2012/01/11

連載・コンピューティショナル・デザイン-3-

・smartgeometryは、国際的な先進事例が満載!
 米国ベントレー・システムズ社が毎年主催する「スマート・ジオメトリー2011(http://smartgeometry.org/)」。この催しは、海外で認知が広がっている新たな設計アプローチの「パラメトリック・デザイン」について、実際の建築家や設計事務所、学生らが討議を行っている。前回のカンファレンスは、4月の1、2日に集中的に行われたが、カンファレンスに先立ち3月28日からの4日間は、10チームに分かれてパラメトリック・デザインを使った研究をワークショップとして行った。
 そのうちの1つ「Agent Construction」というテーマは、「複雑系」をテーマにしたワーキングを行った。複雑系とは個別の働きが関係しあって組織全体でまとまりのある働きに変化するような能力で、サバンナ地帯に生息するシロアリが、個々に働きながら結果として高度な空調機能を持つ蟻(あり)塚を形成するような例があげられる。
 一見、建築とはかけ離れた題材に思えるが、本能だけで個別に行動する蟻が、結果として非常に洗練された「建築」を作り出せる機構を、実際のパラメトリック・デザインに行かせないかを探求している。

Agent Construction チーム
・空気の流れを可視化
 このチームは、紙で作った14面体を、メンバーそれぞれに割り当てた単純な役割に従って、個々の判断で多面体をつなぎ合わせていく。構造、上昇、横方向への拡張など、メンバー各自は、自分の役割だけを果たす。
 トップダウンで全体を統括せず、役割各自の判断が結果的に機能的な建築を作り出すボトムアップ式のプランニングを検証している。
 クラスターを率いるのはルパート・ソアー(Rupert Soar、http://www.rupertsoar.com/)氏らで、ルパード氏は、英国のフリーフォーム・コンストラクション社の共同設立者であり、ロンドンのグリニッジ大で建築の教鞭をとる。彼らがリーダーとなり、世界中からエントリーした若手の研究者や設計者、学生らがスクリプトとパラメータを駆使して、空気やエネルギーの流れを可視化していった。
 「Performing Skins」というチームは、CNC自動織機の数百のニードル制御にパラメトリック・デザインを取り入れ、織物表面が立体的になるように計算し、さらにあらかじめ組み立てておいた骨組みに巻き付けるとその形状にきちんとはまるように織り上げる。
 ほかに「Hybrid Space Structure Typologies」は、緊張力を受け持つ化学繊維の糸と、圧縮力を受け持つバーを複数組み合わせ、自立するコンパクトな構造をパラメトリック・デザインで構築し、それを組み合わせて全体的に最適な構造を生み出すクラスターもあった。

Mercedes-Benz Museum
・世界の著名人が講演
 sg2011で行われたシンポジウムは、世界から多くの著名人の講演を聴くことができる。
 メッテ・トムセン(Mette Ramsgard Thomsen)さんは、デンマークのロイヤル・アカデミー・オブ・ファインアーツ(The Royal Academy of Fine Arts, School of Architecture)教授で、今回のワークショップの会場ともなったCITA(Center for IT and Architecture)の長でもある。彼女は、建築文化の一環として、糸やアルミなどの素材に対するパラメトリック・デザインを研究している。彼女は、これらをデジタル・クラフティングとして作品化している。
 また、基調講演を担当したUNスタジオのベン・ヴァン・ベルケル(Ben van Berkel)氏は、自身で設計したシュツットガルトのメルセデス博物館(Mercedes-Benz Museum)を例に、設計へのパラメトリック・デザインの組み込みについて話した。
 次回からは、sg2011にワークショップから参加した英国設計事務所 Foster + Partnersに在籍する横松宗彦氏に、パラメトリック・デザインの特徴や、フォスタープラスパートナーズにおけるパラメトリック・デザインの実例などを紹介してもらう。

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