2012/04/10

地盤充填技術の開発相次ぐ 東日本大震災でニーズ急増

地盤空洞への対策技術開発が相次ぐ
 東日本大震災では、地盤に多くの空洞が生じた。この空洞を充填する技術の開発が建設会社やメーカーで相次いでいる。空洞はそのまま放置すると陥没する危険性もあり、早期の充填作業が欠かせない。2012年度に入り、空洞の充填工事が本格化してきていることも技術の普及を後押しする。大水深下でも適用可能なことや超高強度、小規模工事向けなど各社は知恵を絞り、新たなニーズに対応している。

 大成建設は、大水深下でも適用可能な可塑グラウトによる空洞充填技術「T-PLUS工法」を海洋工事や耐震補強工事などに積極展開する。シールドトンネルの裏込め注入に使われる可塑グラウトの配合と施工方法に改善を加え、施工性を高めた。水中でも流れ出すことなく一定の粘性を保ちながら施工でき、最終的に硬化する。震災復旧関連工事や維持・補修工事などへの適用を見込んでいる。
 同工法は、ボスポラス海峡横断トンネルの基礎地盤構築に適用した実績がある。この工事では、強い潮流がある水深60mの海中で、沈埋函底部のすき間を可塑グラウトで充填した。東日本大震災の復旧関連工事では、工場地下部分の漏水処理に採用した実績もある。今後は、捨石護岸の充填や発電所放水路の補強など、海洋工事や耐震補強工事への適用を見込んでおり、積極的に営業展開する。
 ショーボンド建設は、グラテクセンターシモダ(東京都新宿区)と業務提携し、空洞・空隙充填工法「ケミハード工法」の販売を12年から始めた。同工法は地下構造物の背面欠損補修やその周囲に生じた変状対策に効果を発揮する。従来のグラウト材に比べて早期強度発現性に優れた超高強度の耐久注入材を使う。東日本大震災で需要が高まっている液状化や空洞化に対応する。
 強度は3時間で1平方mm当たり4ニュートン(N)の早期強度発現性があり、路面下の空洞充填のように交通開放など時間制約がある個所でも適用できる。長期強度は28日で30Nとコンクリートに匹敵する強度を持つ。
 住友大阪セメントは、小規模な地盤の空洞を効率的に埋める簡単エアモルタル「フィルコンライト All in One プレミクス」を開発した。東日本大震災で数多く生じた規模が小さく、点在する地盤の空洞に向く。発泡機や特別なプラントが要らず、一般的な建設会社でも水と混ぜるだけで簡単に施工できる。
 10m3以下の小規模工事で特に強みを発揮する。販売先はゼネコンや道路舗装会社など。建材事業部担当の藤原康生執行役員は「東日本大震災で課題になっている小規模で広範囲な地盤の空洞を、効率的に施工することに焦点を絞って開発した。当社の戦略商品として活用する」と話している。

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