2012/01/05

復旧から復興へ前進の1年へ/東北各県の2012年展望

未曾有の大災害からの復旧・復興に向けて国は2011年度第3次補正予算と12年度当初予算案を合わせ約19兆円の事業費を計上。復興特区の申請手続きも始まる。東日本大震災の被災地は復旧から復興へと力強く歩み出している。特に大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県を中心に東北6県の2012年を展望する。

◆岩手県/直轄事業でけん引
 昨年12月26日に大槌町の復興計画が町議会で議決され、津波被害を受けた沿岸5市4町3村すべての復興計画が出そろった。災害査定は県土整備部所管公共土木施設が1686億0831万円(2338件)、農林水産部は922億6864万円(1714件)の査定を終えている。
 県は住宅の再建必要戸数を最大1万8000戸に設定。うち災害公営住宅は4000-5000戸で、初弾として釜石市内2カ所に計160戸の共同住宅建設を決めた。
 直轄事業ではリーディングプロジェクトに位置付けた復興道路・三陸沿岸道路と復興支援道路の宮古盛岡横断道路および東北横断道釜石秋田線に11年度第3次補正予算案で600億円余の事業費を計上。
 災害査定が完了した湾口防波堤の復旧費は釜石港が約490億円、大船渡港は約200億円と試算している。
 三陸鉄道南北リアス線は14年4月の運行再開を目指す。事業費は約110億円で、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が復旧事業を担当する。
 また、政府の国家戦略プロジェクト・環境未来都市構想に選定された釜石市と気仙広域連合(大船渡市と陸前高田市、住田町)は、ともに低炭素・省エネや地域資源を生かしたエコタウンの形成に向けて検討を本格化させる。

鉄骨だけになった南三陸町の防災対策庁舎

◆宮城県/民間アイデアを公募
 宮城県は沿岸8市7町に加えて、大崎市や登米市など内陸の4市も復興計画をまとめた。災害査定は土木部所管公共土木施設で8048億7100万円(6925件)が確定。農林水産関係被害額は調査中だが、県所管施設分93億1961万円を含め、全体被害額は約1兆2286億円としている。
 住宅の再建必要戸数は7万2000戸と試算。災害公営住宅は約2000億円を投じて15市町に計約1万2000戸を整備する。石巻市は1月中にも借上市営住宅事業者を公募する予定だ。県は医療再生計画で気仙沼市立と石巻市立、公立志津川(南三陸町)の3病院再建に約246億円の事業費を盛り込んだ。
 市や町の動きをみると、七ヶ浜町は被災した中学校や保育所の設計者選定に全国規模のプロポーザルを導入。名取市は閖上地区非居住区域ビジネスプラン、気仙沼市は魚町・南町地区のまちづくりコンペを予定するなど、民間のアイデアを募る動きが各地で広がりつつある。
 環境未来都市に選ばれた東松島市は全戸を賄うメガソーラー発電設備、岩沼市はがれきを再利用する千年希望の丘や、国際医療産業都市推進などの構想の具体化を図る。
 日本下水道事業団(JS)が仙台市から復旧事業を受託した南蒲生浄化センターは水処理施設改築事業費が約682億円。7月ごろまでに発注手続きを終える予定だ。
 東北大学は被災した工学研究科実験研究棟3棟の改築に加えて、レアメタル・グリーンイノベーション、メディカル・メガバンクの両研究拠点施設の設計を委託。国の12年度予算案には次世代情報通信プロジェクト研究拠点施設整備が盛り込まれた。
◆福島県/除染作業が本格化
 福島県は福島第一原子力発電所の事故に伴い半径20㌔圏内は全員避難を強いられている。復旧・復興に向けて、迅速かつ確実な除染作業により、生活環境を取り戻すことが全県を挙げた課題となっている。国の12年度予算案には除染対策費として約4500億円が計上されており、除染完了を目指す13年度までには1兆数千億円規模に膨らむとみられる。除染作業の実施に向けて南相馬市は3カ年で約400億円の事業規模を想定、大手ゼネコン26社を指名して業務の委託手続きを進めている。このほかの市町村も除染計画策定後に作業を本格化させる。
 復興計画は、新地町や相馬市、南相馬市、いわき市などの沿岸部に加え、福島市や須賀川市なども策定した。原発周辺で全員が避難している自治体も、帰還に向けて計画づくりを進めている。
 災害査定状況は、公共土木施設が約983億4000万円(3472件)、下水道・公園は175億3000万円(249カ所)、漁港は159億1400万円(138カ所)、農地・農業用施設は527億6900万円(1565件)となっている。
 被災地のうち、相馬市はメガソーラーなど再生可能エネルギー事業者、南相馬市は経済復興9分野の事業パートナーを公募するなど、意欲ある民間事業者との事業計画づくりを進める。
 災害公営住宅については、原発避難者も対象に必要戸数の調査を進めており、現時点で必要戸数は固まっていない。他の被災地に先駆けて災害復興公営住宅建設を進めてきた相馬市では3月中にも第1弾が完成する予定だ。
◆青森・秋田・山形/庁舎建設計画が加速
 青森県では、東日本大震災で津波被害を受けた八戸市など三八地域の漁港・港湾施設の災害復旧事業が本格化する。また、久しぶりの新規大規模事業となる県営屋内スケート場(八戸市)や、県総合運動公園内の各種体育施設の更新整備に向けた検討の動きが加速しそうだ。青森市は庁舎改築の基本計画づくりを進める。
 秋田県は05年ごろまで続いた平成の大合併を契機とする市や町の大規模プロジェクトが増えている。財源となる合併特例債の起債期限が5年間延長されたものの、東日本大震災を受け、秋田市を始め、湯沢市や能代市、仙北市などで防災拠点となる庁舎の改築が計画されている。
 山形県は風力や太陽光などの再生可能エネルギー導入を急いでいるほか、鶴岡病院改築、村山産業高校、最上小国川ダムの着工などが控えている。市町村では鶴岡市が加茂水族館の着工、新文化会館の設計委託などを行うほか、酒田市庁舎などの大規模事業も控えている。

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