2012/06/12

五島列島で国内初の「浮体式洋上風力発電」を実証 戸田建設らのグループ

架台を切り離し、海面に浮いた試験機
 環境省浮体式洋上風力発電実証事業受託者グループ(代表・戸田建設)は9日、長崎県五島列島の椛島(五島市)沖で、全長が実証機の約半分となる小規模試験機の建て起こしを行った。既存の送電網に接続する系統連係を行う浮体式洋上風力発電施設は国内初、またハイブリッドスパー構造を採用したのは世界初となる。実証機が実用化されれば、近隣諸国への輸出も期待される。
架台ごと着水した試験機

 試験機は、長崎県佐世保市で約3カ月かけて製作した。構造は、細長い円筒形状のスパー型で、浮体上部に鋼、下部にコンクリートを使用している。全長71m、円筒の直径は最大3・8m、総重量は約350tで、約34mが海面上に浮く。風車の直径は約22mあり、ローター面がタワーの風下側になるダウンウィンド型で、100㌔ワットを発電する。実証海域の椛島周辺は、年平均風速毎秒7・5m(海上60m)が見込め、波が穏やかなことから選定した。
 9日は、戸田建設の浅野均土木本部アーバンルネッサンス部部長らが案内した。建て起こしは、椛島の北西側の沖合で、約3時間かけて行われた。まず、台船の上に横向きにされた試験機を起重機船で架台ごと吊り上げて着水させ、浮体内部に約30tの海水を注入してから徐々に建て起こし、最終段階で架台を切り離した。今後、椛島の南側沖合約1㌔の位置に、3本のチェーンで係留する。その後、約2㌔の海底ケーブルを付設し、7月中に送電を開始する。
 地球温暖化対策として再生可能エネルギーの普及が急がれている中、世界有数の海洋国である日本では、安定的に効率的な発電が見込まれる洋上発電施設の実用化が期待されている。このため、戸田建設などは水深の影響を受けにくい浮体式のモデルを製作して実験を進めていた。また、環境省は、国内初となる2メガワット級の浮体式実証機の設置を目指して2010年度から実証事業を開始した。これまでの事業費は計約60億円となる。試験機は13年度に撤去し、実証機を設置する。実証機は、全長約170m、風車の直径は約80mとなり、16年度内の実用化を目指す。
 受託者グループは、戸田建設のほか、富士重工業、芙蓉海洋開発、京都大学、海上技術安全研究所で構成している。

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