発廃炉作業のいま

地下水バイパス計画
震災からの復興、とりわけ福島県の再生には福島第一原子力発電所事故の1日も早い収束が不可欠であることは論をまたない。27日に開かれた政府と東京電力による同発電所の廃炉に向けた中長期対策会議(議長・枝野幸男経済産業相、細野豪志原発事故担当相)の第9回運営会議では、7月末に改定された中長期ロードマップに基づく進捗状況が報告された。直近1カ月の状況と今後の主な取り組みを紹介する。



◇原子炉の安定維持と信頼性向上へ

 原子炉冷却、滞留水処理の安定的継続と信頼性向上を喫緊の目標に、▽循環注水冷却設備・滞留水移送配管の信頼性向上▽貯蔵タンクの増設▽原子炉建屋への地下水流入抑制▽多核種除去設備の設置--などに取り組んでいる。
 このうち、循環注水冷却設備などの信頼性向上では、炉注水源の保有水量増加、耐震性向上などのため、水源を処理水バッファタンクから復水貯蔵タンクに変更(12月完了予定)。循環ラインの主ルートに残存する耐圧ホースも漏えいに対して信頼性の高いポリエチレン管に9月中に変更する。うち4号機移送ラインは工程を短縮し9月2日に運用を開始する予定だ。
 処理水受用タンクは処理水の発生量を踏まえて順次増設していく。21日現在での滞留水処理水の貯蔵量は約19万m3となっているのに対してタンクの貯蔵容量は約22万m3。今後、10月中旬以降に約8万m3のタンク増設工事を計画しているほか、地下貯水槽の増設工事(合計約5万4000m3)も実施中。12月末には完了させる。13年上期までに約40万m3まで貯蔵容量を増加させる計画。

◇多核種除去設備を設置

 地下水流入抑制では、山側から流れてきた地下水を建屋の上流で揚水し流路を変更する地下バイパスにより、建屋内への流入量を抑制する取り組みを計画。現在、設備の詳細設計を実施中。9月上旬から着工し、揚水井などの設置を開始する予定。揚水井の設置予定個所は12カ所で、9月下旬にはパイロット揚水井による実証試験を開始。11月上旬のバイパス稼働を目指す。揚水した地下水は一時的にタンクに貯蔵し、水質確認した上で放水する。
 また、構内貯留水などに含まれる放射性物質濃度をより一層低く管理する多核種除去設備を設置。確証試験の結果、検出限界値未満まで除去できることを確認した。9月上旬から実処理水による系統試験、実運用開始を予定している。
 このほか、2号機温度計の故障を受け、9月中をめどに代替温度計の設置を検討。1号機格納容器内部の状況把握のため、カメラによる画像、放射線量、雰囲気温度、水温および水位のデータ取得と滞留水のサンプリングを実施するとともに、常時監視可能な格納容器内雰囲気温度計と水位計の設置(10月上旬)も予定している。

◇鋼管矢板打設部の岩盤を先行削孔

 海洋汚染拡大防止のための遮水壁設置工事では、鋼管矢板打設部の岩盤の先行削孔、港湾外での消波ブロック設置などを実施中。また1-4号機および5、6号機取水路前面エリアの汚染濃度が高い海底土の拡散防止を図るための固化土による被覆工事を完了。がれきの一時保管施設準備工事も完了している。

◇3号機上部がれき撤去は年度末完了

 3号機では原子炉建屋上部がれき撤去作業(12年度末完了予定)と構台設置作業、4号機は原子炉建屋オペレーティングフロア大型機器撤去作業(7月24日-10月予定)、燃料取り出し用カバー工事(地盤改良工事4月17日-8月24日、基礎工事8月17日~)を継続実施中。
 4号機では13年度中ごろを目標に燃料取り出し用カバーの設置を終え、同年12月の取り出し開始を目標としている。

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