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建設工事の動きDigital

建設専門紙が本気でつくった工事データベース

2011/10/31

Is値0.7未満の未改修が300万㎡も/国立大など文科省施設

耐震改修を終えた札幌市の小学校
 文部科学省の所管する国立大学法人・国立高等専門学校機構・大学共同利用機関法人の施設の耐震化が進んでいない。未改修のIs値(構造耐震指標)0・7未満の施設は300万㎡残っている。文部科学省によると、耐震化率は5月1日現在で87・8%だという。
 現在調査中の東北、宮城教育の両大学、一関工業、福島工業、仙台の3高専を除いた国立大学法人などの施設保有面積は、1981年以前の倉庫や車庫などの小規模建物94万㎡を除き、2457万㎡ある。
 一方で診断の結果、「耐震性あり」と「改修済み」を合わせた施設面積は891万㎡で、耐震性が劣る施設の面積は300万㎡となる。この300万㎡のうち、早急に耐震化する必要があるIs値0・4以下の施設は29万㎡にのぼる。
 文科省が8月に策定した2011―15年度を計画期間とする「第3次国立大学法人等施設整備5カ年計画」では、優先的な施設整備分野のひとつに、耐震性などに問題がある老朽施設の改善を掲げている。3次5計の計画期間内で耐震化を完了させるため、耐震化の具体的なロードマップ(行程表)を策定している。
 工程表では、Is値0・4以下の施設は11、12年度の2年間で耐震化を完了させる方針で、11年度第3次補正予算案では、国立大学などの施設耐震化に200億円を計上している。
 また4月1日現在の公立小中学校施設の耐震化率は、岩手、宮城、福島の3県を除き80・3%で、Is値0・3未満の小中学校施設は4614棟と推計されている。文科省では、公立小中学校などの施設の耐震化も15年度までに完了させる方針だ。

東日本高速SA・PAの防災拠点構想/パサールも新規に3カ所開発

 東日本高速道路が東日本大震災の経験を踏まえ、SA・PAを防災拠点化する構想を打ち出した。震災時にSAが自衛隊や消防、医療チームなどの中継基地として活用されたことを踏まえ、防災拠点化を検討するという。「救援・救護」「進出部隊支援」「情報支援」などのエリアを設定し、燃料や食料を備蓄。ヘリポートや自家発電機、飲料水ろ過システムなども整備するというものだ。
 首都直下地震を念頭に、同社の佐藤龍雄社長は、防災拠点化するSA・PAについて「可能な限り多い方がいい。なるべく早くやりたい」とし、関係自治体と協議していく方針を示した。

パサール3カ所、「ドラマチックエリア」も

 首都圏の交通量が見込めるエリアで、独自ブランドの道ナカ複合商業施設「パサール」も新たに3カ所で開発着手するという。ほかにも旅を演出する「ドラマチックエリア」を8カ所開業させほか、関越道寄居の「星の王子さまPA」のようなテーマパーク型エリアも、新たに1カ所で事業化する。

新井組が災害拠点向けにコンテナハウスを積極販売

 新井組が、幅や高さを自在に伸長できるコンテナハウス『広がルーム』を販売している。広がルームは2001年に開発・製造・販売したコンテナハウス。04年には特許を取得し、自動車メーカーの検査ルームなどで販売実績がある。通常は幅2・4m、奥行き5・4m、高さ2・65mの大きさだが、人力でも幅、高さとも約4mまで拡張でき、設置作業も数時間で完了する。また、複数のハウスを自在につなげ、空間を拡大できる。
 据え付けや伸張拡大が数時間で完了し、事務所のほか、シャワールーム、情報通信拠点など幅広い用途に活用できるため、災害時の緊急対応拠点などとして営業している。
 ルームは、天井に太陽光パネルや無線LANアンテナ、衛星通信アンテナなどが設置でき、災害時の安否情報などを伝える対策本部など緊急時の事務所機能にも対応できる。
 また、シャワーやトイレのユニットを事前に組み立てられるので、現地ですぐに稼働できる。感染症などで隔離した空間が必要な医療施設での利用も見込めるという。
 今月からは、東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県南三陸町に役場の事務所機能として提供した。屋上に設置した太陽光パネルや蓄電池により、電気工事をすることなくパソコンなどの電源を賄っている。
 技術部の蘓鉄盛史課長は「阪神・淡路大震災で安否情報を徒歩で確かめる苦労をしたわれわれにとって、東日本大震災でも同じ状況が繰り返されたのは残念。発災後に迅速な支援ができる施設になれば」と話している。

2011/10/28

伊東豊雄氏の「みんなの家」で芋煮会

  東日本大震災の被災者に「心が安らぐ居間のような、始原の建築を」と、建築家の伊東豊雄氏が提案した集会施設「みんなの家」が仙台市宮城野区の仮設住宅団地内に完成=写真、26日、落成式と仮設住宅の住民による芋煮会が開かれた。
熊本県が、くまもとアートポリスの一環として実施した、初の県外事業となる。芋煮会では地酒も振舞われ、伊東氏も交えて住民や関係者らが夕方までにぎやかに歓談した。
みんなの家は、仙台市の協力を得て、同市宮城野区福田町南1丁目公園地内にある応急仮設住宅団地内に建設された同施設は木造平屋建て約40㎡の規模。伊東氏と、くまともアートポリスアドバイザーを務める桂英昭熊本大准教授、末廣香織九州大准教授、曽我部昌史神奈川大教授の4氏が意匠や構造、家具などを分担して共同設計した。
切妻屋根の軒と縁側のある日本の原風景のような建築で、内部には、まきストーブが置かれ、4畳半の畳の間、長テーブル、キッチン、トイレが配置されている。既設の集会場と渡り廊下でつなげて設置した。
 斬新なデザインで建築界をリードする伊東氏がこうした建築を造ったことに驚く人も多かったが、伊東氏は淡々と振り返る。「決めるまでにはかなり逡巡したが、決めてからは楽になった。避難所や仮設住宅での極限状況の中でも人は集まろうとする。このような原初的なコミュニティーに最低限のかたちを与えるのが建築の始まり。人間的に居心地の良い始原的な建築を考えた」という。
 住民と笑顔で話す伊東氏に竣工の感想を聞くと、「建築中に訪れた時に住民の期待が高まってくるのが感じられた。先ほど、住民の方がお琴を披露してくださったのを見て、これはうまく使ってくれると確信した」と語った=写真。
 26日に開かれた落成式では、「みんなの家」建設推進委員会会長の生田博隆熊本県土木部建築住宅局長と伊東氏があいさつし、稲葉信義仙台市副市長が謝辞を述べた。施工は熊谷組が担当した。

記者座談会・3次補正総額12兆円。復興事業関連は半分以下

A 政府の第3次補正予算案がまとまったけど、国土交通省分は1・2兆円だった。政府全体でも、「公共事業等の追加」が約1・5兆円、復旧・復興の地方負担分に充てる地方交付税交付金、自治体が復旧・復興に自由に使える「東日本大震災復興交付金」、全国防災対策費を合わせた直接的に建設関係の事業につながる費用は、単純に計算しても計約5・6兆円。3次補正予算額全体の半分にも満たないのは、なぜだろう。
B ほかには、東日本大震災復興緊急保証といった災害関連融資関係が多いほか、厚生労働省の医療関係や文部科学省の教育関係で既存の基金の積み増しというのが多い。さらに、特に大きいのは「年金臨時財源の補充」で、2・5兆円もある。第1次補正予算の時に使った年金臨時財源を補てんするための費用で、まったく事業にはつながらない。要は1次補正での先食い分を戻しただけで、12兆円と言われる3次補正も結局のところ、公共事業以外を含めて実質的に補正予算として支出するのは9兆円程度だ。
C でも、補正予算では、全国の道路や河川の耐震対策、耐震強化岸壁の整備など、地域の経済に配慮した「全国防災」に予算は充てられる。復旧関係でも、岩手県釜石市と大船渡市の湾口防波堤の復旧費として800億円が盛り込まれたし、復興では建設中だった岩手県久慈市の防波堤の再建設費も計上した。
D 今回の補正予算で注目すべき1つは、全国防災対策だと思う。被災地の復旧・復興が日本の最重要課題である点には誰も異論はないが、被災地以外の地方業界からは、公共工事関係予算の5%留保分を含め、先行きに強い不安があった。その意味で、5%留保が解除され、今回の震災を契機に全国で高まっている防災対策にも目配りしたことは評価されてもいいと思う。
A ただ総額12兆円という「水増し」の額に額面どおり期待しすぎていた側面があったのも事実だ。
B 今後懸念される問題は、政府が5年間で集中的に復興するための手当としての補正予算が想定されていないことに尽きると思う。
A 震災対策が主眼であるはずの第3次補正に円高対策やB型肝炎対策費が盛り込まれていることが数字を膨れあがらせたという指摘は分かるけど、それがなぜ懸念になるの。
B 復興対策として補正予算を編成しないということは、今後の復興予算は一般会計で手当することになる。当然、財政抑制からシーリング的なものが科せられると予想される。そうなれば、復興予算として公共事業関係費が必要ならば、被災地以外の公共事業関係費がこれまで以上に削減される可能性は否定できない。臨時国会での議論でも、当然この問題指摘が出てくることは確実だ。
D 3次補正の水増しとも関連するけど、政府・与党の3次補正の歳出額を賄う財源確保議論にはどうしても違和感を感じる。復興に関連して復興債の償還期間や増税のあり方が焦点になっているみたいだが、一般会計で40兆円を超える国債発行ももっと議論すべきだ。そもそも、震災復旧・復興とは国が責任を持って全面的に取り組むべきもので、財源云々の問題ではない。まして震災復興とはなんの関係もない事業も織り込んで3次補正予算として計上するから、ややこしくなってしまう。
C 確かに、被災地が必要とする復興予算と国の計上する予算が合わないことが想定されるけど、被災自治体側からすると今後、予算確保競争に負けた自治体が出かねないことの方が問題だと思う。震災・津波で被災した自治体は数多い。先行して復興計画や予算確保に動き、実際に事業化できる自治体の陰に隠れて、復興が進まない自治体が出ることは避けなければならないと思う。

事業者選定結果に八王子市が困惑/JR貨物の八王子駅南口開発

 東京都八王子市は、日本貨物鉄道(JR貨物)が八王子駅南口の所有地で計画する開発整備の今後の展開に困惑している。市は以前から中心市街地の活性化を重要課題に掲げ、シネマコンプレックス(複合映画館)などを例に商業施設の誘致を求めていたが、同社が事業提案型・総合評価方式の一般競争入札で選定した事業者が医療法人社団を代表者とするグループだったため、建設するビルの施設用途に不安を抱いている。
 事業者の代表者は葵会(東京都千代田区)で、同社とJR貨物ともに提案施設の中身やグループの各構成員などは非公表としている。市は代表者が介護老人保健施設や医療施設などを運営する医療法人社団であることや、現時点で市に対して報告や説明がなく、情報がないこともあり、まちづくりの観点から困惑を隠せない。
 開発事業などの調査・計画や指導などを担当する同市市街地整備課は、駅前の立地特性を生かしたビルの建設が不可欠と考えている。このため、施設用途によっては、これまでの方針を変えず、「引き続き地域の活性化に資する商業施設の整備を要請していく」としている。
 JR貨物は設計を2011年度、工事を12年度に発注し、工期に設定した13年7月1日までに施設を完成させ、建設後に土地・建物を事業者に貸し付けることにしている。
 建設地は同市旭町30-92ほかの敷地面積約3700㎡。商業地域の土地で、敷地条件から最大で延べ2万4000㎡の建設が可能となっている。

2011/10/27

ビルドライブ・Kobeを連覇した芝浦工業大の衣袋洋一に聞く

 96時間の限られた時間の中でBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の技術を競う設計イベント『Build Live Kobe』で、自身の研究室に所属する学生チームが2連覇を達成。「アドバイスした以上のアイデアを加え計画をまとめた」と笑みを浮かべる。BIMが登場する前から「3次元的思考」の大切さを学生に訴え、情報共有を重視する設計教育を実践したことが連覇につながった。
 建築生産システムを劇的に変える可能性を秘めているBIMだが「建物をつくる上での生産性や効率性だけを追い求める傾向にあるのでは」とも。「設計にはデザインや美しさが求められる。そうしたクリエーティブな部分をBIMでいかに表現できるかが大切」と感じている。 『Build Live Kobe』には、院生を中心に編成したチーム「TMT」で参加。実績のある社会人チームを抑え最優秀賞に選ばれたのは「将来性や発展性を感じさせる使い方で、デザインなどが高く評価されたからではないか」とみている。
 「公共事業でBIMを導入する機会はこれから増える。講演などを含め、さまざまな機会を通して設計者にも刺激を与えていきたい」と地域レベルでの普及活動にも余念がない。

スカイツリーのタワークレーンは「親亀子亀孫亀方式」で降ろした!/大林組が特設サイト

 大林組が、自社HPに特設サイト「解決!!タワークレーンの謎」を公開している。これを見れば、仕組み、設置や解体方法など、タワークレーンのいろいろな“謎”が解ける。
 例えば、「スカイツリーのタワークレーンはどうやって降ろしたのか?」という疑問があるが、答えは「親亀子亀孫亀方式」で、HPを見ればどうやったかがわかる。
 施工中の東京スカイツリーに導入した特別仕様についても紹介しており、巻上ワイヤーは長さ420mに達し、高さ350mの第1展望台までの建て方に対応できるようにチューンアップしているそうだ。
 同社では「クレーンはタワー建設の命」という。支柱がパッションオレンジのタワークレーンは大林組だけの独自カラーということで、ゼネコン各社それぞれで色が違っている豆知識も紹介している。
ホームページはここ。
http://www.obayashi.co.jp/towercrane/

横浜という都市について朝まで議論/ヨコハマ研究会が書籍発刊でパーティ

 「これからどうなる?ヨコハマ研究会」が、書籍『これからどうなるヨコハマ』を発刊した。同研究会は、横浜の身近にありながら議論できていない都市の具体的なテーマを探るため、2011年に発足。横浜・馬車道の「BankART School」で展開した議論をまとめ、書籍として出版したものだ。
 書籍の出版にあわせて21日、横浜トリエンナーレの特別連携プログラム「新・港村」の会場で出版記念パーティーも開いた。
 パーティーでは、佐々木龍郎佐々木設計事務所代表、馬場正尊東北芸術工科大学准教授(Open A代表)をコーディネーターに迎えて総括の議論も行い、横浜のこれからについて朝まで語り明かした。
 本は、▽創造都市vs文化観光都市▽東横線廃線跡地▽福祉-個人還元vs公共還元▽水辺▽横浜居住-都市居住を考える▽横浜居住-団地再生/高齢化団地▽地場産業商業vs地域産業--など12項目で構成。発行はBankART1929、本体価格は1冊1000円(税別)。

2011/10/26

最優秀に青木淳建築計画事務所/広島・三次市民ホールプロポーザル


 広島県三次市が実施した(仮称)市民ホール建設設計業務の公募型プロポーザルで最優秀提案に特定された、青木淳建築計画事務所の提案概要と審査講評が明らかになった。
 青木事務所は、「市民がにぎわう、市民が主役の、文化の街角“小さな街”」「“表”と“裏”の区分けを流動的にする、基本骨格としての回廊」をテーマに提案を作成した。
 空間的なアプローチとして、「いつ行っても、いろんな場所でいろんなことが行われていて、それに参加したくなる空間。いつでも音楽や演劇を中心としたさまざまな活動が繰り広げられる。市民それぞれがもっている“文化”がここで引き出され、育てられ、伝えられる。施設というより小さな街のような空間。いろんな人の出会える、そんな仕掛けがいっぱいつまった空間」を提案した。
 また、「表と裏の区分けが流動的であることが大切。表裏、それぞれのサイズや個性が異なるさまざまな空間を用意し、まずはそれらを巡ることができるような回廊」を基本骨格に据えた。
 この青木事務所の案に対して講評は「基本コンセプトをわかりやすく説明した」と評価、さらに「施設の基準平面を地盤から5m上げて災害時に対応する防災の姿勢が明快に示されている」とも評価した。
 回廊については「さまざまな機能が固定的かつ流動的に利用でき、施設を最大限に有効活用することが目指されている」、「演じる側と享受する側の空間の流動性を高め、一体化させる市民文化のあり方」などにも言及した。
 また、「三次市の伝統的な芸術・文化をもとにした将来の発展への視点が示されており、子どもたちを含めて市民と共同で新しい文化施設を造り込んでいく、市民参加型まちづくりにも合致している」と締めくくった。
 同ホールは、三次町131-1地先(願万地地区)の敷地約1.4haに建設する。基本計画では、プロのツアー公演なども視野に入れ、1000席規模のホールをメーンとする延べ6000㎡程度の規模を想定している。事業費は概算で35億円程度を見込む。
 プロポーザルでは、全国から66事務所が参加表明し、提案書を提出した36者のうち35者が選考の対象となった。1次審査で5者に絞り込み、16日に開かれた公開ヒアリング、選定委員会(委員長・杉本俊多広大大学院工学研究院教授)による2次審査で特定した。

震災復興で銚子のサンマ3千尾/東洋建設らが佐原市で

 千葉県香取市にある川の駅・道の駅「水の郷さわら」を運営するPFI佐原リバー(緒方一幸社長)と、同社に出資する東洋建設は22日、水の郷さわらで「佐原deさんま祭り」を開いた。東日本大震災からの復旧・復興を祈念したイベントで、参加者には宮城県の気仙沼港や千葉県の銚子港で水揚げされたサンマ約3000尾のほか、香取市産の果物などが無料でふるまわれた=写真。
 開会式では緒方社長が、「こうしたイベントをきっかけに新たな絆ができたらいいと思う」とあいさつした。一方、東洋建設の毛利茂樹社長は「当社の社員が偶然『目黒のサンマ祭り』に参加し、目黒や気仙沼の方々とのつながりができ、今回のイベント開催につながった」と経緯を話した。
 当日は、東洋建設の役職員約150人がボランティアで参加したほか、国土交通省や香取市の職員も協力。目黒のサンマ祭の熟練者から指導を仰ぎながら、サンマの塩焼きをふるまった。常に200人ほど順番待ちの列ができる盛況ぶりで、多くの義援金も集まった。

伊東豊雄の「みんなの家1号」が完成/建築家の帰心の会が仙台でトークセッション

 建築家に何ができるのか--。東日本大震災を契機に伊東豊雄氏ら日本を代表する5人で結成した帰心の会は10月25日、仙台市の産業見本市会館でトークセッション「東日本大震災から7カ月を過ぎて思うこと」を開いた=写真。当日は、帰心の会が今後展開しようとしている「みんなの家」の第1号が仙台市内に完成。内覧会も開かれた。
 みんなの家の設計者は伊東氏。モダニズムに対峙するような軒と縁側のある家を造ったことがセッションで取り上げられ、伊東氏は「自分の中では悩みが大きかったが、決心した後はものすごく楽になった」と話した。
 セッションには伊東氏のほか、山本理顕、内藤廣、隈研吾、妹島和世の5人が参加。5月末以来の全員参加によるトークでは、これまでの活動などをそれぞれが語ったほか、「みんなの家」の感想などが話された。
 隈氏はル・コルビュジエやルイス・カーンの変化を引き合いに、「内因、外因さまざまなことがきっかけで変わるもの。モダニズムへのアンチテーゼではなくこれが自然だと受け止めた」と述べた。内藤氏は「伊東氏は建築の概念を広げたのだと思う」と指摘。山本氏は「みんなで造るということはとても難しい。参加したというプロセスは重要だ」とした。妹島氏は「変わったとかいうことではなく、そこに住む人たちにできることを何かやりたいということだと思っている」と語った。

2011/10/25

阪急京都線上空に440tの鋼箱桁を架設/西日本高速の京都縦貫道

440トンの桁が阪急線上に移動していく
 西日本高速道路関西支社が進めている京都縦貫自動車道の建設で22日、阪急京都線上空に440tもの橋桁を架設する工事が行われた。電車の営業が終わった深夜に国内最大級となる1250t吊りのクレーンで、長さ約50mの鋼箱桁を2時間30分で架設した。施工は川田工業・駒井ハルテックJVが担当している。
 工事は、阪急京都線の大山崎駅~長岡天神駅間に長岡京第三高架橋の本線橋とAランプ・Dランプ橋を設置するために実施。事前に主桁と横桁、合成床版を組み立てた構造物を、超大型クレーンで一括架設する。7日にAランプの設置を終え、22日は本線橋が架設された。28日から29日にかけてDランプの工事を進める予定。
 22日は阪急線の最終電車が午前零時過ぎに現場を通過するのを待って、クレーンによる吊り上げを開始。1時に電車の機電が停止すると、クレーンは70mあるブームで工事ヤードに置かれた橋桁を一気に持ち上げた。クレーン自体を旋回するだけでなく、橋桁も旋回させて移動。1時30分には移動を終えて位置調整に入り、荷重解放や仮設材撤去を経て3時30分にクレーンを元の位置に戻した。
 橋桁は長さ48m、幅20m、重さ440t。一体化した桁が大きいだけに、吊り上げる際に荷重が偏ると主桁への変形が生じるため、仮設材をブロックの上部に設置するといった工夫も施している。これにより主桁に鉛直方向の力だけを伝えることができ、安定した作業につなげた。
 工事は京都縦貫自動車道沓掛インターチェンジ~大山崎ジャンクション間約9・8㌔建設の一環となる。2012年度末の供用を目指し、国土交通省と西日本高速道路会社の合併施行で工事を進めている。東海道新幹線や名神高速道路など交通の大動脈を跨ぐ工事が続いており、今月末には国道171号線上に高架橋を架設し、12年度初旬にはJR東海道本線上に長岡京第一高架橋を送り出し工法で架設する予定となっている。

三井化学が田原市で国内最大メガソーラーを計画

三井化学らの「たはらソーラー・ウインド」
 三井化学が、愛知県田原市に国内最大規模の太陽光・風力発電所を建設する。中部電力の協力のもと、太陽光・風力発電の実績を持つ6社の共同事業となる。2012年6月の着工、13年9月の完成を予定している。総事業費は約180億円を見込む。
 『たはらソーラー・ウインド共同事業』と名付けた同プロジェクトには、三井化学のほかに三井物産、東亞合成、東芝、東レ、三井造船が参加。現在は中部電力か同社グループ企業の参加を要請しており、協議を進めている。
 事業内容は、田原市緑が浜地内の三井化学所有地約82万㎡に、年間発電量6750万㌔ワット時の発電施設を整備する。事業期間は18年間。発電した電力は中部電力に全量販売する。
 三井化学によると、建設予定地は日照時間・平均風速ともに国内では最高水準。今回のプロジェクトは、愛知県と田原市の新エネルギー推進施策に合致することから、両者の支援も受ける。

「再利用できるものは絶対逃さない!」石巻地区のがれき処理開始/鹿島JVの佐々木正充所長に聞く

佐々木正充JV所長
 宮城県は、震災で発生した災害廃棄物を県内4ブロックに分けて処理している。最大ブロックは、鹿島・清水建設・西松建設・佐藤工業・飛島建設・竹中土木・若築建設・橋本店・遠藤興業JVが受注した石巻ブロック。約2000億円で災害廃棄物約685万t、津波堆積物約200万tという空前ともいえる量のがれきを処理する。
 23日は現地で安全祈願祭が行われ、他の3ブロックに先駆けて動き出した。誰も経験したことがない業務をどうやって成功させるのか?自らも石巻市民として、地域の復旧に強い思いを寄せる佐々木正充JV所長(鹿島)に話を聞いた。

--この仕事について、どう思いますか? 「これまで原子力発電所やダムの建設に携わってきたが、今回の業務の全容を聞いて、その量、金額の大きさに驚いた。管理技術者になれと言われ、私で良いものかと悩んだが、石巻に住んで20年になり、『こういう機会こそお前がやるべきだ』と役員に言われて腹を決めた」
 「うれしい半面、責任と使命の重さは図りしれず、非常に緊張した思いがある。地元に期待されていると感じるが、熱い思いを持ちながらも気負うことなく業務を進めていきたい」
--業務内容は? 「石巻市内に22カ所ある一次集積されたがれきを雲雀野埠頭の中間処理のヤードに持ち込んで、粗選別、破砕分別する。その後に再生処理するもの、最終処分に回すもの、焼却するものと、どんどん細かく分けていく。このとき、なるべく石巻地区の中で再生できるものを増やしたい。手間も費用も掛かるが、リサイクルできるものは絶対逃がさないという趣旨で取り組む」

石巻地区には膨大ながれきが山積みになっている。
--運搬の量が膨大だが? 「陸上輸送で大事なことは交通渋滞解消だ。中間処理ヤード前の日本製紙周辺は現在でも渋滞しており、われわれが入ると運搬車両がさらに増えることになる。交通シミュレーションソフトを使い、受け入れる側の能力と渋滞が生じない台数をシミュレーションし、使用台数を400台程度に決めた。交差点に人をつけて状況を把握したり、ダンプ全車両にGPSを載せて、集中管理し、通常の生活に支障を来すような状態は解消したい」
--破砕選別について 「魚網など、今まで破砕したことがないものがかなりあるため、デンマーク製の高性能破砕機を導入する。これまでの実績から、国産のものは長いロープなどがあると巻きついて停止するが、今回採用したM&J社の破砕機は、そうしたものに対し高い能力があると聞いている。一度現場で試験施工したが、かなりのスピードで処理できることが実証された」
 「ただ、がれきの中には鉄板など、いろいろなものが含まれているため、実際にやってみないと分からない面もある。破砕機を使用する前に手選別を行い、鉄や長尺ものなど、処理しづらいものを先に外して、能力を発揮させるようにしたい」
--地元雇用が期待されている 「現在、石巻、東松島、女川の2市1町の中で、休んでいる建設系作業員はゼロに近い。できれば水産加工や、工場が打撃を受けて100%稼働に至っていない製紙会社、製鉄会社などから雇用したい。現在は、来年4月あたりに施設の完全運転を目標としているが、それに合わせて雇用要請に応じていただければありがたい。石巻商工会議所の賛同・協力を得て、個人的に募集するのではなく、企業を通して何人かのパーティーで来ていただけるようお願いしている」
--安全対策について 「これまで、われわれと一緒に仕事をしてきた作業員はいわゆる“職人”と言われるプロ集団だが、今回の場合はそうではないため、完全にすべてをマスターすることはなかなかできない。その中で、(業務委託する)清掃業の企業には、清掃経験のある人を雇い、その人たちにきちんとした教育をしてもらうなど、部分部分に関しては馴れている業種の方に指導してもらいたい。われわれゼネコンはその全体を管理する調整役として力を尽くしていきたい」

2011/10/24

前川國男設計の京都会館/保存改修を著名建築家ら申し入れ

 わが国近代建築の父と言われた前川國男が設計し、日本のモダニズム建築を代表する作品として知られる京都会館の再整備事業をめぐり、著名建築家らで構成する「京都会館を大切にする会」(代表・吉村篤一元奈良女子大教授)は25日、建築的価値を尊重した保存改修を求める要望書を門川大作京都市長に提出する。
 同会館の第1ホールを建て替える市の計画に対し、「中庭と第1ホールを中心とした伸びやかな内外の空間構成」など、建築的価値の尊重を前提とした保存改修や、景観への配慮を求める。さらに、基本設計、実施設計、施工の各段階で意見を反映する時間を十分に設け、専門家による中立的な委員会が全体監修することを要望する。
 呼び掛け人は吉村氏のほか、京都工芸繊維大教授の松隈洋教授、東大名誉教授でDOCOMOMO Japan代表を務める鈴木博之氏、建築家の山崎泰孝氏や若林広幸氏ら10人。
 賛同人として、日本建築家協会(JIA)の芦原太郎会長や、建築家の新居千秋氏、遠藤秀平氏、内藤廣氏、藤森照信氏、坂倉竹之助氏、槇文彦氏、吉羽逸郎氏ら著名建築家や文化人など77人が名を連らねている。
 芦原氏は「環境や文化の継承を担う、建築の価値を大切にしてください」とメッセージを寄せている。
 同会館は、1960年に完成し、日本建築学会賞、BCS(建築業協会)賞など数々の賞を受賞した前川國男の代表作品の一つ。近代建築の保存活動などを展開しているDOCOMOMO Japanが「日本のモダニズム100選」に選出したほか、日本建築学会も3月に保存要望書を市に提出している。

学校施設に日光産のスギ、ヒノキを使うことで板橋区と日光市が覚書

日光の県産材を板橋で使う
 東京都板橋区と栃木県日光市は、「木材の使用と環境教育についての覚書」を締結した。同区は今後の学校施設整備に日光産木材を使用し、同市は子どもたちに環境学習の場を提供する。伐採や製材を経て2012年7月にも、改築中の板橋第一小学校と赤塚第二中学校の建設現場に、日光スギやヒノキが搬入される見通しだ。
 同区は1983年に、旧栗山村(現日光市)と交流協定を結び、その後村内に12ha超の「板橋の森」が誕生するなど、長年にわたり友好関係を築いてきた。
 区が08年度にまとめた学校施設整備の考え方には、姉妹都市などの木材を積極活用することが盛り込まれ、実際に改築する3学校の調整会議では、施設設計の方針に木材利用を位置付けた。
 このような経緯から、区職員が「板橋の森」を訪れ木の育成状況を調べたところ、成木になっていないため現時点では使えないことが判明。同市に学校改築工事への木材供給を打診し、今回の覚書締結に至った。

横浜市が慶應大の日吉寄宿舎を歴史的建造物に認定

 横浜市は14日、港北区にある慶應義塾大学(日吉)寄宿舎(南寮および浴場棟)を歴史的建造物に認定した。寄宿舎は1934年の日吉キャンパス開設に伴い建設された。
 RC造3階建ての南寮、同地下1階地上2階建ての浴場棟、中寮、北寮で構成する。戦前に建てられた現存する高等教育機関の寄宿舎としては希少な施設で、モダニズム建築の先駆者である谷口吉郎が設計し、タイル張りのシンプルな外観が特徴となっている。施工は島藤組が担当した。
 現在は、中寮だけが寄宿舎として使われており、同大は南棟と浴場棟の改修を予定している。老朽化した南棟などの外観を創建当時に近い状態に復元した上で中寮の寄宿舎機能を移転する。所在地は港北区箕輪町1-11-19。
 今回の認定で、横浜市の歴史的建造物は81件となる。

2011/10/21

記者座談会・電設協が登録基幹技能者の処遇改善を提案

A 日本電設工業協会(林喬会長)が登録電気工事基幹技能者の処遇改善に取り組み始めるようだけど。
B 13日、名古屋市で開かれた会員大会で人材委員会の原洋二副委員長が人材育成の取り組みと登録基幹技能者の処遇改善について基調報告し、「電気技能者(電工)の年収を50万円アップし、50歳(全国平均)で年収650万円以上を目指そう」、「大手企業から基幹技能者の処遇改善の具体的な仕組み作りに着手してもらう」と提案した。
A それまでの経緯は。
B 実は、ことし3月の検討結果報告では、処遇改善策は了解するが、受注環境が厳しくて原資確保が困難だと見合わせた経緯がある。春以降、一部のゼネコンに優良技能者の職長手当てを出すような動きがあり、7月の理事会で基幹技能者の処遇改善をテーマに掲げることを決めたようだ。
A 会員企業の反応はどうなの。
C 「厳しい受注環境下だからこそ人材の確保・育成につながる投資をすべき」という積極的な経営者もいる。
D 既に日本電設工業が11月から試行、来年4月から本格運用を決めている。日額2000円だけど、「金額よりも技能者が誇りを持てることが人材の確保・育成につながれば」と考えているそうだ。実際、「手当てがコストアップになっても、トータルの現場人件費は下がる」とみる経営者は多い。
B 技能者の処遇改善と人材の確保・育成は一体のものだと思う。
A ところで業界全体の人材確保はどうだろう。
C これは、生産年齢人口が減少している日本の構造的問題でもある。言い換えれば、産業間の人材確保競争で、技能者の処遇改善と確保も、産業間の人材確保競争に勝つための側面が強い。
A ただ一部大手ゼネコントップは、短期的に震災需要はあっても、中長期的には国内建設市場のうち、特に土木系技術者の過剰感を口にし始めている。過剰感があるなら今後の人材確保を問題にしなくてもよさそうだけど。
D それは違う。技能者もそうだけど、技術者は主任技術者や監理技術者になるまで経験が必要だ。理想から言えば、受注可能市場規模に合わせて、人材が段階ごとに育成されるよう年齢階層ごとのバランスが必要だ。過剰感を理由に人材確保・育成に動かなければ、将来の担い手がいなくなってしまう。
A でも市場が今後拡大しないなら人材確保も問題にならないんじゃないの。
B 技術者配置が法律で定められている現状と、今後さらに品質確保と生産システムの効率化が求められていることを踏まえれば、技術者数が建設業の企業規模を決める構図は変わらない。その意味では、産業間だけでなく、業界内の人材確保競争が激化するのは確実だと思う。
D 技能者の確保はもっと深刻だ。過去、経験を積めば高収入・独立という夢が技能労働者のインセンティブだった。でも、低収入で保険未加入者が増加している現在の産業に人気が集まるとは思えない。人材確保問題は、徐々に熱くなって結局気づいたら死んでしまう『ゆでガエル』と同じ。今指摘される危機感は、将来必ず現実の危機になることを考えるべきだと思う。

「これ以上職人を減らさない!」/関西鉄筋と2次下請けの「虹の会」が意見交換

 関西鉄筋工業協同組合(岩田正吾理事長)と、関西地区の鉄筋工事業2次下請企業などで構成する「虹の会」(山尾健三会長)が19日、大阪市中央区の建団連会館で意見交換した=写真。今後、両者が協力・連携して社会的な認知度向上に努め、勉強会などを通じて今後の「請負」のあり方を考えていくことなどで意見が一致。定期的に会合を開くことを確認し合った。
 意見交換は、虹の会が申し入れて実現したものだ。同会は職人の処遇改善などを要請し、関西鉄筋の岩田理事長は、ゼネコンの担当者も職人の窮状を理解し、変わりつつあるとの認識を示した。
 さらに「職人の処遇改善を実現するには、お互いにさまざまなことを勉強する必要があり、さらに鉄筋工事業を社会的に認知してもらう活動も必要だ」、「請負においても、きちんとコストとフィーを精査し、適正価格を得られる仕組みを取り入れる必要がある」と話した。
 終了後、岩田理事長は「これからは業界からさまざまなことを発信していく時代。お互いがそれぞれの立場で活動し、その内容を報告し合って、可能なところは連携していきたい」と述べた。山尾会長は「われわれの目的は鉄筋工の生活を守ること。これ以上職人を減らさないよう努めるとともに、若手も育成していきたい」と話した。

名鉄太田川駅が12月17日から高架駅に

 名古屋鉄道の常滑線・河和線太田川駅(愛知県東海市)が12月17日から高架駅舎に変わる。付近の鉄道高架化工事が完了したためで、高架(本線)への切替運行を始めるとともに、本駅舎の供用を始める。
 鉄道高架化は、愛知県が事業主体として進めている常滑線・河和線太田川駅付近連続立体交差事業の一環として、2003年3月から工事に着手した。事業区間は同市大田町堀切~高横須賀町尾之松(常滑線)の約2㌔と大田町川島(河和線)の約0・7㌔。
 今回の高架化で「開かずの踏切」である太田川1号踏切を始めとする同区間の踏切6カ所すべてが除去される。
 本線の切り替えに伴い、同駅は名鉄の駅としては初の3層構造の高架駅となる。3階には河和線上りホームを1面、2階に河和線・常滑線共用の下りホーム1面と常滑線上りホーム1面を配置。改札口は地上に設ける。
 高架への切替後、引き続き仮線を撤去し、交差道路と側道の整備を進める。

2011/10/20

書籍紹介・「建築家」とはなにか?『建築家と建築士-法と住宅をめぐる百年』

 「建築家」とは何か。建築士という国家資格の呼称とは別に存在する、この職能としての呼び名について説明できる人は一般にはほとんどいない。社会的に大きな役割を担う職能が、長きにわたって一般社会に認知されてこなかったのはなぜなのか。
 専兼問題や国の不作為など、さまざまな要因が考えられるが、著者は世の中の建築物の中で圧倒的な量を占める「住宅」を無視し続けてきたことが、議論が社会的に受け入れられず、混乱を極めた原因だと指摘する。
 「ここで注目するのは、明らかに建築としか呼べないものや、建築家としか呼びようもないものではなく、その周辺である」(序論)と述べているように、建築家と建築士の違いを生み出す元となった建築士法が制定された背景を、これまで語られてこなかった「住宅」というフィルターを通して解きほぐすことで、議論の原点を問い直そうと試みる。
 建築士法の制定から60年余だが、本書はそれより40年も前から法律ができあがっていく過程を追う。100年のプロセスを整理したとき、建築士資格の意味や建築家の職能が、これまでの議論を超えて浮き彫りになる。
 建築基本法の制定や登録建築家と専攻建築士の一本化など、現在も建築にかかわる制度の議論は続いている。1世紀かけてもつれた糸を解きほぐすには相当の時間が必要だが、UIA(国際建築家連合)2011東京大会での連帯の確認など、議論を深める機運は高まっている。
 (東京大学出版会・8190円)
amazonへのリンクです。 建築家と建築士―法と住宅をめぐる百年

横浜プリンスホテル跡開発が起工/住宅など14棟20万㎡

 横浜プリンスホテル跡地の開発計画が19日に起工した。総開発面積約11・7haの広大な敷地に、総戸数1230戸の住宅棟13棟と商業棟1棟あわせて総延べ約20万㎡の施設を建設する。
 設計施工は商業棟や土木工事を大成建設、住宅棟を長谷工コーポレーションがそれぞれ担当。UG都市建築が基本設計、INA新建築研究所と三菱地所が工事監理を担当する。I工区は2013年6月下旬、II工区は16年2月中旬の完成を目指す。
 計画では多様なライフスタイルに応じた豊富な住居バリエーションを提供する、RC造地下1-2階地上3-10階建ての住宅棟(A-M棟)13棟と、RC造地下2階地上2階建ての商業棟を建設する。スーパーマーケットなどの商業施設や保育園などを誘致する予定で、JR磯子駅から建設地までをノンストップで結ぶエレベーターなども合わせて整備する。敷地内にあるRC造地下1階地上3階建て延べ1193㎡の旧東伏見邦英伯爵邸(貴賓館)は保全活用する。
 事業者は東京建物、オリックス不動産、東京急行電鉄、伊藤忠都市開発、日本土地建物販売の5社。建設地はJR線磯子駅至近の磯子区磯子3-1134-18ほか。

けんちくのチカラ演ずるプロが語る・歌手/加藤 登紀子さん

 歌手、加藤登紀子さんは毎年12月、ファンにはすっかりなじみとなった「ほろ酔いコンサート」を全国各地で開く。「産声」をあげた東京がことし39回を数え、スタートの日劇ミュージックホールが閉鎖となり、新宿のシアターアプルに移り、ここも閉鎖。2つのホールを「看取って」いまは、よみうりホールが会場だ。34回になる大阪もいまは3つ目の梅田芸術劇場を使っている。「40-50年使われ続けてきたホールは、重量感があって、温かい音がするところが多いと思います。いろんな音が染み込んでいて、魂のようなものを感じます。年輪を重ねたホールのコンクリートや木に包まれて、時代の変遷に思いを馳せることで音も変わってくるのかもしれません。建て替える方が経済的だということでホールを壊してしまう話を耳にしますが、もったいない。残念ですね」。そんな中で、30回を重ねた京都の会場は、「都をどり」で有名な「祇園甲部歌舞練場」だ。築後100年近くになるが、建物は内外観ともほとんど変わらない。ここは、加藤さん自身と母親の淑子さんにとって思い出深い場所でもある。
 祇園甲部歌舞練場は明治の初め、芸妓・舞妓のお茶と歌舞を披露する「都をどり」開催の場として造られた。明治維新の東京遷都に伴って、京都の衰退を危惧(きぐ)して京都博覧会が開かれることになり、その余興として考えられた集団での華やかな舞が都をどりだ。建物が現在の場所に移転新築されたのが大正2年(1913年)になる。いまも毎年4月に30日間の公演が続けられている。

2011/10/19

谷口吉生氏設計の「世界に開かれた静謐空間」/鈴木大拙館が金沢にオープン

 金沢市出身の世界的仏教学者、鈴木大拙を記念する鈴木大拙館が18日にオープンした。設計は谷口吉生氏(谷口建築設計研究所)。
 同館は玄関棟、展示棟、思索空間棟の3棟を回廊で結ぶとともに、「玄関の庭」「水鏡の庭」「露地の庭」で構成。これら空間を回遊することで大拙の思想に触れながら思索し、語り合えるようになっている。
 規模はRC一部S造平屋建てと土蔵2階建てあわせて延べ631㎡。2010年10月から建設を進めていた。建設地は同市本多町3地内。
 同日開かれた開館式典で谷口氏は「大拙にふさわしい日本的空間ということで、全体を床の間にしようと考えた」などと設計コンセプトを披露した。
 施工した清水建設・豊蔵組JVの三浦正之所長は「谷口先生の判断を仰ぎながら、満足できる作品に仕上げることができた。現場一丸となった成果だ」と話している。

明治末期の純和風建築「清閑邸」をめぐるツアー/小田原で11月12日開催、月内まで受付

有形登録文化財の「清閑邸」
 登録有形文化財となっている明治末期の純和風建築「清閑邸」などをめぐる古建築ウオークツアーが、11月12日に小田原で開かれる。このほか、小田原文学館本館・別館、小田原宿なりわい交流館、小田原城正規登城ルートなど小田原市内の古建築を巡る。定員は100人。当日は小田原駅に集合し、歴史的風致保全への理解を深める。
 この催しは、11月の「公共建築月間」、同月11日の「公共建築の日」を記念して行われるもので、「公共古建築ウォークin小田原」と名付けた。申し込みは10月31日まで、催し名、電話・ファクス番号、メールアドレス、参加人数を明記し、ファクス(0465-33-1565)か、電子メール(kenchiku@city.odawara.kanagawa.jp)で受け付ける。事務局は公共建築月間実行委員会事務局(小田原市建築課内)が担当する。
 小田原市は、東海道の宿場町、小田原城の城下町として栄え、歴史と伝統を受け継いだ祭礼行事や旧来のまち割り、歴史的建造物などが一体となった歴史的風致が現存している。これを守り育て、次世代に継承していくため、ことし6月、国から「小田原市歴史的風致維持向上計画」の認定を受けた。
 現在、▽歴史的風致の核となる建造物の保存活用の推進▽歴史的風致の残るまちなみ環境整備の推進▽歴史・伝統を反映した人々の活動に対する支援--など新たな歴史まちづくり事業を開始しており、「公共建築の日」などを機会に歴史的風致を保存する重要性を周知する。

塩分含んだ津波被害のがれきを再利用できる!/早大らが海水、海砂でつくるコンクリート開発

流動性が高いことも特徴だ
 津波被災地で大量に残されている塩分を含んだコンクリートがれきを、有効に再利用できる技術が開発された。早稲田大学、五洋建設、東亜建設工業、東洋建設は、海水と海砂を使う自己充填コンクリート「SALSEC(ソルセック)」を開発。ソルセックは、海砂や海水をそのまま使えるのが大きな特徴の一つで、津波被害によって海水に浸かった砂や骨材のほか、廃棄処分されたコンクリートから取り出した再生骨材も除塩せずに使用できる。
 通常の工事でも、沿岸部では材料が現地調達できるため、輸送コストを削減する。また低粘性で高い流動性を持つため締め固め作業が不要だ。施工の効率化や工期短縮、トータルコスト削減が期待される。今後は、沿岸部などの緊急復旧工事や輸送アクセスが悪い地域の工事に活用する。
 また、一液型の特殊な混和剤で、高い流動性を持ち、ポンプ圧送が楽になり、施工も早くなる。RC造の構造物では、ステンレス製の鉄筋を使うことで、飛来塩分が多くても100年以上の耐久性を確保できるという。
 今後は、製造、打設、管理まで一連の施工システムの構築や適用範囲の拡大に向けた開発を進める。労働者や材料の確保が難しい緊急復旧工事、沿岸部や離島部でのインフラ整備工事などで、積極的に活用していく考えだ。

2011/10/18

今回は「グローブ」でエコ建築を実現/伊東豊雄氏の基本設計まとまる/岐阜市のつかさのまち夢プロジェクト

伊東事務所が製作したプロジェクト模型
 岐阜市で伊東豊雄氏が設計している「つかさのまち夢プロジェクト」第1期複合施設の基本設計がまとまった。この建築では、「グローブ」と呼ぶ巨大な半球状の空調採光設備で、自然換気と自然光の取り込みを行うアイデアが特徴だ。柔らかく起伏するシェル構造の木造屋根は、細い鉄骨の柱で軽快に支えられ、薄い木材を層状に重ねて編むことでファブリックのように軽やかな架構をつくりだす。また、閉架式の書庫をあえて1階中央に配置する大胆なレイアウトも目を引く。
 今後は2012年3月末までに実施設計を完了させる予定だ。順調にいけば12年度の着工、13年度での完成を目指す。
 このプロジェクトは、岐阜市が岐阜大医学部等跡地整備事業として進めているもの。“知の拠点”の役割を担う(仮称)中央図書館、“絆の拠点”となる(仮称)市民活動交流センターと“文化の拠点”となる展示ギャラリーなどの複合機能を、自然エネルギーを最大限に活用したエコ建築で実現する。
 規模はRC・S・木造地下1階地上2階建て延べ約1万5400㎡。1階から2階の床まではRC造とし、2階の床は梁のないフラットスラブ構造とすることで、1階を天井の高い開放的な空間にする。
 「グローブ」は、上部に向けて徐々に絞れた形(ベルマウス構造)が換気量を増幅させ、自然換気量が3割増加するという。
 1階には、協働の広場や各種スタジオ、交流・談話サロンなどの市民活動交流センターエリアと、オープンギャラリーや多目的ホール(200席程度)、展示室などの展示ギャラリー等エリア、本の蔵(公開書庫・閉架書庫)などの図書館エリアを配置する。
 2階はすべて図書館エリアとして活用。各機能がグローブと書架によって規定された伸びやかでフレキシブルな空間となる。所蔵可能資料数は合計90万冊(開館当初30万冊)。座席数は合計910席を計画している。
 建設地は市中心部に位置する司町40-1ほかの約2ha。

町工場の技術でお寺の「本尊」を守る!/川崎の寺院に長周期免震テーブル納入

免震テーブルへの本尊設置
 町工場の技術力を集結した日本初の「長周期地震対応免震テーブル」が、お寺のご本尊を守る。川崎市内にある中小企業6社で構成する「チーム等々力」(代表・堀端製作所)と明大理工学部の研究室が共同開発した、免震テーブルが17日、川崎区にある円能院に設置された。
 免震テーブルは、チーム等々力と明大大亦絢一郎教授(当時)が川崎市産学共同研究開発プロジェクトなどを活用して開発した。これまでに電気通信大学に納入した実績があるが、市内への設置は今回が初めてだという。
 円能院への設置は、当初開発したテーブル(MT-II型)を改良。装置は本尊と灯籠(とうろう)2カ所の計3カ所に設置した。本尊下のテーブルは約80㌔、灯籠下は約60㌔の重量がある。ともに耐重量は約100㌔で、前後左右、斜めに25cmスライドして、設置物の倒壊を防ぐ。
 テーブルの設置作業は午前10時から始まり、本尊の下には1100×900mm、2本の灯籠の下には800×800mmのテーブルを設置した。堀場製作所などの関係者が手作業で実施し、おおむね2時間で完了させた。
 円能院の佐藤隆一住職は、東日本大震災での揺れを目の当たりにし、免震テーブルの設置を決断した。設置後、「装置も木枠で覆われて違和感がない。あれだけ動けば大丈夫。安心しました」と安堵の表情だった。

働いても苦しくなるばかり/専門工事2次下請業者・職人が大阪で決起大会

 働けど働けど苦しくなるばかり。このままでは人として生活できない--。専門工事業の2次下請業者と職人有志による決起大会が16日、大阪市天王寺区の天王寺区民センターで開かれた=写真。この決起大会は、大会実行委員会(森本大輔委員長、委員7人)が呼び掛けたもので、約70人が参加した。
 開会にあたり「経営の危機、職人の貧困は限界を超えている。職人のなり手はなく、今の職人も次々辞めていく。業者・職人が生きるための絆を強める以外にない」との大会趣旨が説明された。
 森本委員長は、労務賃金未払いの悪例や自らの生活の困窮、社会保険の義務化などを訴え、「ゼネコンだけが利益を生む片務性を改めねばならない」と強調した。建設現場の実情が報告され、近畿建設専門工事業教育情報センター主宰の川口末夫氏が「公共、民間工事を問わず見積もりには、法定福利費が盛り込まれている。それが下請けには支払われていない」などと指摘した。
 最後に▽人が来る建設業界に▽下請単価、職人の日当引き上げ▽社会保険料保障▽建設の仕事を増やせ--との主張を大会決議した。11月13日には大阪府庁前からデモ行進する予定だ。

2011/10/17

津波の時に救命胴衣も提供! ダイドードリンコが自販機の救援機能を強化

 「しゃべる自販機」が特徴の飲料メーカー、ダイドードリンコ(本社・大阪市、高松富博社長)が、自動販売機を災害時にも最大限生かす取り組みを始めた。
 1台当たり約400本の飲料水を無償提供する災害救援機能付き自動販売機(災害救援ベンダー)に、1450カンデラの高輝度LED(発光ダイオード)モニターを搭載したデジタルサイネージ(電子看板)搭載のゴミ箱を併設して災害時の情報発信を強化するという。
 デジタルサイネージは、行政、生活、交通、気象、イベントなど地域に密着した情報を始め、各種広告を配信している。災害時には関連情報を発信する。
 モニター画面は、戦闘機の計器板にも使われるほどの強度を持ち、超高性能バッテリーで停電しても稼働する。
 さらに、津波、高潮被害を受けやすい沿岸部に設置するものには50着程度の「救命胴衣」を収納する「ダイドー・レスキュー・ボックス」も開発している。ボックスはオレンジ色で、ラウドスピーカーと、10万カンデラのLEDによる照明を備える。
 津波などの各種警報を浜辺や、沿岸部で遊ぶ海水浴客などに音と光で伝える。緊急時に救命胴衣を付けながら、情報を得ることができる。

土木遺産に奈良駅舎など22件を選定/土木学会

旧奈良駅舎
 土木学会はが、2011年度選奨土木遺産22件を決定した。土木遺産は、発電所や水路、防波堤、橋梁、トンネルなどから選んでいる。2009年度からは日本人技術者が携わった海外の施設も対象に加えたが、今年度はすべて国内の構造物となった。
 土木学会は、幕末から昭和20(1945)年代までの近代土木遺産を対象に、社会や土木技術者へのアピール、地域づくりへの活用を目的に、00年度から実施している。
 なかでも「旧奈良駅舎」は、1934年に竣工したもので、和洋折衷の帝冠様式を採用している。奈良駅の高架化と同時に役割を終えたが、04年に曳家工事で移動され、09年7月から奈良市総合観光案内所として第二の役割を果たしている。
 そのほかの2011年度土木学会選奨土木遺産は、次のとおり。
 ▽道庁正門前木塊舗装・銀杏並木(札幌市)▽虻田発電所(北海道洞爺湖町)▽夕張川新水路(同長沼町、南幌町、江別市)▽船川港第一船入場・第二船入場防波堤(秋田県男鹿市)▽疣岩円形分水工(宮城県蔵王町)▽筑波山千寺川砂防堰堤群(茨城県つくば市)▽荻窪用水と関連施設(神奈川県小田原市、箱根町)▽真岡鐡道五行川橋梁・小貝川橋梁(栃木県真岡市、益子町)▽只川橋(群馬県下仁田町~富岡市)▽大源太川第1号砂防堰堤(新潟県湯沢町)。
 ▽菅橋(長野県木祖村)▽名古屋市旧第一ポンプ所と東山給水塔(名古屋市千種区)▽太田橋(岐阜県美濃加茂市)▽木曽川河跡湖(トンボ池)の聖牛(同笠松町)▽湊川隧道(神戸市兵庫区~長田区)▽旧奈良駅舎(奈良市)▽中古沢橋梁(和歌山県九度山町)▽被爆に耐えた装飾的橋梁―猿猴橋・京橋(広島市)▽高角橋(島根県益田市)▽滝宮橋(香川県綾川町)▽深浦水雷艇隊基地跡(長崎県対馬市)▽長崎堤防(鹿児島県薩摩川内市)。

103人が電気設備の積算競技に挑戦/きんでん

 きんでんが大阪市の同社本店内で設計積算競技会を開いている。今回は全国の各支店・支社から40歳未満の中堅社員103人が参加。電気設備設計、電気設備積算、計装、空調管、情報通信の5部門に分かれて各課題に挑んだ=写真。
 開催に当たって前田取締役技術本部長は「この競技会で、全体の技能レベルを底上げし、全国的な技術・技能の統一を図りたい」と話す。
 今回は電気設備設計部門と同積算部門で病院・医療関係施設をテーマとし、一般建物より厳しい要求事項が盛り込まれた病院電気設備の安全基準「JIS T 1022」に対する知識などを求めた。
 同競技会は毎年開いており、今回の参加者の平均年齢は32歳。審査後、10月に入賞者を決め、11月に表彰するという。

2011/10/14

原子力機構が除染方法を公募/福島警戒・避難区域12市町村

 日本原子力研究開発機構は、福島第一原発事故による除染方法を民間から公募する。警戒、計画的避難区域などに指定されている福島県内の12市町村を対象に、効果的な除染モデルを募集し、森林、農地、宅地、大型建造物・建物、道路の5項目を象に、汚染度合い別の除染計画を立案する。作業員の放射線防護や除去物の保管・処理計画も定める。
 公募は、モデル実証事業の実施者を選定して、2012年3月2日までに評価・報告を完了させる。予算上限は、1自治体当たり6億円程度を見込む。
 除染モデル実証事業は、内閣府からの委託。応募資格は国内の企業または共同企業体で、過去10年以内に放射性物質で汚染された地域の環境修復業務などの実績があれば、申請書類に明記を求める。選考審査では、今後の福島県内での技術活用、作業促進を見据え、県内企業や地元技術者の参画も考慮する。
 応募に当たっては、手順・方法から除去率、除去物発生量などを網羅した除染計画の提案を募る。現場作業期間は1カ月程度とし、その工程表も提示させる。また、モニタリング計画や放射線・安全管理計画のほか、除去物の移動や保管、発火対策を含む処理計画も求める。
 対象エリアは南相馬市、川俣町、浪江町、飯舘村を「A」、田村市、双葉町、富岡町、葛尾村を「B」、広野町、大熊町、楢葉町、川内村を「C」と、3グループに分ける。汚染レベルは年間100mmシーベルト以上の「高汚染地域」、20mmシーベルト以上100mmシーベルト未満の「中汚染地域」、5mmシーベルト以上20mmシーベル未満の「低汚染地域」に3分類する。
 汚染レベルの高低に応じた対象物ごとの除染方法などを盛り込んだ提案書類は、21日まで産学連携推進部研究協力課で受け付ける。書類と口頭で審査し、11月上旬に上位3者を選ぶ。この3者がA-Cのいずれか1グループを担当することとし、希望が重複した場合は評価が高い企業を優先する。
 除染方法は汎用性のあるものを基本としながら、それらの改善点に加え、新規の工夫も評価する。建物や道路では、表面の削り取りや再舗装などを想定。宅地では居住性の確保、農地では持続的な利用に資する提案などに期待を掛ける。

覆面記者座談会・コンサルの海外展開 活発化の様相

A このところ建設コンサルタントの海外展開が話題になっているね。
B ACKグループとその子会社オリエンタルコンサルタンツ、持ち株会社パシフィックコンサルタンツグループの3社が海外の民間市場開拓で業務提携をした。提携自体は珍しくないが、そのために共同出資会社を来春、新設することに本気度を示している。国内でも民間市場は容易でないけど、海外だとさらにハードルが高い。国内市場の縮小を考えると、それでも挑戦しなければいけないところまで追い込まれているといえる。12日に3社のトップが記者会見を開き、それぞれの思いを語った。ただ、新会社の資本金や出資比率など新しいことは何も出てこなくて少しがっかりしたけど。
A JR東日本(東日本旅客鉄道)を中心とする鉄道7社は、11月1日に海外鉄道事業のコンサルティング会社を設立する。「日本コンサルタンツ」という壮大な社名に、意気込みが感じられるが。
C 鉄道事業の発注対象は、車両や信号といった単品から、運営・維持を含む鉄道システム全体へと広がりを見せている。新会社は鉄道運営者としてノウハウを集約し、発注者・受注者双方に対する一連の支援業務を展開していくという。海外事業の検討業務などは、海外鉄道技術協力協会(JARTS)が中心的な役割を担ってきたが、新会社はJARTSの活動を鉄道に特化したものに発展させ、機動性も高める狙いがあるようだ。JR東日本の清野智社長は会見で、ゆくゆくは欧州の大手鉄道コンサル並みに成長させていければとも言っていた。鉄道分野では、相手国に日本規格を採用してもらえるかが、大きな課題。技術面は世界トップクラスを自認しているが、具体的に何がどう優れているか効果的にPRしていく必要がある。

登録基幹技能者の処遇改善/50歳年収650万以上目指す/電設協

 日本電設工業協会(林喬会長)は、登録基幹技能者の処遇改善に乗り出す。「基幹技能者の資格者を対象に、仕組み(案)をまとめた。電気技能者(電工)の目標年収として、50歳で現行の平均年収を50万円上積みし、650万円以上を目指すとした。13日、名古屋市で開いた2011年度会員大会で人材委員会(委員長・菅沼敬行住友電設社長)の原洋二副委員長が基調報告し、大手会員企業から具体的な仕組み作りに着手してもらうことを提案した。すでに数社が検討に入っているという。
 会員大会で電設協は、各社が処遇改善の具体的な方法の検討を進める上で参考となる一つのモデルとして、ワーキンググループが検討した職務手当て形式による支給の仕組みを明らかにした。
 例えば、施主の要望、現場の状況などにより現場に基幹技能者(上級職長)が必要とされる場合に適用し、会員企業は自社の協力会社、基本的に工事を発注する1次下請会社に基幹技能者の職務内容を書面に明記し、現場配置を要請する。配置予定の基幹技能者の人選は、会員企業と協力会社が協議し、双方の合意の下で決める。
 基幹技能者の手当ては、職務内容を踏まえ、会員企業と協力会社が協議して決め、基幹技能者の手当ては工事請負代金労務費の一部として会員会社が協力会社に支払う。会員企業は、工事発注書に基幹技能者の手当て相当額を明記し、協力会社は工事見積書に職務内容と金額を明記する。
 検討ワーキンググループが委員会社6社の施工部門を対象にヒアリングした結果、「配置技術者の人数を減らすなど技術者の人件費が少なく抑えられた」「工程、資材、安全などの管理が行き届き手直し工事が少なくなった」など、「配置による好結果が実証されており、処遇改善の意義、十分な効果が認められた」(電設協)という。

2011/10/13

西アフリカに被災者向けの日本人村を建設!/伊のコンサルタントと建築家の山下和正氏ら

 東日本大震災の被災者向けに、アフリカ西側の大西洋浮かぶ「カーボベルデ共和国」に日本人村を建設するという構想が持ち上がっている。提案者は、イタリアの空港建設コンサルタント、ハンス・フィッシャー氏。過去にカーボベルデ共和国の国際空港建設に参画した経験を生かし、同国に日本人村の建設を働き掛けようと、建築家の山下和正氏と東京工業大学の奥山信一准教授に声を掛けた。
 山下氏は「ニーズは不明だが、被災者自らが人生を再構築する選択肢の一つとして、このような提案があってもいい」と話す。
 フィッシャー氏と山下氏の出会いは、40年以上前にさかのぼる。当時、山下氏がロンドン市役所に勤めていた時、あるプロジェクトを通じて意気投合した。故郷も仕事も失った大震災の被災者を支援したいと思うフィッシャー氏の気持ちは強く、かねてからの友人である山下氏に協力を求め、賛同した奥山氏が技術協力を申し出た。
 山下氏は「現地復興を最優先で進めるべきだが、故郷も仕事も失った被災者の中には、まったく新しい生活を求めている人もいるはずだ。日本の漁業技術や文化を輸出すれば、現地の経済発展にも貢献できる」と実現へ意欲を語る。
 現地政府との調整が進めば、将来的にODA案件として計画をまとめる考えも示しているが、現状は難しい。そもそも日本は途上国への援助が主であり、途上国からの援助は受けていないためだ。
 ただ、山下氏は「このような動きが大切。今後も情報発信に努めたい」と話す。
 カーボベルデ共和国は西アフリカの沖合い約500㌔に位置する。大小15の島々で構成され、総面積は4,033平方㌔。1975年7月にポルトガルから独立した。人口は51万人。日本のような海溝型地震による災害の可能性は低い。
 観光産業が盛んで、分散する各島のリゾート開発も進み、年間を通じてヨーロッパから多くの観光客が訪れる。2007年にはエネルギー資源を持たない国として初めて、後発開発途上国の指定を解除されている。
 構想では、国際空港が立地するサル島を計画地として選定し、2パターンの日本人村を計画。プランAは宿泊業や農畜産業を営む居住地、プランBは水産加工など自立型漁業中心の居住地を提案している。

関西建築家大賞に矢田朝士氏/JIA近畿

ES house-01(撮影:絹巻豊)
 日本建築家協会近畿支部(JIA近畿、小島孜支部長)は、第11回関西建築家大賞の審査結果を発表した。受賞者は矢田朝士氏(ATELIER-ASH)で、『ES house-01』と『ES house-02』が受賞対象作品となった。12月に開く記念イベントで表彰する。
 同賞は、近畿支部会員を対象に、優れた建築活動をしたと認められた建築家に贈られる。建築作品の審査は、過去10年間に竣工した建物2点が対象とし、毎回異なる建築家が単独で審査に当たる。今回は香山壽夫氏(香山壽夫建築研究所)が担当。3月から5月までの募集期間中に応募があった16人から書類審査を経て5人に絞った上で、現地審査を実施した。
 香山氏は講評の中で「矢田氏の作品は、住宅をつくりだす本質的で普遍的な設計方法を提示している。敷地の条件に見事に対応し、住む人の生活を讃美するものとなっている」と評価した。
 矢田氏は無有建築工房での勤務を経て、98年にATELIER-ASHを設立。2006年のJIA近畿支部建築家新人賞を皮切りに、07年大阪府建築士会渡辺節賞、08年JIA新人賞などを受賞。
 また、07年から関西大学、10年からは大阪市立大学で非常勤講師として教鞭を執っている。
 受賞作の概要は次のとおり(①用途②規模③所在地④竣工年)。
 ▽ES house-01=①戸建て住宅(農家住宅)②RC・S・木造平屋建て164.57㎡③奈良県三宅町④05年。
 ▽同02=①同(事務所付)②RC・木造2階建て延べ185.97㎡③大阪市平野区④09年。

崩壊土砂は3県で1億立方㍍に!/台風12号豪雨災害で国交省が算定

 国土交通省水管理・国土保全局は、台風12号豪雨で、奈良、和歌山、三重の3県で発生した崩壊土砂量が約1億立方㍍に達していると算定した。
 土砂量の算出は、国土技術政策総合研究所と土木研究所の指導を受けて計算した。表層崩壊、深層崩壊、土石流など形態や規模が多様なため、個別の崩壊面積を航空写真判読などにより算出し、適用可能な崩壊面積から土砂量を導き出す経験式により割り出した。空中写真の撮影範囲は約48億平方㍍。緊急調査実施対象となる河道閉塞個所(土砂ダム)の生産土砂量については、現地で計測した。
 3県の崩壊個所は3077カ所で、崩壊面積は約950万平方㍍。土砂ダムの崩壊土砂量は、十津川村長殿が約680万立方㍍、同栗平が約1390万立方㍍、野迫川北股が約120万立方㍍、大塔町赤谷が約900万立方㍍、田辺市熊野が約410万立方㍍で合計約3500万立方㍍となる。

2011/10/12

美術館の常識を覆す光あふれる展示室/西沢立衛氏設計の「軽井沢千住博美術館」がオープン

 軽井沢の自然の中を歩くように、太陽の光が降り注ぎ、土地の記憶を残す傾斜した床--。およそ1500㎡の平屋の大空間を創出した新しい美術館「軽井沢千住博美術館」が10日にオープンした=写真。日本画家、千住博さんの作品を集めた美術館で、設計は、建築家の西沢立衛氏。作品への影響から自然光は避けるのが美術館の常道だが、千住氏の要望で、ガラスの壁とガラスに囲まれた中庭を使うことで、美術館の常識を覆す光あふれる展示空間が広がっている。
 千住氏は日刊建設通信新聞社の取材に「光の問題で紆余曲折はあったが、西沢さんという前衛的で実力のある建築家によって、思い描いた空間を200%も300%も実現できたと思っている。自然と人間とアートが共存する21世紀のモデルケースをつくりたい」と話す。
 西沢氏は「ようやく完成して、ほっとしている。千住さんの作品と軽井沢の環境、美しい自然を同時に感じられるような建築、人々が自然にくつろげるような空間を目指した」と話してくれた。
 入口を入ると緩やかに床が下っていき、大空間の先には大きな円形のガラスに囲まれた中庭が4つ設置され、中に地元の木々などが生い茂る。開館記念展では、千住氏の代表作「ウォーターフォール」を中心に展示している。
 所在地は長野県軽井沢町塩沢815。施工を清水建設・笹沢建設JVが担当した。運営は国際文化カレッジ。入場料は一般1200円。

ルポ 現場から・2000メートル級の山中で続く排水トンネル工事

2000メートル級の山岳地帯に現場がある
  石川県など4県にまたがり、2000m級の山々が連なる白山。標高約2000mの山岳地帯で、地すべり対策の排水トンネル工事が進められている。施工しているのは飛島建設。現場までのアクセスは徒歩のみ。資機材はヘリコプターで空輸している。施工技術が発達した現在でも、こんな現場がいまだに存在している。
 この工事は、国土交通省北陸地方整備局金沢河川国道事務所が発注した「甚之助谷地すべり対策排水トンネル工事」(石川県白山市)。現場は国立公園特別保護地区内にあり、希少な高山植物などが多く、通常とは比べものにならないほど厳しい自然環境保護対策が求めらていれる。
 天候に左右される資機材搬送、積雪のため年間4・5カ月しかない施工期間、急峻な施工現場、稀少植物の保護といった厳しい施工条件に加え、現場までの登下山、高所での簡素な宿舎生活など多くの苦労が伴う。
 こんなにシビアな工事をなぜ行っているのか。実はこのエリアには地滑りが多発しており、このような高所で大規模は地滑りが起きれば、発生した土石流は平野まで大きな被害を起こす恐れがあるからだ。そこで新たな排水トンネルをつくり、地すべりの原因となる水の流れを変えようとしている。
2時間の登山が必要な事務所で寝泊まりしている職員や作業員は、週末になると下山し、週初めに再び登山道を使って通勤する。飛島建設の片貝所長は「白山の貴重な自然環境に負荷を与えないのはもちろんだが、現場で働く人間にも負荷を与えたくない。山中でのけがはもちろん、狭い宿舎でのストレス対策も重要だ。厳しい施工条件だが、無事故・無災害でやり遂げたい」と意気込む。
資材を運ぶヘリコプター

妹島、アントン、塚本、藤本、近藤各氏が語る/ベネチア・ビエンナーレを振り返るディスカッション

 イタリア大使館とイタリア文化会館が、UIA関連イベントとしてシンポジウム「日本におけるヴェネツィア・ビエンナーレ:建築家 妹島和世セミナーとパネルディスカッション」を開いた。
 シンポジウムは、昨年イタリアで開かれた「第12回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展」を題材に、展覧会の総合ディレクターを務めた妹島氏が、展覧会場で撮影したスライドを使って主な成果や特徴を説明した。
 パネルディスカッションでは同展に出展した建築家、スペインのアントン・ガルシア・アブリル、塚本由晴、藤本壮介、近藤哲雄の4氏も発言した。
 それぞれの発言要旨は以下のとおり。
 塚本氏「ビエンナーレは何回行っても楽しい。毎回感動する。建築事務所としては予算がそれほど出ないので厳しいが、それでも、みんな一生懸命やる。どの国の建築家もあそこまで徹底してできるのは、ベネチアというまちの魅力なのだろうか。日本でこれだけのパワーを引き出すのは大変だ」
 近藤氏「ベネチアは、建築展、アート展、映画祭など1年でいろいろな催しがあって、さまざまな国の人たちが集まる。そして、あちこちで交流が起こって、まちの一体感が生まれている。人々の生き生きした感じが、柔らかな印象として残っている」
 アントン氏「ベネチアは展覧会をやるには『最悪』のところといえる。なぜなら『トンカチ』をするにも規制がありすぎる。しかし、美しさがすべてに勝るというか、美しさが不便さなどすべてを凌駕している。だから、ベネチアはたぐいまれな場所になるのだと思う。アートも建築も映画も、まちから影響を受ける」
 藤本氏「ベネチアは便利なまちではないので、逆にポジティブになれる。いろいろと考え始めるのだ。まちと人の結びつきが強い。人工のものと自然がうまく共存している。東京の路地とべネチアの路地はどこかで通じるものがあると思う。このまちに勝る建築を造ることはできない」
 妹島氏「建築家はあるところでは芸術家でなくてはならないと思う。ビエンナーレでは、環境のこと、子どものことなどを考えて提案しているものも見られた。わたしがテーマに入れたのは公共性。それはみんなが幸せになる空間といってもいい」

2011/10/11

「横濱はちみつプリン」/横浜建設業協会のはちみつが地産地消スイーツに

 横浜建設業協会の会員が育てた蜂密が、横浜発の地産地消スイーツとなって発売される。このスイーツ、「横濱はちみつプリン」として横浜の洋菓子会社ありあけ(藤木久三会長)が発売する。
 プリンは、神奈川県産の金太郎牛乳を使用。横浜市内で採取されたハニーフィールドネットワークのハチミツをかけ、なめらかな食感とともに牛乳のコクとハチミツの華やかな香りが楽しめる。
 ハチミツを提供している「HoneyFieldNetworkYOKOHAMA」の構成メンバーは、各地域でミツバチを活用した地域づくりなどに取り組んでおり、今後もハチミツを使った商品開発などを通して、地域における「つながり」の再構築に貢献していく。
 横浜市内では、都市における緑環境の普及啓発を目的とした北仲ブリック(横浜市中区)での養蜂活動を皮切りに、市内の建設業者、町内会や大学生などによる養蜂が広がった。現在では、大倉山、和田町、港南台、新横浜など8カ所で展開されている。
 東日本大震災を契機に、地域の基盤となる「つながり」を回復するため、各事業者が集まり、ネットワークを設立した。各養蜂事業者の取り組みを尊重しながら、緩やかなネットワークを形成し、小さな活動を重ね合わせることで相乗効果の発揮を目指している。
 参加者は、横浜建設業協会の会員であるキクシマ、昭和建設、土志田建設、川口工業、白井組、工藤建設、栗原工務店の7社と、HamaBoomBoom!プロジェクトの計8者。

最優秀は芝浦工大「TMT」/BIMイベント『Build Live Kobe』

 インターネット上でBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の腕を競い合う設計競技イベント『Build Live Kobe』(主催・IAI日本)の審査結果が発表され、参加16チームの中から芝浦工大大学院チーム「TMT」=写真=が最優秀賞に選ばれた。
 TMTは芝浦工大大学院生9人が中心のチームで、衣袋洋一教授の研究室に所属している。衣袋研究室は前回もチーム「ARI-30」として最優秀賞に選ばれ、連覇を達成した。このほか最終選考にはビム・アーキテクツ「PLAN-B」、前田建設「スカンクワークス」、東北工業大学「BIX」の3チームが進んでいた。
 審査委員の山梨知彦日建設計執行役員設計部門代表は「最優秀は人間とコンピューターが互いに重なって新しい形を産み出すクリエーティブなBIMを実現していた。BIXチームとの最終決戦となったが、発展の可能性を感じさせるTMTの提案が最終的に評価を得た」と説明した。
 ビルディングスマート賞にはスカンクワークス(チーム投票賞も受賞)、PLAN-B、ORANGE ARK(大林組)の3チームが選ばれ、BIMプランニング賞とIFCデータ連携賞はBIXが受賞した。

磯崎新氏が問題提起!建築学会が建築夜楽校「3・11以降の日本」

 建築文化週間の一環となる「建築夜楽校2011」が6日、東京都港区の建築会館で開かれた。「3・11以降の日本」を全体テーマに、国土・災害・情報(分析編)と題して、震災の状況を踏まえながら新しい都市、社会の構築方法を話し合った。主催は日本建築学会。
 建築家の磯崎新氏は、「日本の近代のすべてを象徴している」という、骨組みだけが残された宮城県南三陸町の防災センターの写真を背景に、近代の都市の弱さを指摘した。
 磯崎氏は「都市計画や建築計画など、計画そのものの意味が問われている」「これまで首都が論じられてこなかった」「復興に際しても、何が都市の生存につながるのかまったく読めない」などの問題を提起した。
 小野田泰明東北大教授は「目に見えないために発言しづらい価値を引き出せるのが建築家。建築家は可能性を見つけるのがうまい」と述べた。14日には第2夜が開かれる。テーマは新しい日本の設計コンセプト(提案編)だ。
 建築夜楽校の関連企画として「3・11以降の日本展」が同会館の建築博物館ギャラリーで開かれている=写真。震災後の日本を設計する」をコンセプトに、都市のリスクマネジメントの重要性などを踏まえて建築家の責任を訴えかけている。会期は16日まで。