2012/06/14

「魚のまち釜石」 2017年度の完全復活めざせ!

第二魚市場
 東日本大震災から1年3カ月を経て漁業の水揚げが回復しつつある岩手県釜石市。今後は魚市場からの買い受け、加工・流通という一連の経済活動の復旧に向けた基盤づくりが焦点となる。6月8日には東京都内で日本プロジェクト産業協議会(JAPIC、三村明夫会長)との共催により「魚のまち復興」に向けたシンポジウムを開き、首都圏の産官学に協力を呼び掛けた。

8つのうち7漁場までが復旧

 世界屈指の三陸漁場とリアス式海岸に恵まれた釜石市の水産業は、東日本大震災により大きな打撃を受けながらも、主力となる定置網漁場が8漁場のうち7漁場まで復旧し、今年度は昨年度を上回る水揚げが期待されている。
 一方、鮮魚を流通させるための荷さばき施設は、市内3カ所のうちメーンとなる『魚河岸地区』が全壊し、機能が大幅に低下。比較的被害が軽微だった『第2魚市場』が「建設業による献身的な復旧作業」(同市水産農林課)により2011年8月から一部機能を再開したため、11年度はかろうじて前年度比50・9%の水揚げ量を確保した。
 現在は、廻来漁船の拠点として竣工目前に被災した『新浜町魚市場』の整備再開・竣工を目指しており、盛漁期を迎える秋から水揚げ増強を図る。政府の「全国的な拠点港」8漁港の一つに選定されたことを追い風に、魚河岸地区でも衛生管理型対応の市場づくりを進め、17年度の完全復活を目指す。


現状復旧にとどまらない地域水産業の振興策が求められている
水産加工会社はゼロからの出発

 一方、魚市場で鮮魚を買い受ける水産加工業者は、個々に復旧が進み、現在17社が操業中、7社が施設を建設中、2社が建設計画中だ。ただ、現在でも「どこに建てたらいいかという相談が続いている」と同市の菊池行夫水産農林課長は話す。復旧した企業も、多くは操業停止中に流通のパイプを失い、ゼロからの販売体制構築を余儀なくされている。
 シンポジウムでは、水産加工会社と流通大手との議論の場を設けたこともあって「自分たちの知らない流通方法を知った。地域を挙げて販路拡大を目指したい」(小野昭男小野食品社長)と新たな展望を見いだした。
 今後の加工・流通強化策として同市は、新たな取り組みを水面下で進めている。魚河岸地区の魚市場計画に並行して、後背地への漁港用地拡張を計画。加工機能を誘導、買い受け機能を増強、水産物の安定供給を目指す。
 また、東北横断自動車道と三陸縦貫自動車道の結節点となる恵まれた条件を生かし、物流拠点の誘導を構想。公共ふ頭、魚市場、国道45号と連結する中継地点として、内港フィーダーコンテナによる販路拡大にもつなげる考えだ。震災前への復旧にとどまらない、新たな「魚のまち」として復興を目指している。

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