2012/06/22

記者座談会・国際会計基準 建設業の経審への影響検証


A 国際会計基準(IFRS)への対応では、建設業が議論の焦点になるようだね。
B その前に、14日に開かれた金融庁の企業会計審議会での論点が2つあったことを強調したい。1つは、今後日本が国際会計基準に対応するための視点として、金融庁が入札規制・公共調達規制で、建設業の経営事項審査(経審)との関係でどのような影響があるかを議論の論点にしたことだ。もう1つの特徴は、これまでの議論をまとめた中間的論点整理の中で、激しく意見が対立していた『連単分離』の可否をめぐる議論について、連単分離の方向に傾きつつあることを示したことだろう。

C 連結決算を国際会計基準にして、単体決算は日本基準を認める連単分離に踏み切っても、大半の建設業は上場していない中小企業であることを考えれば、建設業界にとってそう大きな影響はないと思えるけど。
B それは違う。上場企業や大企業が全体の企業数に対する割合が小さいという理屈は分かるけど、100に満たない上場企業、それに上場していない大企業の、建設市場に占める位置付けや影響力は極めて大きい。
D 補足すれば、ゼネコンと言われる総合建設業だけでなく、設備を含めて、公共工事参入に必要な経審受審企業の問題であることを踏まえるべきだろうね。
D 国際会計基準を導入した場合、これまでの工事進行基準の考え方は通用しないとも言われている。売り上げ規模にしても1兆円台から1000億円台を下回るまで、上場企業といっても企業規模は違う。なによりも監査法人の監査を受けた企業と、そこまでの厳格さを求めない中小企業会計に基づいた決算を、経審という1つのモノサシで企業評価されることへの疑問が大手や準大手、中堅企業の側にはあるね。
A これまでの議論で国際会計基準へ移行した場合の影響について具体例は示されたのか。
B 2010年から国際会計基準を任意適用している日本たばこ産業(JT)が審議会のヒアリングに応じた際の資料にはびっくりした。日本基準との比較で、貸借対照表の資産、負債はそれぞれ400億円ほど増加していた。損益計算書は売り上げ収益が6兆台から2兆円台と4兆円強も減少した一方、当期利益は約1000億円増加した。従来の工事進行基準ではなく新たな収益認識に基づいた場合、経審に影響を与える建設業の決算がどのようになるか、警戒心を抱くのは無理もない。
C 今後、金融庁の審議会で経審を含めた建設業への国際会計基準導入の影響を議論しても、委員の学識者たちに建設業の特殊性を理解できるのかな。
B もうすでに、そういう場面はあった。金融庁が建設業への影響についての議論を提示した時、すぐに公認会計士の委員が、「問題は収益認識とリースの扱いであって、建設業への影響はない」と断言した。これに対しては委員として参加していた錢高組の錢高一善社長も、経審のあり方そのものについて問題提起したほか、製造業からの民間企業委員も、業法や経審による規制のなかで影響があると反論していた。
D 国際会計基準への対応は建設業界でも始まっている。建設産業経理研究所が、国際会計基準と建設業の会計基準との調整や日本の建設産業のあるべき会計基準を議論するため、「建設業会計基準の在り方に関する研究会」を立ち上げた。ゼネコンだけでなく、設備なども加わって議論していく予定だ。

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