2011/10/28

記者座談会・3次補正総額12兆円。復興事業関連は半分以下

A 政府の第3次補正予算案がまとまったけど、国土交通省分は1・2兆円だった。政府全体でも、「公共事業等の追加」が約1・5兆円、復旧・復興の地方負担分に充てる地方交付税交付金、自治体が復旧・復興に自由に使える「東日本大震災復興交付金」、全国防災対策費を合わせた直接的に建設関係の事業につながる費用は、単純に計算しても計約5・6兆円。3次補正予算額全体の半分にも満たないのは、なぜだろう。
B ほかには、東日本大震災復興緊急保証といった災害関連融資関係が多いほか、厚生労働省の医療関係や文部科学省の教育関係で既存の基金の積み増しというのが多い。さらに、特に大きいのは「年金臨時財源の補充」で、2・5兆円もある。第1次補正予算の時に使った年金臨時財源を補てんするための費用で、まったく事業にはつながらない。要は1次補正での先食い分を戻しただけで、12兆円と言われる3次補正も結局のところ、公共事業以外を含めて実質的に補正予算として支出するのは9兆円程度だ。
C でも、補正予算では、全国の道路や河川の耐震対策、耐震強化岸壁の整備など、地域の経済に配慮した「全国防災」に予算は充てられる。復旧関係でも、岩手県釜石市と大船渡市の湾口防波堤の復旧費として800億円が盛り込まれたし、復興では建設中だった岩手県久慈市の防波堤の再建設費も計上した。
D 今回の補正予算で注目すべき1つは、全国防災対策だと思う。被災地の復旧・復興が日本の最重要課題である点には誰も異論はないが、被災地以外の地方業界からは、公共工事関係予算の5%留保分を含め、先行きに強い不安があった。その意味で、5%留保が解除され、今回の震災を契機に全国で高まっている防災対策にも目配りしたことは評価されてもいいと思う。
A ただ総額12兆円という「水増し」の額に額面どおり期待しすぎていた側面があったのも事実だ。
B 今後懸念される問題は、政府が5年間で集中的に復興するための手当としての補正予算が想定されていないことに尽きると思う。
A 震災対策が主眼であるはずの第3次補正に円高対策やB型肝炎対策費が盛り込まれていることが数字を膨れあがらせたという指摘は分かるけど、それがなぜ懸念になるの。
B 復興対策として補正予算を編成しないということは、今後の復興予算は一般会計で手当することになる。当然、財政抑制からシーリング的なものが科せられると予想される。そうなれば、復興予算として公共事業関係費が必要ならば、被災地以外の公共事業関係費がこれまで以上に削減される可能性は否定できない。臨時国会での議論でも、当然この問題指摘が出てくることは確実だ。
D 3次補正の水増しとも関連するけど、政府・与党の3次補正の歳出額を賄う財源確保議論にはどうしても違和感を感じる。復興に関連して復興債の償還期間や増税のあり方が焦点になっているみたいだが、一般会計で40兆円を超える国債発行ももっと議論すべきだ。そもそも、震災復旧・復興とは国が責任を持って全面的に取り組むべきもので、財源云々の問題ではない。まして震災復興とはなんの関係もない事業も織り込んで3次補正予算として計上するから、ややこしくなってしまう。
C 確かに、被災地が必要とする復興予算と国の計上する予算が合わないことが想定されるけど、被災自治体側からすると今後、予算確保競争に負けた自治体が出かねないことの方が問題だと思う。震災・津波で被災した自治体は数多い。先行して復興計画や予算確保に動き、実際に事業化できる自治体の陰に隠れて、復興が進まない自治体が出ることは避けなければならないと思う。

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