2011/11/28

『前へ!東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録』麻生幾著

 高度情報社会と言われる今日、情報通信手段が途絶することでもたらされる混乱はどの時代よりも大きい。わが国観測史上最大の激震は、この現代社会の命綱を一瞬にして断ち切った。その時、問われたのは「人」の力である。
 本書は、誰も経験したことのない未曾有の広域複合災害に強固な使命感を持って立ち向かった無数のプロフェッショナルたちの姿を活写したものだ。
 全容はおろか、「今、どこで何が起こっているのか」すら分からない状況にあって、タイトルのとおり、ただ「前へ」ひたすらに突っ込んでいく。その背中を押したのは、その先に「救えるはずの命」があることを誰もが知っていたからにほかならない。
 発災当夜から救援のための道路啓開に奮迅し、暴走する原子力発電所に決死の覚悟で赴く。その筆致にはわが国の最大の資源は「人」だという思いが込められている。それは人を得ないこの国の「政治主導」の危うさもまた浮き彫りにしている。
(新潮社・1575円)
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