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建設工事の動きDigital

建設専門紙が本気でつくった工事データベース

2011/08/31

大畠国交相が最後の会見「ダムは予断なく再検証を」と次期大臣に引継

 大畠章宏国土交通相は30日、次期国交大臣への重点引き継ぎ事項として、高速道路のあり方の検証と、「一切の予断なく再検証する」としたダム事業の見直し方針の継続、高速道路・鉄道・港湾・空港のネットワークによる整備、西日本を含めた防災対策強化などを挙げた。同日の閣議で内閣総辞職の閣議決定に署名したため、大畠国交相として最後の会見となった。
 大畠国交相は、「東日本大震災への対応や原子力事故の対応を、与野党が一つになってスピーディーに実施できる体制を構築してほしい」と、民主党の野田佳彦代表に要望した。
 次期国交相への引き継ぎ事項は、「現在、高速道路のあり方を再検証しており、おおむね詰まってきた。有識者の検討会の報告を踏まえて100年、200年継続できるものを打ち出してほしい」とした。
 前原誠司元国交相以来の課題となっているダム事業見直しは、馬淵澄夫前国交相が打ち出した「一切の予断なく再検証」という方針を継承して「有識者委員会や事業主体の結論を大事にしながら、最終的な結論を出してほしい」と引き継いだ。
 大震災を受けた社会インフラの整備は、「高速道路、鉄道、港湾、空港は、4分野が非常時にネットワークするよう政策を再検証して整備してほしい」と語った。さらに、「東日本だけでなく、西日本も含めて今後の地震に備えた対策強化も進めなければならない」と全国的な防災対策強化を求めた。

建築積算にもBIMの利点を/日積協が講演会/追加講演も決まる

盛況だった講演会
 日本建築積算協会は29日、東京都港区の同協会で講演会「BIMとコストマネジメントの将来を考える」をテーマに講演会を開いた=写真。建築分野へのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の利用が進む中、改めて特徴やメリットを専門家が説明するとともに、コストマネジメントと積算業務へのかかわりについて展望した。
 同協会理事の吉田倬郎工学院大教授は「BIMが建築界の重要なキーワードになっている。協会としても新しい展開に幅広く取り組んでいきたい」とあいさつした。
 BIMの動向について講演した足達嘉信IAI日本委員は、「BIMの国際標準となるIFCが、2011年内にもISO化される予定」とデータ連携が進むベースが整いつつあることを紹介した。
 BIMと建築生産について、木本健二芝浦工大教授は「BIMによって設計の決定ピークを前倒しすれば、設計変更がしやすく変更にかかるコストも低減できる」とフロントローディングの効果を説明した。
 定員をオーバーしたため、同講演会を再度、10月18日に東京都港区の機械振興会館で開く。受講料2000円。問い合わせは、同協会・電話03-3453-9591。

「麻布ガーデンズ」など4件を選定/港区が第1回景観街づくり賞

受賞作の「汐留ビルディング」
 東京都港区は、「第1回港区景観街づくり賞」の受賞作品として『麻布ガーデンズ』『汐留ビルディング』『TABLOID』『パークサイドシックス』の4件を選定、30日に表彰式を行った。
 同賞は、周辺地域への配慮やまちの魅力向上に功績のある優れた民間施設を顕彰することを目的に、今年度新たに創設した。
 2009年度に景観完了届を提出した建物の中から、「周辺の街並みとの調和」「建築物と植栽等のバランス」「地域特性を生かした、まちの魅力向上への貢献」「地域社会とのつながりを持ち、区民等への貢献が高いもの」「都市景観の創造に先導的な役割を果たしているもの」--の5項目を基準に選定した。
 受賞した4件の概要は次のとおり(①建築主②設計者③施設用途④所在地)。
 ▽麻布ガーデンズ=①ペンブロークリアルエステートジャパン、エルエルシー②坂倉建築研究所(建築基本設計)、大成建設(実施設計)、石勝エクステリア(造園、緑化)③共同住宅④元麻布3-7-10。
 ▽汐留ビルディング=①三菱UFJ信託銀行②三菱地所設計③事務所、店舗④海岸1-2-20。
 ▽TABLOID=①産業経済新聞社②鹿島③事務所、店舗等④海岸2-6-24。
 ▽パークサイドシックス=①東西アセット・マネジメント②坂倉建築研究所③共同住宅、店舗④赤坂9-5-12。

2011/08/30

若手建築家が復興提案/オリエアート・ギャラリーでデザイン展

 若手建築家による東日本大震災復興支援・建築デザイン展が、東京都港区のオリエアート・ギャラリーで開かれている。27日のギャラリートークでは、出展者の中村拓志氏が地形にあわせた建築提案を説明した=写真。
 中村氏は、リアス式と平野部では津波被害面積が異なることに着目し、2種類の建築を考えた。津波から逃げるところの少ない平野部は「まず逃げる場所を確保し、そこから街をつくる」とし、緊急時にだれでも逃げ込めるエバケーション(避難)タワーを徒歩20分圏内に一つ建てることを提案した。
 一方、リアス式の地域は「自然と闘うより、高台に住むことが選択肢の一つになるのではないか」と、造成せずに自然の地形に沿って建てる「登窯式住居」を発案した。高低差を生かした重力換気や地熱など、できるだけ電気を使わない建築となる。「空間をたくさんつくることができるため、夏と冬で居住域を変えればいい。人間も猫のような嗅覚を持って、快適な場所を探して生活すればいい」と話す。
 「若手建築家による東日本大震災復興支援・建築デザイン展」は、中村氏のほか、芦澤竜一、五十嵐淳、迫慶一郎、谷尻誠、鈴野浩一・禿真哉(トラフ建築設計事務所)、平田晃久、原田真宏・原田麻魚(マウントフジ)各氏による独自の復興提案を紹介している。コーディネーターは建築ジャーナリストの淵上正幸氏。会期は9月22日まで。日刊建設通信新聞社も後援している。

宇都宮大が3連覇/土木学会関東の第17回コンクリートカヌー大会

 土木学会関東支部は27日、埼玉県戸田市にある荒川調節池の彩湖で第17回コンクリートカヌー大会を開いた。参加した大学・高専部の14チーム、高校の部25チームの計39チームが熱戦を繰り広げ、宇都宮大学が3大会連続の総合優勝を飾った。また、東日本大震災で校舎が流されるなど大きな被害を受けた宮城県石巻工業高校からも2チームが参戦。ともに決勝まで勝ち進み、観客から惜しみない声援が送られた。
 同大会は、土木系の大学や高校の学生・生徒が自ら制作したコンクリートの2人乗りカヌーで約300mのレース競技をすることを通して、ものつくりの楽しさを味わってもらおうと毎年開かれている。
 競技レベルも年々向上。ことしは直線のレースだけでなく、決勝では300m地点をターンして折り返す方式が導入され、各校は船体に工夫を凝らすなどして知識と技術を競った。
 8隻による決勝では、宇都宮大学のチーム「PRAYER」が出足から後続を引き離し、ターンも制すなど他を圧倒しての3連覇を達成。決勝を戦った鈴木茂さん(4年生)と定山真輝さん(大学院1年生)は「みんなの声援が力になった。最後は気力だった」と口をそろえて喜びを語った。
 また、石巻工業高校は5位、8位と健闘。チームを率いた男澤和則教諭は「優勝できなくて悔しいが、あの状況からよく決勝まで残れた。6人中5人を占める3年生が引退するが部員が増えれば来年も参加したい」と力強く語った。
 総合の部の2位は横浜国大、3位は祐誠高校(福岡県)だった。高校生の部では祐誠高校が1位。参加チームの投票で決まる技術賞は宇都宮大学、特別賞は石巻工業高校が受賞した。

大阪の景観をリードする建物募集!大阪府らが「大阪まちなみ賞」9月末まで推薦受付

 大阪府と大阪市、大阪府建築士会などは「第31回大阪都市景観建築賞(大阪まちなみ賞)」の推薦作品を9月1日から同30日まで、事務局の大阪府建築士会で受け付ける。今回から新たに共催団体として大阪府建築士事務所協会と日本建築家協会(JIA)近畿支部も加わる。また、「建築士会長賞」を廃止し、新たに「まちなみ賞」を新設する。
 推薦対象は2006年8月から10年9月30日までに完成した、大阪府内でまちの景観をリードする建物や優れたまちなみ。
 大阪まちなみ賞は、周辺環境の景観向上に役立つ優れた建物・まちなみを顕彰するもの。10年度は、府知事賞に『認定こども園あけぼの学園』、大阪市長賞に『日本生命新南館』、大阪府建築士会長賞に『永元寺蕪坐離庵』などが選ばれている。 大阪まちなみ賞のHP

2011/08/29

「新東名」が12年初夏、一部開通へ/御殿場~三ヶ日の約162㌔/中日本高速

 日本の東西を結ぶ第二の大動脈として期待されている新東名(第二東名)高速道路が、12年初夏に一部開通する。中日本高速は道路の名前を「新東名高速道路」に決めた。初めて供用されるのは、御殿場ジャンクション(JCT)~三ヶ日JCTの約162㌔。これほど長い区間の開通は、1969年2月1日の東名高速道路静岡~岡崎間の132㌔以来、高速道路史上最長の開通区間だ。また、同区間内のインターチェンジ(IC)などの名称も決めた。
 この区間は、これまで13年3月31日の完成予定と公表していたが、新東名・現東名のダブルネットワーク化による災害などの緊急時の代替性の早期確保や地元の要望も踏まえ、できる限り早期の開通を目指して事業を推進。最後の課題となっていた地すべり対策の追加工事の内容が決定したことなどに伴い、12年初夏の開通を目指すことを決めた。
 金子社長は「地すべり追加対策工の完了には2-4カ月かかる。開通日時は工事の進捗などを踏まえ、改めて年内に発表する。できる限り、5月の大型連休に間に合わせたい」と述べた。
 同区間に設けるJCT、IC、サービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)の施設名称は次のとおりだ。
 〈IC、JCT〉▽御殿場JCT▽長泉沼津IC▽新富士IC▽新清水IC▽新清水JCT▽清水いはらIC▽清水JCT▽新静岡IC▽藤枝岡部IC▽島田金谷IC▽森掛川IC▽浜松浜北IC▽浜松いなさJCT▽浜松いなさIC▽三ヶ日JCT。
 〈休憩施設〉▽駿河湾沼津SA▽清水PA▽静岡SA▽藤枝PA▽掛川PA▽遠州森町PA▽浜松SA。

ソウルの大規模再開発「D-CubeCity」商業施設が森ビルのサポートでオープン

 韓国・ソウルの大規模複合再開発プロジェクト「D-CubeCity」が26日、商業施設をオープンした。この再開発は、森ビルグループの森ビル都市企画が総合コンサルタントとして参画、2006年から5年間にわたって企画・設計から運営・管理までをサポートした。オープン後の運営もコンサルティングを行う。
 施工は、事業者の大成産業(韓国)が担当しており、07年11月に着工、ことし6月に完成した。グランドオープンは9月末。森ビル都市企画では、東京・六本木の大規模複合施設「六本木ヒルズ」で培ったまちづくりのノウハウを活用することで海外でのコンサル事業の拡大を進めていく。
 ホテルや住居、文化機能が共存する複合カルチャー空間を目指し総事業費約1,000億円を投入したプロジェクトの一環として、今回オープンしたのは地下2階地上43階建てのオフィス、ホテルなどで構成する複合棟の地下2階から地上6階に配置した商業施設。各国の料理が楽しめるレストランや店舗が入居している。このほか9-26階にはオフィス、9-10階には延べ1万3,500㎡のミュージカルホール、27階以上にはホテルが入居し、年内の開業を予定している。
 敷地内には51階建ての住宅棟2棟も立地し、総延べ床面積は35万0,050㎡となる。
 建設地はソウル市九老区新道林洞360-45の敷地2万5,650㎡。地下鉄1、2号線が交わり、韓国一の乗り換え客数を誇る新林道駅に直結している。

世界初!養生時のコンクリデータを記録/「スマートセンサ型枠」を東大建築材料研らが開発

 東京大学建築材料研究室(野口貴文准教授)と建築資材の総合商社・児玉(本社・大阪市、児玉直樹社長)は、世界で初めて、「スマートセンサ型枠工法」を開発した。コンクリート表層部の温度、外気温の履歴を計測し、型枠の存置状態と期間を記録する各種センサーを一括して樹脂型枠に搭載した。養生期間の躯体表面の全データーが計測、記憶できる。
 各種センサーを搭載した樹脂型枠をレンタル方式で提供することで、スマートセンサー内部のデータを施工者だけでなく第三者機関が一元化して集中管理できるようになり、コンクリートの強度発現と経緯の情報を第三者が保有し、証明することができる。
 工法は、温度、姿勢、静電容量の各センサーとリーダー(無線読取機)、情報管理アプリケーションで構成し、コンクリートの品質、証明につなげる。
 すべての型枠に搭載したスマートセンサーによってコンクリートの履歴温度、打設開始時刻、凝結開始時刻、養生期間(型枠存置期間)、型枠の転用回数--など、型枠の情報を構造体表面の概ね全領域で漏らさず把握する。
 センサー内に自動記録した情報は、リーダー、情報管理アプリケーションによって現場でリアルタイムに呼び出すことができるほか、第三者機関が一元管理、保有し、時系列情報を任意の時点で証明書として発行することができる。
 また、型枠用合板(コンクリートパネル)は短期使用サイクルであるため、森林破壊を誘発する大きな要因の一つになっているが、スマートセンサーを搭載する型枠は、完全リサイクルが可能な樹脂であるため、熱帯雨林材伐採の抑制や生態系の保護につながる建設資材で、CO2の削減や炭素固定に貢献し、現場発生の産業廃棄物を抑える。

2011/08/26

東日本大震災による建機の被災は約2000台

東北地方の多くの建機が被災した
(写真と本文は関係ありません)
 東日本大震災による土木系建設機械の被災状況が、おおむね2000台程度に上ることがわかった。日本建設機械工業会によると、土木系建機の3割が東北にあり、このうち7割が被災したという。土木系建機は、比較的台数把握が確立されており、国内には約1万台存在する。このうち3割が被災すれば約2000台となる。
 コマツは、同社の油圧ショベルについて、「レンタルが二百数十台、一般ユーザーが400-500台、津波で流されるなどの被害を受けた」との調査を行っている。こちらのデータを使っても、同社の国内シェアは約3割のため、レンタルと一般の合計被災台数を3倍した2000台程度が被害にあったと見ることができる。
 正確な台数は集計できていないが、所有する建機を失った建設業者は少なくない。建機自体は高額な設備だ。建設業者の二重ローン問題も心配される。

イケア・ジャパンが立川基地跡地に新店舗建設/延べ8.5万㎡で12年秋着工へ

イケア船橋(ウィキペディアより)
 家具の販売などを手掛けるイケア・ジャパン(千葉県船橋市)は、東京都立川市の立川基地跡地に都内では初の店舗となる(仮称)IKEA立川を建設する。規模は延べ約8万5000㎡。約1400台の駐車場を確保する計画だ。工事予定期間は2012年11月から13年12月までの14カ月。14年4月のオープンを目指す。
 事業対象地は立川市緑町の立川基地跡地(A-4地区)の敷地約2万6000㎡で現況は更地。JR中央線立川駅の北約800m、多摩都市モノレール高松駅の南約400mの好立地にある。
 隣接地には災害医療センターや立川第二法務総合庁舎などのほか、住宅の整備が進むなど、多摩地域の交流拠点として業務、商業、サービスなどの都市機能の集積立地が進んでいる。都が01年にまとめた「東京の新しい都市づくりビジョン」でも多機能集約型都市構造の核都市に位置付けられ、核都市にふさわしい市街地形成を目的にした地区計画が定められている。
 事業計画によると、建設する店舗の規模はS造地下1階地上5階建て塔屋1層延べ約8万5000㎡。1-2階を店舗、3-5階部分に約1400台分の収容台数を備えた駐車場を配置する計画。
 また、照明に省エネルギー器具や調光設備を採用するほか、設備機器でも外気冷房を採用する。このほか、太陽光発電や地中熱利用など未利用エネルギーや再生可能エネルギーの導入検討を行うなど、積極的な環境対策を進めていく。

覆面記者座談会・政権交代から2年 熱気と期待どこへ

熱気に包まれていた池袋
A 通常国会の会期末というより民主党の代表選が話題になっているけど。
B 意地悪な見方をすれば、代表選で騒いでいるのは、マスコミと民主党だけじゃないの。建設業界、特に地方業界からは「国政にはもう興味ない。うんざり」という声が多い。大体、2年で3人の首相が誕生するというのでは、民主党ももう自民党の批判はできない。
C 確かに、民主党が2年前の総選挙で300議席を超えて大勝し、『本格的な政権交代』『55年体制の終えん』などと言われた熱気は今、まったくない。
B 2年前の総選挙は8月30日。その前日の29日夜、最後の遊説場所に当時の与党自民党が選んだのは東京・池袋東口。対する民主党は同じ池袋の西口。東口と西口の往復も大勢の人でままならない状態の取材だった。
D 今考えると、政権交代から3カ月程度続いたよね。建設業界にとっては、マニフェストの公共事業削減や八ッ場ダム建設中止もあったし、業界陳情ルールが変わったことが大きな話題になった。
A わずか2年で民主党への期待感、政権交代に対する熱気がなくなったのはなぜだろう。
B 建設業界にとっては、鳩山首相の「コンクリートから人へ」発言と、前原誠司元国交相の発言と行動が民主党そのものを体現してしまったと思う。前原発言を良い意味で捉えれば、▽人口減少▽少子高齢化▽財政赤字--という日本が抱える3大問題を取り上げたことだ。ただ沖縄だけでなく米国も巻き込んだ普天間米軍基地移転問題、前原外相時代の中国漁船への対応を含め民主党政権は口先だけで終わった。財政赤字については自民党時代よりも財政規律が崩れ、結局2年連続して国債発行額を増やし史上空前の規模の予算編成になってしまった。
D でも主張している内容は真っ当だし、個別の議員は非常によく勉強していると思うけど。
C 確かに法曹資格を持っていたり、野党時代から掘り下げたテーマを持っている議員がいるとは思う。でも民主党の会議の現状を見てほしい。質問内容も稚拙だし勉強をしている雰囲気がない。単に政府側の説明を聞いて容認しているに過ぎない。

2011/08/25

関東地方整備局営繕部がBIMを試行導入

 関東地方整備局の営繕部がBIMの試行導入を進めている。官庁施設の建設や維持管理について、複数の事業でBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を導入し、国が先導してノウハウを蓄積するのがねらいだ。
 新たな建設生産システムとして注目されるBIMは、CADなどをプラットフォームに、発注者や設計者、施工者など多様な関係者が企画から維持管理までの各段階で、電子化した建築情報を共有できる。関東地整では、新宿労働総合庁舎や海上保安庁の設計で試行的に導入している。
 同部では、設計段階で耐震性能や環境性能の確保についてさまざまにシミュレーションできるため、将来的には大きな効果が期待できるという。
 一方、設計で得た情報を次のステップにもっていくことが現在のBIMの課題でもある。設計、施工、管理と異なる段階での情報の受け渡しをスムーズにさせることが成否を握る。今回試行した2件の工事段階でもBIMを適用したい考えだ。

赤坂プリンスの旧李王家東京邸が公開される

 西武プロパティーズは、東京都千代田区の旧グランドプリンスホテル赤坂内にある旧李王家東京邸を一般公開した。旧李王家東京邸は6月に都の指定有形文化財に指定された。当日は約410人が訪れ、客室や食堂、1950年代からの周辺地区の写真パネルなどを熱心に見学した。
 同邸は、日本の皇族となった朝鮮王朝・李王家の東京本邸として1930年に竣工。紀尾井町1-2に立地し、規模はRC造地下1階地上2階建て塔屋2層延べ1770㎡。建築面積は843㎡。設計は宮内省内匠寮の課長・北村耕三や技師・鈴木鎮雄、権藤要吉らが担当し、清水組(現・清水建設)が施工した。55年からは赤坂プリンスホテルとして、1階部分をロビーや宴会場、2階部分を客室として使用していた。
 見学会では、1階の大客室、小客室、大食堂、2階の寝室、談話の間などに加え、邸内随所に組み込まれた三崎彌太郎が手掛けたステンドグラスなどを公開。訪れた都内在住の70代男性は、「竣工当時から周辺に住んでおり、外国人の訪問客が多かったことを思い出す。いつか中に入ってみたいと思っていたので夢がかなった」と話していた。
 歴史的価値が高いことから、2012年夏から4、5年をかけてほぼ同じ位置に移築再整備される。敷地内では、複数の施設のうち旧館以外の施設を解体、除去した上で、高さ約180mの複合棟と約100mの住宅棟を建設する計画が進んでいる。旧館を含めた総延べ床面積は、約22万7000㎡を見込んでいる。9月ごろから大成建設・西武建設JVの施工で内装撤去を始め、解体作業は12年5月ごろから本格化する見通しだ。新築工事の施工者は未定だが、12年夏にも着工し、15年度の竣工を目指す。

けんちくのチカラ・演ずるプロが語る・ピアニストの清塚信也さん


 リサイタルだけでなく多彩な演奏活動を積極的に続ける若手ピアニスト・清塚信也さんは、これまで国内外で数多くのホールに接してきた。テレビドラマ、映画音楽のほか、病院でのボランティア演奏、ピアノ講座とまさにマルチ・ピアニストだ。東日本大震災の復興支援チャリティーコンサートも前向きに取り組んでいる。5年前の人気テレビドラマ『のだめカンタービレ』では、指揮者・千秋が弾く曲の吹き替え演奏で脚光を浴びた。5歳からクラシックピアノの英才教育を受け、研ぎ澄まされた耳と五感でそれぞれのホールの違いを敏感にとらえる。インタビューではホールの役割や特徴をとても論理的、明快に分析してくれた。中でも東京都千代田区にある「紀尾井ホール」は、「自分の出している音が客観的に聞こえ、お客さんとの呼吸まで一体感を味わえる繊細なホール」だと高く評価する。

2011/08/24

「中に入ったら、寝転がってみてほしい」。伊東豊雄氏が瀬戸内のミュージアムで発言

伊東氏
 伊東豊雄氏は7月30日に愛媛県・大三島に誕生した「伊東豊雄建築ミュージアム」オープン式典のあいさつで「中に入ったら、寝転がってみてほしい。そうすれば建築の良さが良く分かる」と参列者に呼び掛けた。
 瀬戸内海を一望できる風光明美なロケーションを生かそうと「自然の中にいるような、気持ちの良さを味わえる空間をつくりたいと考えた」と振り返っている。セレモニーの後で館内に入った地元の小学生たちが、我先に寝そべった姿に、伊東氏は満面の笑顔を見せていた。
 翌日には地元小学生と、東日本大震災の被災地・岩手県釜石市の小学生を招いてのワークショップも行った。建築家個人にスポットを当てたミュージアムは、国内のみならず世界的にも「おそらく例がない」ユニークな試み。今後も国内外から建築家や建築を志す若者を集め、「建築文化の発信基地」にしたいという。

家田仁東大教授が大学の博士課程について論じる/土木学会の論説に投稿

家田教授
 家田仁東大教授が、土木学会の8月号論説で、日本の博士課程の位置づけが低いと論じている。教授は、「諸外国に比較してわが国の技術系実務界における「博士」は量的にも位置づけ上も決して重いものとはなっていない。しかし、今後の国際競争力の強化を考えると、状況を大幅に改善することが必要である。多くの技術分野の中でも土木分野では特に改善の余地が大きい。そのためには終身雇用時代の企業体質からの脱皮を図るとともに、大学においても博士課程教育のスコープの拡大が不可欠である。また、大学と産業界が協力して新時代の博士課程教育プログラムの開発を行うことも重要である」と述べている。
 家田教授は、リニア中央新幹線計画を審議する国土交通省交通政策審議会の中央新幹線小委員会の委員長も務めている。
 また今月の論説には、大林組副社長で土木本部長の金井誠氏も「今後は許されぬ『未曾有・想定外』という言い訳―土木技術者の反省と決意―」という寄稿をしている。
 一土木技術者として、反省と決意をつづっている。寄稿の中では、今回の震災直後に緊急・救援車両が現地入りできたのは、国が東北地方整備局へ権限を委譲したことでスピード感のある救援ルートを確保できたことを例に、政治と行政が最大限機能するとここまでできると断言する。
 両氏ともテーマは違いながら、非常に含蓄のある意見を書かれており、久しぶりに骨のある論説を目にした。

“ライトアップの映えるダム”を募集します/ダム協が9月30日まで

第10回「夏に遊べるダム」で選ばれた四万川ダム
 日本ダム協会が、『シリーズ ダム百選』として「ライトアップの映えるダム」をテーマに投票を募集している。ダム百選は、より多くの人たちにダムを身近に感じ、関心を持ってもらえるよう、さまざまな角度からダムを紹介するのが狙い。これまで、「もう一度行きたいダム」「美人顔ダム」「新緑の中のダム」などをテーマに実施し、今回で11回目を迎える。投票期間は9月30日までだ。
 投票対象ダムは、ダムマニアのバイブルともいわれる同協会の『ダム便覧』に掲載されているダム(日本国内のダム)で、今回は、夏の夜に幻想的に浮かび上がるダム堤体の姿などライトアップされたダムを投票してもらう。誰でも投票でき、同協会ホームページ(http://www.soc.nii.ac.jp/jdf/)内の投票フォームに名前(ハンドルネーム可)、電子メールアドレス、年齢、性別、ダム名、ダム所在地(都道府県名)などを記入し、送信する。
 投票結果はホームページなどに掲載し、投票者の中から抽選で1人に1957年11月発行の貴重な「小河内ダム切手シート」、5人に機関誌『月刊ダム日本』の最新号をプレゼントする。

2011/08/23

古代建築の謎を探る/歴史街道推進協らが法隆寺で夏休み体験見学会

 「その調子、その調子、そのまま刃を寝かし手前に引いて」――。歴史街道推進協議会(会長兼理事長・山口昌紀関西経済連合会副会長)は21日、奈良県斑鳩町、竹中工務店、竹中大工道具館との共催で、夏休み特別企画「古代建築の謎を探る~法隆寺にみる堂宮大工の技と心」を開いた。小・中学生を含む約90人が参加し、古代建築の仕上げに使われたヤリガンナがけの体験や法隆寺見学、折りたたみいすの製作などを楽しんだ。
 参加者は法隆寺iセンターに集合。竹中大工道具館技能員の宮大工・北村智則氏が、古代の大工道具の紹介や実演をした後、最後の宮大工棟梁と評された故西岡常市棟梁や唯一の内弟子だった小川三夫棟梁から聞いた寺院建築にかける心について熱心に耳を傾けた。北村氏が話す「道具は身体、手の延長。得心がいくまで研げ」(西岡棟梁)、「宮大工は事に仕える。生き方が仕事に出る。祈りを込めて建てること」(同)、「本堂の前に立って手を合わせたくなる建物を建てたい」(小川棟梁)などの口伝に感銘を受けていた。

8月23日から建築学会大会

大会前日の会見
 日本建築学会(和田章会長)は23-25日の3日間、東京都新宿区の早稲田大学早稲田キャンパスを主会場に2011年度日本建築学会大会を開く。「いま、私たちにできること」をメーンテーマに、記念シンポジウムや連続講演会などが開かれる。研究集会のうち、6つのパネルディスカッション・研究懇談会は一般に公開する。22日の会見で和田会長は「建築の専門家として、さまざまの専門領域でがんばらなければ震災は防げない」と、東日本大震災を踏まえてより研究を深化させる必要性を説いた。1万人の参加を目標にしている。
 今大会の学術講演会は、前回より387題少ない6229題、建築デザイン発表会は14題少ない158題を予定している。東日本大震災直後に応募が締め切られたため、今回の震災にかかわる発表は少ないが、総合研究協議会で復興に向けた提案など、震災に対するプログラムを用意した。
 23日午後に開かれる記念シンポジウムは「大災害を克服し、未来の建築・都市へ」をテーマに、建築家の伊東豊雄氏が基調講演するほか、幅広い分野から若手とベテランが参加して、大災害に耐えうる建築・都市・地域のビジョンを議論する。
 時松孝次大会委員長は「一般の方向けの研究集会をたくさん企画している。多くの人に参加してもらい、いまできることを考える機会にしたい」と述べ、スマートシティーや地球温暖化対策、ダイバーシティーなど、一般の人も関心があるテーマへの参加を呼び掛けた。
 連続講演会は「建築の可能性とこれから」をテーマに、2007-10年の建築学会賞受賞者が、1時間ずつ講演する。



川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムで内覧会

 『川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム』の報道機関向け内覧会が開かれた。ミュージアムは数多くの名作を生み出した藤子・F・不二雄氏の作品世界やメッセージを幅広い世代に伝える施設として整備。設計は日本設計、施工は大成建設が担当した。
 主催者あいさつの中で阿部孝夫川崎市長は「開館を迎えられるのも多くの関係者の協力、連携のおかげ。藤子先生の作品は世界中から愛されている。明るさ、希望をここから発信していきたい」と述べた。
 続いて、伊藤善章館長が「これからも作品を伝え続ける発信基地の役割を担いたい」、藤子・F・不二雄夫人の藤本正子氏が「黙々と漫画を書き続けてきたひとりの男の作品を見てほしい」とあいさつした。
 施設は主に▽展示室▽映像展示室▽カフェ・ショップ▽屋上広場――などで構成され、規模はRC・S造3階建て延べ約3700㎡。原画約5万点を収蔵・管理し、常時約150点を展示する。施設は藤子プロなどが整備し、6月に市に寄贈した。
 カフェでは、作品にちなんだメニューが用意されるとのこと。また、入り口には「ネズミの入館お断り」の案内看板が立つなど、遊び心いっぱいの施設になっている。
 施設運営は市の指定管理者制度により、藤子ミュージアムが担当する。1日当たりの最大収容人数は2000人。年間50万人の集客を目指す。
 建設地は川崎市多摩区長尾2-8-1の向ケ丘遊園跡地の一部。敷地面積は約5500㎡。

2011/08/22

オノ・ヨーコさんが復興へ向けて励まし/森美術館ら主催のイベントで

オノさんは「夢」の一文字を書き上げ、震災後の思いを伝えた
 森美術館(MAM)とアカデミーヒルズは、国際的なアーティストのオノ・ヨーコさんを講師に迎えて「オノ・ヨーコ 希望の路」を開いた。
 オノさんは「東日本大震災の復興は、世界に大きな影響を与えるだろう。復興できるという自信がなくてはいけないと思う。それで展覧会のタイトルを『希望の路』とした。わたしたち日本人は、広島、長崎(の原爆投下)の世界からの孤立から、反抗の精神を持って立ち上がった。突然変異という現象があるように、どんな苦境にあっても、この可能性に希望を見いだしたい。すき間を残しておくことが大切だ」と激励を送り、政治の責任などと言わずに自分自身が世の中を変えていくべきだと訴えた。

今度は圧送技能者も不足/年収は400万円割れ、ポンプ車も更新できず

生コン圧送にも技能者不足が
(写真と本文は関係ありません)
 鉄筋工、型枠工に引き続き、コンクリート圧送業にも、技能者不足、技術伝承の危機が訪れている。これは、全国コンクリート圧送事業団体連合会(佐藤勝彦会長)がまとめた「2010年度のコンクリート圧送事業経営実態アンケート調査結果報告書」で明らかになったもの。報告書を読み解くと、調査開始以来初めて圧送技能者の年間給与手当の平均額が400万円を割り込み、技能者数も20歳代の構成比率が16%と低下していることがわかった。さらにコンクリートポンプ車も10年以上経過した車両が半数以上で、車両の設備更新もままならない状況が浮き彫りになっている。
 同連合会加盟社の2010年度決算状況は、54・3%と半数以上が赤字、プラスマイナスゼロと回答した企業19・8%を加えると、4社に1社しか利益を出していないという厳しい経営状況にある。
 圧送技能者数も1社平均10・9人と減少傾向にあり、特に20代の割合が低い。また保有するコンクリートポンプ車の車歴についても、10年以上経過した車両が53・5%と半数以上を占めた。
 同連合会の経営委員会(中島一哉委員長)では、「受注価格適正化に向け業界自らが努力することが今後も重要だが、元請けのダンピング(過度な安値受注)が下請けの専門工事業者に与えるしわ寄せは大きく、元請団体などに対して、受注価格の適正化に向けた理解と協力を要望していきたい」という。

大阪府庁舎機能移転、咲洲を断念/橋下府知事、低耐震性で決断

学識者と意見交換する橋下知事
 咲洲庁舎(旧大阪WTCビル、大阪市住之江区)への府庁機能全面移転を目指してきた大阪府の橋下徹知事は18日、全面移転を断念する考えを示した。庁内で開いた河田惠昭関大教授ら学識経験者との意見交換会で、咲洲庁舎の耐震性能の低さを指摘されたため。
 橋下知事は「これから調査するが、庁舎としての使用も難しいとなれば、咲洲庁舎からの全面撤退も考えなければならない」と述べている。
 咲洲庁舎は、大阪市が1995年に第三セクター方式で建設した大阪ワールドトレードセンタービルディングを、庁舎移転を目指す大阪府が、2010年度に購入したもの。11年3月から9部局が同ビルに移転し、6月から「咲洲庁舎」に名称を変更している。
 学識者との意見交換では、大手前の本庁舎と咲洲庁舎を同等の防災拠点として使用する「防災拠点のデュアル化」を考えていた橋下知事に対し、河田教授が「咲洲庁舎は地盤や電源供給などのライフラインについても多くの問題を抱えている」と指摘した。
 福和伸夫名大大学院教授は、上町断層地震や東南海・南海地震によって咲洲庁舎で大変な被害が想定されることを説明。「大手前本庁舎が損壊するときは咲洲庁舎も損壊している。咲洲庁舎のぜい弱性を解消するには中間階に免震装置を設置するか、高さを低くするしかない」と述べた。
 また福和教授は、超高層ビルは庁舎に適していないとし、「免震整備も減築も応急処置に過ぎず、恒久的な使用はお勧めできない」との考えを示した。

2011/08/19

川向正人東京理科大教授らが99回目の「建築家フォーラム」

 建築家の相互交流を目的にした建築家フォーラム(代表幹事・古谷誠章早大教授)の99回目が開かれた。今回のテーマは、運営幹事らによる「幹・監事が語るmy design・my concept・my topics」。
 フォーラムには、代表幹事の古谷教授のほか、幹事の川向正人東京理科大教授、国広ジョージ国士舘大教授、監事(監査役)の可児才介元大成建設設計本部長(現可児アトリエ主宰)、森暢郎山下設計会長が参加。今川憲英東京電機大教授がモデレーターを務めた。
 古谷氏は、大震災の仮設住宅について「既存のコミュニティーの中に冗長性があれば、仮設住宅はいらないと思った。われわれの生活の中にそういうシステムをつくっておくべきではないか」という。
 川向氏は、研究室の学生といっしょに5年間続けてきた「東京理科大学・小布施町まちづくり研究所」の活動に触れて、「修景という景観の修復は医療で言うとケアに当たる。日々の手入れを続けてきたといえる」と話した。
 国広氏は「建築的政治活動」という言葉を持ち出して「建築を学んだ人がもっと政治家になってもらいたい。建築の枠の中に閉じこもらず、幅広い活動を通して建築の枠を超えた時、一般市民にも理解をしてもらえるのではないか」と指摘した。
 可児氏は「ほかの設計事務所とチームを組んで仕事をしたのはおもしろかった。うまくいくと感動を覚えるものだ。ゼネコンであっても設計と施工の役割分担をはっきりとするべきだと言い続けてきた」と述べた。
 森氏は「これからは官公庁の仕事は変わってくるのではないか。古谷さんのように地道なワークショップを続けることで合意形成をすることが重要になってくる。わたし自身は発注者、市民などとの合意形成がとても大事であることを身をもって体験させてもらった。建築とはそういうものだと思う」と強調した。
 構造家である今川氏は開発中の新しい構造体を紹介。「建築を物理から化学へ」と発想の転換を訴えた。新構造体は、二酸化ケイ砂(SiO2)にCO2を注入してできる「炭化ケイ砂(SiC)」。化学反応でできた「自立する砂」の構造体は、CO2を使うことで地球環境にも貢献している。建築への姿勢として「実現するまで後ろを見ない」とも話し、そのために見合うコストを施主に理解してもらう重要性も指摘した。

大阪にカジノを含めた統合型リゾートを/大阪府が基本コンセプト素案提示

 大阪にカジノを含んだ統合型リゾート(IR)を建設しようという、大阪エンターテイメント都市構想推進検討会(座長・橋爪紳也大阪府大教授)の6回目会合が18日に開かれた。今回は、事務局である大阪府の府民文化部都市魅力創造局が「大阪におけるIR立地に向けて」と題した基本コンセプトの素案を提示し、内容について議論した。
 今回の素案は、▽滞在型観光スタイルの確立と関西全体への経済効果の波及▽世界最高水準のエンターテインメント機能の創出▽東アジアにおける情報創造発信拠点となるMICE(研修・視察・会議・展示会)機能の創出--を目標に設定している。
 秋にはシンポジウムを開き、素案を府民に広く公表して、年度末に基本コンセプト案を策定する。
 一方、民主、自民ら超党派でつくる国際観光産業振興議員連盟では、7月末に特別立法の大綱案をもとにした概要案を作成している。
 概要案は、民間事業者が建設・運営主体となって、世界最高水準のエンターテインメント機能やMICE機能、カジノなどを整備して、非日常空間を演出する施設にするというものだ。
 立地場所は府が国内外事業者を対象に実施したアンケートをもとに、都心から主要交通機関で30分圏内、国際空港から60分圏内とし、敷地面積8-30haが必要だとした。
 IR設置、当該地方公共団体が国に計画を申請し、申請が認められれば地方公共団体が事業者を公募型プロポーザルで選び、事業者の資金とノウハウで建設・運営するとしている。

2011/08/18

旧精華小校舎の保存を訴え/JIA近畿が近畿産業考古学会らと共同要望


 日本建築家協会近畿支部(JIA近畿、小島孜支部長)は11日、旧精華小学校(大阪市中央区)の保存を求める要望書を、精華小校舎愛好会(分田よしこ代表)、近畿産業考古学会と共同で大阪市教育委員会事務局に提出した。
 小島支部長は「建築家として知恵を絞るので、アイデアが必要であれば申しつけてほしい」と進言した。また、近畿産業考古学会を代表して出席した庄谷邦幸大阪市公文書館館長は「大阪市の誇りである学校を決してなくしてはいけない」と訴えた。
 要望書を受け取った教育委員会事務局総務部施設整備課の職員は「貴重な歴史的建造物であることは十分認識しているが、市の財政状況は非常に厳しく、また開発が必要な地域でもあり、大変苦慮している」という平松邦夫市長の思いを伝えた。
 JIA近畿ではこれまでも、保存再生部会(石井和浩会長)を中心に近代建築の保存活動を行っており、近年では大阪中央郵便局舎の保存を訴えている。
 旧精華小学校校舎(RC一部SRC造地下1階地上4階建て)は1929年に竣工。大阪ミナミの繁華街の中心地に立地する。
 三木楽器本店(大阪市中央区)などを手掛けた建築家・増田清の設計により約2年半の工期で建設され、昭和初期の華やかな大大阪時代を代表する建築の一つとされている。また、地域住民の寄付によって建設費約60万円の全額が賄われており、市民による市民のための教育施設としても評価が高い。
 精華小学校が95年に閉校してからは、生涯学習施設(精華学習ルーム)や演劇場(精華小劇場)として活用してきたが、財政難に苦しむ大阪市は2007年に「16年度までに売却する」との方針を決定。準備が整い次第、売却手続きに入るとしている。

築38年の老人ホームがモダン建築に/青木茂建築工房が下関の満珠荘をリファイン


 青木茂建築工房(青木茂主宰)が設計を手掛けている満珠荘大規模改修工事リファイニングプロジェクトの現場見学会が10日、山口県下関市の現地で開かれた。「すばらしいロケーションに位置し、室内からの眺望を最大限生かすことを目標とした」(青木氏)というように、ブレースなどで視界を遮らない耐震補強を進めている。
 満珠荘は、下関市が運営する老人ホーム。建設後38年を経過し、老朽化が進むとともに、アスベストの含有が判明し、2007年から休業している。新築ではなく、リファイニングを採用することでCO2や産業廃棄物などの排出低減にも貢献している。この日は、行政関係者や建設業者ら約50人が参加し、解体終了後の耐震補強の様子を見学した。
 耐震補強は、既存の雑壁を解体し、RC耐震壁を新・増設することで強度を確保した。長辺方向の補強は、南側は地下1階部分だけの補強にとどめ、眺望を確保し、建物の魅力を向上させている。施設プランでも、地下1階を壁の多い宿泊エリア、1階を比較的壁の少ない浴場エリア、最上階の2階を大空間ラウンジ・食堂とし、立面的にバランスの取れた構造を実現した。
 南側の開口部はガラス張りとする計画で、庇を設けることで日射の負荷を軽減するほか、北側屋上にトップライトと換気窓を設け、採光、自然通風による環境性能の向上を図る。このほか、メンテナンス性、ユニバーサルデザインに配慮し、外壁にも耐候性の高い材料を使用するなど長寿命化を図る。また、経年劣化など約600カ所に及ぶ補修工事は、すべて記録して建物の履歴として後世の改修工事などに生かす。
 青木氏は、「古い建物は躯体は大丈夫でも機能が古くなり、解体されてしまう。使える機能を持たせることで建物は再生できる」と述べ、リファイニングによるストック再生に意欲を見せた。
 満珠荘の規模は、RC・S造地下1階地上2階建て延べ1831㎡。建築設計は青木茂建築工房、構造設計は金箱構造設計事務所、設備設計はEE設計が担当した。施工は長野工務店・永山建設JV(建築)、山陽電工(電気)、空調サービス(空調)、新ホーム・日環特殊JV(給排水)が担当、12月の完成を目指している。建設地は下関市みもすそ川町3-75。

南三陸町に地域産木材使った仮設住宅/地元企業、針生承一氏らが協力


 宮城県南三陸町に地域産木材を使用した応急仮設住宅が完成した=写真。県森林組合連合会と針生承一建築研究所、日本建築家協会(JIA)東北支部宮城地域会復興委員会が設計監修、施工は地元の山大と同連合会が担当した。
 この産直型の仮設住宅は、発災後から登米町森林組合と県東部地方振興事務所登米地域事務所で検討を重ね、4月に設計を完了。関係者間の協議を経て、南三陸町が発注し、6月から造成工事、7月上旬から建築工事に着手していた。
 場所は同町歌津管ノ浜142-1で、仮設住宅15戸と集会所1棟が完成した。
 被災者が憩える住空間の提供を念頭に、南三陸町と登米市の山林の素材を加工したスギ柱材や板材などを使用することで、木材が持つやすらぎを生かしたつくりとなっている。

2011/08/12

ブログ夏季休暇のお知らせ

 いつもブログをご覧頂き、ありがとうございます。新聞社の夏季休暇に伴い、ブログの更新も17日までお休みします。
 18日から再開致しますので、今後ともよろしくお願いします。
(電子メディア局)

被災自治体の首長は考える/仙台市長・奥山恵美子氏

奥山 仙台市長
 最大震度6強を記録した仙台市。その地震規模に比べ、市街地での建物被害が比較的少なかったことは、先の宮城県沖地震を教訓に進めてきた震災対策の成果といえる。一方で沿岸部に甚大な被害をもたらした津波に対する備えや丘陵地区における宅地の地震対策、またライフラインやエネルギーの持続的確保などといった面での都市のぜい弱性も改めて浮き彫りとなった。「新次元の防災・環境都市」をコンセプトとした震災復興ビジョン(震災復興計画素案)をいち早くまとめ、被災者の生活再建を最優先に取り組むとともに、東北唯一の政令指定都市として国内外の耳目を集めるイベントの誘致・開催など東北全体の復興の旗振り役を務める奥山恵美子市長に、現状と今後の展望を聞いた。

--発災からこれまでを振り返って 「私たちは1978年の宮城県沖地震を教訓としながら、その再来に備えて防災計画をつくり、さまざまな訓練もしてきた。ところが今回の震災は、私たちが考えていた地震の規模を何倍も上回るものだった。今、津波を止めた(盛土構造の)仙台東部道路に立って海岸までのまったく何もない状況を見ると、かつてここにあったすべての暮らしが流されてなくなったのだという、日常とのつながりの中にこの土地があるとは思えないとても隔絶したものを感じる。改めて津波に対する計画の不備は否めないと思っている」

--現状について 「震災直後は人命救助が最優先となるが、その次の段階として生活基盤を失われた方の住まいの確保がある。一時は10万人の避難者がいたが、応急仮設住宅として民間賃貸住宅の活用が認められたこともあって7月末にはすべての避難所を解消できた」
 「がれきは恐ろしいほどの量だが、そもそも政令市として自前で清掃工場を稼働し、職員にも廃棄物処理のノウハウがあるのだから、市内の建設業や解体業の方々と協力して市独自で取り組んできた。6月末には公道上のがれき除去が終わり、被害が大きかった宮城野区と若林区の宅地内がれきも7月末に撤去が完了した。農地内のがれき撤去をいま一生懸命やっている。現在までに重量ベースで約50%まで処理は進んできた。今年度末にはおおむね処理が終わる見込みだ」

--一気に処理のスピードがアップしたようだが 「がれきを一度運んで山積みにし、それをまた運んだ先で分別処理するということは二度手間になる。われわれは1次処理せず、市内の被災地から直接2次処理・分別リサイクルに入る方式を採用している。最初から分別すると(がれき撤去の)スピードが上がらないので仙台市の処理水準が低いという時期が何カ月か続いたが、最初のうちは遅くても全体のシステムをいかに構築できるかが肝心なことだ。また早い時期から分別することで廃棄物の腐敗進行といった衛生上の問題も一定程度防ぐことができた」
 「市にごみ処理に関する知見を持った職員がいることに加えて、今回各地からさまざまな分野の方々が支援に来て頂いた。その中に神戸市で阪神・淡路大震災の時に震災ごみの処理を担当した人が当時の記録を持って発災直後から来てくれた。安全に作業するための前提条件としてどんなチェックが必要か、経験した人でなければ分からないことを教えてもらった。そういうノウハウ面での支援はとてもありがたく、記録をとることは後世のために大事なことだと改めて思っている」

--今後の防災対策は 「前回の宮城県沖地震では多くの建物が倒壊したり傾いたりしたが、今回は構造自体が崩れたという建物は老朽化したものを除いてほとんどなかった。その意味で宮城県沖地震をきっかけに制定された新耐震基準は見事に目的を果たしたと言っていい。市内の高層マンションでは免震や制振のシステムが機能し、室内ではこけし一つ落ちなかったところもあると聞いている。ただし、電気や水道といったライフラインが途絶してしまうと高層マンションには住めなくなる。特に水は絶対に備蓄しておくことが必要だということを再認識させられた」
 「建物被害で目立ったのは大規模施設の天井崩落。公共施設ではホール、民間施設は映画館やショッピングセンターなどで被害が発生した。天井は構造でも内装でもないという微妙な位置付けのようだが、きちんとした安全基準ができればいいと思っている」

市内の丘陵地区では2000件もの地滑りが発生。
大畠国交相も視察した
--復旧・復興に向けた取り組みについて 「被災者の方々の生活再建が圧倒的な第1優先順位であり、今後の安全確保の観点から内陸部への集団移転も含めて集落再生のめどをこの2、3年の間でしっかりとつけていきたい」
 「ただ今回の震災があったからといって都市像として仙台市が目指していくべきものに変わりはない。いま交流人口を高めようと国際会議の誘致攻勢をかけている。8月1日から3日間、震災後では初の政府系国際会議となるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の防災ワークショップが市内で開かれたほか、12月に東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3財務相会議の次官級協議、来年4月には世界旅行ツーリズム協議会の総会開催も決定している」
 「こういう状況だからこそ、国際会議を誘致して被災各地に世界の注目を集め、風評によらない正確な状況を見てもらい、復興を加速させていくことが仙台市の役割だと考えている。仙台の都市力というものがあるのだとすれば、いままでいろいろなことをやって経験を積んできたこと。それをパワーアップすることによってこれからの復旧・復興の加速度がさらに出てくるのではないかと思っている」

鉄道工事の技術紹介コーナーを技研に開設/東急建設

技術研究所内の鉄道工事技術コーナー
 東急建設が鉄道関連工事に特化した技術紹介コーナーを開設した。同社が持つ相模原市内の技術研究所に設置したもので、ゼネコンの鉄道工事技術に触れることができる。展示は、技術の内容を紹介するパネル、技術年表、技術紹介ビデオなども見ることができる。一般の人にも見てほしいということだ。
 このコーナー、東急建設の飯塚恒生社長の発案で半年かけてつくられた。約100㎡のスペースに、パネル40枚などが展示されている。
 土木総本部土木技術部土木構造・材料グループの伊藤正憲グループリーダーは「今後も新しい技術を随時盛り込みたい」と話している。同社は土木売り上げの半分以上を鉄道関連工事が占めている。

覆面記者座談会 8月12日・建築基準 完全性能規定化は非現実的?

A 建築基準法などの建築法体系全体が目指すべき基本的方向を整理するため国土交通省が設置した「建築法体系勉強会」の具体的検討テーマが見えてきたね。建築基準の完全性能化も上がっている。
B 実務からみると完全性能規定化は現実的ではないのでは。阪神・淡路大震災を踏まえた基準法改正でも性能規定は話題になったが、結局、仕様規定も残った。
C あのときは、性能規定に対応できる構造設計者はほんの一握りしかいなかったからね。完全な性能規定になったら構造設計者が不足してしまう。
D 学校で性能設計を教えられる教師がほとんどいないのだから、仕方ないよ。これは現在も変わってないから、仮に完全性能規定化になったら教育段階まで影響が出てくるし、設計できる実務者の数がそろうまでには時間も社会的コストもかかることになる。
A 構造だけでなく、設備もある。設備は他の関係法制度も多いから一層難しい。
B 設計者資格のあり方も絡んでくる。オールマイティーでいいのかという議論は避けては通れないと思う。
D 安全・安心に「ヒト」からアプローチするのか、「モノ」からアプローチするかだろう。「ヒト」つまり資格のレベル、質をものすごく高く設定すれば、性能規定化しても裁量に任せられるし、確認検査も要らない。そのためにはオールマイティーはあり得ないから専門分化せざるを得ない。逆に、「モノ」つまり建物からアプローチするなら、社会的コストは掛かるけど性能を証明する三重、四重のチェックをすればいい。それでいいなら、現在の建築士制度でもいいのではないのかな。
B 構造計算書偽造事件で建築士制度も議論された。その中で彼らを計画、構造、環境に整理し直すには、もう一度試験をしないとだめだろうという方向も出たけど、資格者の猛反発があったよね。とすると、いまより複雑な検査システムの選択となるのかな。
C そもそも建築法体系勉強会は、馬淵澄夫前国土交通相の肝いりで設置され、スケジュールはおおむね3年を見ている。来年度以降、法制度に踏み込んだ議論を進めるため、方向性を明確にする4つの論点を抽出した。来年度以降の検討体制は不明だけど、今の勉強会を一度解散して新体制を構築するとか、勉強会に下部組織を設けるとか、いずれにせよ実務レベルでの検討に入ることは間違いないようだ。
E 戦後つぎはぎして改正してきた建築基準法が問題だらけで、その最たるものが2000年の法改正の性能規定の導入だった。建築主事も設計事務所も、つまり建築確認の現場が使いこなせないシステムを、未成熟なまま導入した。そこには、観念的な施策のあり方が根本にあった。2000年の大改正は、そのほかにも新技術の大臣認定を廃止して、柔軟に対応し新技術実施への道を開くべきところを逆に閉ざしてしまった。最低基準の規制法なのだから、もっと現実を直視した法律にしなければならない。それなのに、今回の審議も学識者だけで机上の議論をし、明快な性能規定という訳の分からない観念を持ちだしている。もっと実務的な議論をしなければ、基準法は建築確認の現場を混乱させる代物になってしまう。
D 最後のところは政治判断になるのでは。でも、民主も自公も、建築とか設計について基本的センスが欠落しているとしか思えない先生が圧倒的に多い気がする。

2011/08/11

丹青社の新入社員研修/真剣勝負の「ものづくり」学ぶ

実際のものをつくるユニークな新人研修
 丹青社のユニークな新入社員教育が話題になっている。新入社員は、外部デザイナーとコラボレーションして、テーマに合わせた什器をデザイン・企画、3カ月間で実物を完成させる。社内外の協力者と関係をつくり、ものを最後まで作り上げるこの研修法は、実際の職場に配属後も大きな力ととなっている。
 新入社員は、営業、デザイン、制作という職種に関係なく、配属が決まるまでの3カ月間、什器づくりに打ち込む。今回で7年目を数え、ことしは新入社員9人が、外部デザイナー4人、社内デザイナー1人とチームを組み、シェルフ(棚)づくりに臨んだ。
 この研修でつくったシェルフは誰でも見ることができる。9月26日から10月5日まで、東京都港区のアクシスギャラリーで、「人づくりプロジェクトSHELF展」として展示されている。2009年分から3年間の研修内容を、プロセスも含めて紹介する。開場時間は午前11時から午後7時。無料。問い合わせは、丹青社経営企画室企画広報課まで。電話03-3836-7296。

とび技能検定実技に146人が挑戦/近畿躯体がことしも実施

実技試験の模様
 近畿建設躯体工業協同組合(山本正憲理事長)は3日間かけて、兵庫県三田市の三田建設技能研修センター実習場で「2011年度とび技能検定実技試験」を行った。今回の受検者数は1級144人、2級2人の計146人。初日の9日には猛暑の中、58人が合格を目指して課題に取り組んだ=写真。
 この試験は、大阪府職業能力開発協会からの委嘱により同組合が実施している。受検者90分以内に鋼管パイプで小屋を組み立てる。時間内に仕上げること以外にも、作業手順や過程、安全帯使用も大きなポイントだ。実技の合格率は例年60-70%程度だという。
 資格の活用について組合では、「経営事項審査や総合評価方式の入札で技能士資格が評価されるようになるなど、ようやく資格取得者が所属する企業へのメリットが出てくるようになった。次の段階として、これを職人の待遇に反映できるように組合として取り組みたい」という。
 検定試験は山岡検定委員長(山岡建設)以下、首席検定委員を小堀久志(北梅組)、委員を田井浩(田中建設工業)、田中忠幸(北梅組)、児玉拓弥(北口工務店)、吉村秀幸(カウラ)、吉原義晴(田中建設工業)、日野進司(ハシモトアキ)、田中潤二(山岡建設)、中野明男(山岡建設)、手銭基滋(カウラ)、北浦康之助(北梅組)の各氏が務めた。合格発表は9月30日だ。

7作品が一次通過/第23回すまいる愛知住宅賞

公開審査の様子
 愛知ゆとりある住まい推進協議会(会長・勢力常史愛知県建築住宅センター理事長)が、第23回「すまいる愛知住宅賞」の候補作品7点(者)を選出した。10月上旬に入賞決定作品を発表する。
 この賞は2006年4月以降に愛知県内で竣工した居住中の1戸建て、長屋建て、共同建ての住宅を対象に、生活にゆとりや安らぎを与える工夫を表彰する。今回は74の応募作品があった。
 審査委員長の古谷誠章早大教授(ナスカ一級建築士事務所代表取締役)は「審査を引き受ける折に公開を条件にしたが、回を経るごとに顕著にレベルアップしている。入選を目指す人にも、他作品を研究する好機として審査の場を活用してほしい」と話す。
 古谷委員長以外の審査委員は、笠嶋泰大同大教授、松原小夜子椙山女学園大教授、谷村留都アール・アンド・エス設計工房副所長、佐藤東亜男愛知建築士会長、鈴木慶智日本建築家協会東海支部愛知地域会副会長、朝岡市郎愛知県建築士事務所協会長の6氏。

オートデスクがBIM特設ステージ/UIA東京大会に合わせた9月27日に実施

 オートデスクは、国際建築家連合(UIA)東京大会に合わせ、9月27日に東京・丸の内でBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の特設ステージを設ける。BIM提唱者で同社副社長のフィリップ・バーンスタイン氏が、2050年の建築をテーマに講演する。
 当日は、BIMがどのように生まれ、発展してきたかをバーンスタイン氏の解説により振り返るとともに、建築生産プロセスの行方や将来の建築家のあり方についても考察する。また、同社AEC事業部の近藤伸一氏が「誤解されるBIM」と題し、BIM導入による成功への道筋を解説する。
 入場は無料。会場は東京都千代田区の「丸の内 MY PLAZA ホール」。時間は午後1時30分から。同社は大会の特別協賛企業を務めている。問い合わせは同社イベント事務局・電話03-4500-9053。

2011/08/10

海外展開を本格検討へ/橋建協が国内市場縮小受け方針転換

国内の新設鋼橋市場は3分の1にまで落ち込んでいる
 日本橋梁建設協会(会長・昼間祐治IHI副社長)は、海外事業へのシフトを表明した。国内の新設鋼橋市場が完全に縮小路線に入ったことを受けて、国内の優れた技術力を維持するには海外展開が不可欠だと判断した。これまで橋建協の会員企業が独自に海外工事を受注することはあったが、協会として海外展開の重要性を打ち出した。
 昼間会長は「世界でも最先端の技術力を持つ日本企業の技術は、もう国内市場だけでは維持できない」とコメント、今後は海外市場で、韓国、中国などの競争相手に対し、協会として海外事業に応札する日本連合の枠組みをつくる。橋建協が海外事務所を設置して最新情報を提供する仕組みも検討する。
 鋼橋市場は、道路・鉄道合わせ1995年度のピーク時90万tから10年度は30万tと3分の1まで縮小している。

仮設事務所・店舗の設計・監理者エントリー開始/中小機構が数百地区分を委託へ

事務所や店舗の仮設物件への要望は多い
(写真と本文は関係ありません)
 岩手、宮城、福島の震災被害にあった仮設事務所・店舗などの発注をまとめている中小企業基盤整備機構は、仮設物件の設計・監理を行う候補者募集を始めた。機構には現在、40を超える市町村から約310地区の整備要望が寄せられており、約80地区では自治体と機構が基本契約を締結済み。整備案件地区が内定した段階で候補者から見積もりを徴集して、地区ごとに受託者を決める。工事施工者は設計成果をもとに、一般競争入札で決める。
 協力候補者の応募資格は、プレハブ建築の仮設施設を設計・監理できる技術力・経営能力があり、案件候補地区(岩手、宮城、福島)が所在する県内に本支店・営業所を有することなど。
 応募書類は17日まで、新事業支援部インキュベーション施設管理課仮設施設担当で受け付ける。業務の費用や期間、同時実施が可能な地区数などを総合的に評価し、19日までに審査結果を通知する。資格の有効期間は2012年3月末まで。
 選定された受託者は現地調査や地元調整、敷地測量、地盤調査、設計、工事費積算、工事監理など一連の業務を担当する。事務所、販売店舗、倉庫といった仮設施設の標準仕様は一区画が50-200㎡で、給排水設備や照明、換気扇、コンセント、分電盤を備える。
 同機構が建設する仮設施設は、福島県のいわき市久之浜地区仮設店舗・事務所(愛称:浜風商店街)、南相馬市鹿島区寺内仮設施設、宮城県のしおがま・みなと復興市場(塩竈市海岸通仮設施設)の3施設がきょう10日に竣工する。

地方自治体に基幹技能者への加点措置が拡大中/大阪府が2件で試行、長崎、東京でも動き

 地方自治体で、基幹技能者と一級技能士の公共工事への活用が本格化してきた。大阪府が2件の建築工事に、総合評価制度で基幹技能者の配置に加点措置を試行採用したほか、長崎県はすでに本格的に実施している。また昨年末には東京都が公園整備で基幹技能者の活用を試行しており、今後全国の自治体で同様の加点を行う可能性が広がってきた。
 今回大阪府が基幹技能者の配置を求めるのは「府立高等職業技術専門校北部校(仮称)新築工事」と「府立視覚支援学校改築工事」の一般競争入札2件。
 基幹技能者など専門工事業有資格者の配置評価を盛り込んだ総合評価方式を初めて採用した。品質確保、現場従事技能者の育成、技能者を確保する企業の育成を図っるのがねらいだ。
 評価対象となったのは、基幹技能者が「とび・土工」「型枠」「コンクリート圧送」「鉄筋」「圧接」「左官」「塗装」「外壁仕上」「サッシュ」「防水」の10職種。
 一級技能士は「とび・土工」「建築大工」「畳」「左官」「塗装」「建具」「サッシュ」「防水(シーリング)」「同(アスファルト)」「鉄筋」「型枠」の10職種。
 加算点の加算方式は、基幹技能者が各職種1人までとし、1人当たり0・2点。一級技能士は1人当たり0・1点を付与し、最大1点を加算する。ただし特記仕様書に明示されている場合は、加点対象にならない。また残念ながら、今年度の発注案件のうち今回の2件以外に試行は予定していない。
 同部担当者は「試行の結果をもって今後の運用を検討する」という。「現代の名工」などといった対象の拡大についても未定。

2011/08/09

長野の中間駅は高森町・飯田市エリアに決定/JR東海・リニア中央新幹線

改修の進む山梨実験線区間
 JR東海が、リニア中央新幹線の長野県内中間駅の候補地を、高森町や飯田市北部を中心とする「天竜川右岸平地部」に決めた。これで東京~名古屋全区間の大まかなルートや駅位置が出そろった。今後は2014年度の着工に向け、11年内にも環境影響評価に着手し、詳細計画を固めていくことになる。
 5日に同社が発表した長野県分の計画段階環境配慮書によると、「早川~南アルプス~伊那山地西端」区間は、南アルプスの大部分をトンネルで通過。静岡と長野の県境に位置する3000m級の稜線の中で、土被りを小さくできる荒川岳と塩見岳の間を通る。小渋川は明かりにより、最短距離でまたぐ。
 「伊那山地西端~中央アルプス南縁西部」区間は直線に近いルートをとり、天竜川周辺は明かり、中央アルプスは主にトンネルで通過する。長野と岐阜の県境においては、脆弱(ぜいじゃく)地質や断層の影響を回避するため、恵那山の北方を走る。
 中間駅の位置選定に当たっては、地元からの要望を踏まえ、JR飯田駅周辺も検討に加えた。天竜川右岸平地部と比較した結果、路線延長が約3㌔延びて土木・設備工事が増えるほか、トンネル施工の難易度が高い河岸段丘部の通過延長が長くなることにより、工事費は約500-600億円膨らむことが分かった。
 環境への影響なども含め、中間駅の概略位置は天竜川右岸平地部に決定。具体的な位置確定の際には、道路アクセスの利便性を確保するため、中央道座光寺パーキングエリアにおけるスマートインターチェンジ整備などについて、関係機関と調整を進めていく。
 ターミナル駅を建設する東京、名古屋の大都市部は、大深度地下を利用する。起点駅は、東海道新幹線品川駅付近の地下に南北方向に設置。当面の終点駅は将来の大阪延伸を考慮し、名古屋駅付近の地下に東西方向に設ける。
 沿線の各県に1駅ずつ建設する中間駅の候補地は、神奈川県が相模原市、山梨県が甲府盆地南部(甲府市、中央市、昭和町にまたがる地域)、岐阜県が中津川市となっている。車両基地は神奈川、岐阜の両県内に整備する。
 リニア中央新幹線は東京~名古屋間が27年、名古屋~大阪間が45年の開業を予定。最高設計速度は時速505㌔で、車両費を含む総事業費は9兆0300億円を見込んでいる。

最優秀は実際に建築して展示/「生きるための家」テーマに東京都美術館が住宅コンペ

 東京都美術館が、学生と若手建築家を対象に、「生きるための家」という建築コンペを開いている。
生活基盤の住宅に焦点をあて、従来型の住宅を見直し、地域コミュニティと個人単位のプライバシーを重視するような、既存の発想を超えた近未来の住宅を募集する。東日本大震災で揺さぶられた価値観を超えた住宅像を模索する。年間来場者200万人を超える東京都美術館が初めて企画する建築展となる。
 最優秀作品は、リニューアルオープン後の同美術館の企画展に原寸大で展示する。審査委員長は建築家の小嶋一浩氏。
 提案は9月15日まで受け付け、9月下旬の1次審査後、12月10日に公開審査を開く。審査員は、小嶋氏と真室佳武館長、建築家の西沢立衛、平田晃久、藤本壮介の各氏。応募資格は、11年4月時点で教育機関に在籍中、または卒業後5年以内。最優秀に選ばれた作品は、約400㎡、天井高さ9mの展示室に、可能な範囲で原寸大展示する。
→東京都美術館の公募HP

現代アートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ」が開幕

 横浜市らが主催する現代アートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ2011」が6日に開幕した。「OUR MAGIC HOUR」をテーマに、横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫(BankARTStudioNYK)をメーン会場として美術作品が広大に展示される。
 特別連携プログラムとして行われる「新・港村~小さな未来都市」というイベントでは、7日に建築設計部門の公開審査を開き、応募25作品の中から、佐々木設計事務所(東京都港区)の佐々木龍郎氏が提案した『小さく住んで大きく暮らす』を特定した。
 22日に着工し、トリエンナーレ期間11月6日まで新港ピア(横浜市中区新港2-5)Dブロックに展示する。
 新・港村はBankART1929が主催。建築物の外部空間を内部空間と見なし、新たにヒューマンスケールの街をつくることを目的として、「新しいかたちの住宅」を募集した。提出25作品を小嶋一浩、曽我部昌史、馬場正尊の3氏が審査し、1次審査で5作品を選考。公開審査で佐々木氏と岩井友佑+松本晃一氏の作品を抽出して議論を重ねた結果、「スタンスにブレがない」「非常に攻撃的な考え方をそのまま掘り出している」「ストレートな提案が分かりやすい」などとして全員一致で佐々木氏の作品を選んだ。
 1次選考通過者は次のとおり(提出者=作品名)。
 ▽田中昭成(田中昭成ケンチク事務所)=雨の住宅▽藤本健生(一級建築事務所ピー・オー・アイ)=ルーフ・シェアの家▽岩井友佑+松本晃一=Triming House▽大室佑介(藤田直矢+大室佑介アトリエ)=おばけハウス▽佐々木龍郎(佐々木設計事務所)=小さく住んで大きく暮らす。

汚染土壌からのセシウム分離技術を農水省が募集

 農林水産省は、土壌から放射性セシウムを分離する技術を募集する。福島県飯舘村などで排出される実際の土壌を使った実証試験も行って効果を検証する。農水省は、表土のはぎ取りによってセシウムを低減できる見通しを立てたが、はぎ取った大量の土壌に含まれるセシウムを最終的に分離・除去する方法の確立が課題となっている。
 同省では、研究費として1応募課題当たり500万円を補助することにしており、18日まで農水省農林水産技術会議事務局研究推進課産学連携室産学連携振興班で応募書類を受け付け、今月下旬に採択課題を決める。
 化学薬品や電磁波、高圧など物理的処理で分離・除去する技術などが想定されている。
 また、水産生物が取り込んだセシウムの排出を早める蓄養技術についても募集している。これは福島県の沿岸底層域と淡水域で漁獲した軽微な汚染水産物を洗浄する方法と、淡水魚による放射性物質の取り込み経路を把握するのが目的だ。同研究の補助費は、上限1000万円となっている。

2011/08/08

伊東豊雄氏の基本設計案が明らかに/8月27日にシンポジウムも/岐阜市の新図書館


 
 伊東豊雄氏がデザインする「つかさのまち夢プロジェクト」第1期複合施設の基本設計(案)が明らかになった。これは岐阜市が整備を進めている岐阜大医学部跡地北側の図書館メーンの複合施設で、市民活動交流センターなども併設される。
 施設は、「グローブ(茂み、森)」と呼ぶ巨大な半球状の空調採光設備を天井に複数設置するデザインが特徴だ。施設の延べ床面積は約1万5400㎡で、12年度の着工、13年度中の完成を目指す。
→岐阜市の公開している基本設計案

 伊東氏は、2010年度にQBS(資質評価型)プロポーザルで、槇文彦氏、藤本荘介氏の案を退けて最優秀となった。
 このプロポーザルは、応募者のビッグネームでも大きな話題となっている。1次審査通過者は、柳瀬寛夫(岡田新一設計事務所)、安藤忠雄(安藤忠雄建築研究所)、山本圭介(山本・堀・元倉設計共同体)、新居千秋(新居千秋都市建築設計)、妹島和世(SANAA事務所)、山本理顕(山本理顕設計工場)、槇文彦(槇総合計画事務所)、鳴海雅人(佐藤総合計画)、藤本壮介(藤本壮介建築設計事務所)、石上純也(石上純也建築設計事務所)、宇野享(C+A・大建met・大建設計設計業務特別共同企業体)という名前が並んだ。
 北川原温氏を審査委員長とする選定委員会は、昨年10月から活動を始め、翌月に1次審査を、ことし1月に2次審査を行って伊東氏ら3者を選定した。その後、事務局がせんだいメディアテーク、福井県立図書館・文書館、武蔵野美術大学図書館を現地調査したうえで、2月に公開プレゼンテーションを行って最優秀を決定した。
 選定委員会は、「都市のにぎわいや新しい美の創出、岐阜の未来への予感を強く感じさせる」として伊東氏を選定した。
 「つかさのまち夢プロジェクト」は、第二期に行政施設、第三期に市民文化ホールが想定されている。
 複合施設の模型などは25日まで市役所本庁舎で展示、27日には長良川国際会議場(同市長良福光)で設計シンポジウムも開かれる。
 伊東氏自身が基本設計案を説明し、パネルディスカッションも行う。
 入場は無料。定員は先着1100人。問い合わせは、都市建設部拠点整備課・電話058-265-4141、内線2881。



生活もままならない/型枠大工も首都圏で不足に

 首都圏での鉄筋工不足に引き続き、型枠大工の減少も顕著になってきている。日本建設大工工事業協会は、毎年9月に雇用実態調査を行っているが昨年は13%の減少、「ことしはさらに減少しているのではないか」と見ている。
 ある型枠大工工事業者は「技能者が15%から20%足りない。特に型枠の解体工がいない」と話す。型枠大工、鉄筋工事各企業の稼働率は、110-120%にも達しており、「これ以上は受けられないので、断らざるを得ない」のが現状だ。加えて不足時に北海道など得ていた応援も受けられなくなっており、技能者の確保に苦労している。
 これほどまでに技能者が不足するのは、仕事の単価にあるという。2009年のリーマンショック以降から、こうした専門工事業の受注単価は下がり続け、30代40代の大工は生活するにも困り離職する人が増加した。若年層の入職も減り、中堅世代が職を去れば、今後の担い手は近いうちにいなくなる。
 日建大協の調査では、現在の就業年齢で50歳以上が全体の44%を占め、30歳未満は12%にとどまっている。

タケエイが災害廃棄物処理へ参入意志明らかに/複数エリア進出を構想

 廃棄物処理業大手のタケエイは、東日本大震災で発生した災害廃棄物の処理事業に進出する。同社は、岩手県釜石市の「災害廃棄物処理事業(試行)」を産業振興・鹿島・タケエイJVとして受注している。
 山口仁司社長は「今回の試行に続き、2カ月後には本事業に進む計画で、当社もぜひ参画し、長年のノウハウを発揮したい」と話している。釜石市以外でも各地で処理が本格化するとみており、複数エリアへの進出をめざして社内体制を整える。
 ゼネコンなどとの協働体制については、「基本的に一番最初に声を掛けてくれた企業」と組む意向だ。

2011/08/05

ヘドロが津波を抑える盛土材料に/仙台市内で土木学会が材料化試験

仙台市内での材料実験
 東日本大震災で大量に残された津波堆積物(ヘドロ)の処理に光明が差し込みつつある。土木学会が仙台市内で、砂質系のヘドロを道路などのかさ上げ材料に使える実験を行い、その実現にめどをつけた。大量のヘドロを盛土材料に再利用できれば、津波を押しとどめた仙台東部道路のように県道10号線をかさ上げする用途に使える。またヘドロ自体の処分先も選択肢が広がる。
 この実験は、8月4日に土木学会復興施工技術特定テーマ委員会(吉田明委員長)が仙台市井土処分場で行った。処分場に運び込まれたヘドロを分級して、がれきを再生した砕石の上に盛土し、振動ローラーで締め固めた。
 その結果、仙台市の荒浜地区、井土地区のものは国土交通省が定める第1種建設発生土として、蒲生地区は第2種建設発生土としてそのまま使えるレベルだということがわかった。
 ヘドロは市の負の遺産ともなっており、これを受けた仙台市では「明るい兆しが見えてきた」と評価している。
 同委員会ではこの後、粘性土系の材料も含む農地のヘドロについても試験を進め、年内に報告書としてまとめたい考えだ。

覆面記者座談会 8月5日-下- UIA東京大会に盛り上がりが足りない?

A UIA(国際建築家連合)東京大会まで2カ月を切った。震災が起きたためにトーンが下がったように感じるのだけど、盛り上がりはどうだろう。
E 原発事故の影響で、海外からの参加者が思うように集まっていないようだ。でも、震災直後の日本で開催する国際大会として、通り一遍のお祭り的なイベントではなく、震災を乗り越える機運が高まる場となればいい。こんな時期だからこそ特に、若い世代には参加してもらいたいね。
A 震災後の新しい建築のビジョンを示したいところだけど、現実は足元すらきちんと定まっていないから、世界に対して何がアピールできるのか整理しないといけないだろう。特に日本の建築界は決して一枚岩とは言い切れない。世界への発信を契機に、もう一度現実をみて、自分たちの立ち位置を確認できれば建築界も変われるかもしれないね。いま建築界がまとまらなければ、いつまとまるんだ、というくらいの気持ちで、一体感を持って世界から人を迎えられる大会にしてほしい。
F 世界に向けて日本の建築をアピールするのだから、技術力の高さにもスポットを当ててほしいね。たとえば、建材の機能性やデザイン。この大会には多くの建材メーカーが協力しているけど、裏方に徹している気がする。大会期間中に、東京ビッグサイトで「ecobuild」「Japan Home&Building Show」といった大きな展示会が開かれるけど、これはあくまで毎年恒例のイベント。UIA大会ならではのメーカーのアピールの仕方があると思うのだけど…。

覆面記者座談会 8月5日-上-新潟・福島豪雨

A 新潟、福島の両県で7月27日から30日にかけて記録的な豪雨が発生したね。気象庁は、「平成23年7月新潟・福島豪雨」と命名したが…。
B 新潟県三条市の雨量観測所は累加雨量1006mmを観測した。同県では7年前にもほぼ同じ地域で、死者16人を出す豪雨に見舞われている。そのときの雨量が647mmだったことからも、今回のすさまじさが分かる。
C 2004年の7・13水害を大きく上回る雨量でありながら被災規模を抑えることができたのは、国と新潟県が取り組んできた河川災害復旧等事業の成果の表れだろう。
D たしかに国が信濃川下流、新潟県が刈谷田川と五十嵐川で整備した築堤や護岸、河道掘削、道路付け替えなどが功を奏している。
C 信濃川下流の水位観測所は6カ所で既往最大を更新した。なかには計画高水位9・2mに対し、最高水位9・82mに達したところもあった。築堤事業が実施されていなければ、越水破堤が起こり、甚大な被害が発生していたかもしれない。事業効果が端的に出たと言える。
B 地元建設業の対応も早かった。新潟県建設業協会では国や県の要請に応え、機械出動に関する支援を行っていた。
C 決壊が心配される河川では大型土のうによる水防活動にも取り組んでいた。現場では、地域の安全・安心を守る使命感と誇りが感じられた。
D 自治体もかつての7・13水害を教訓に防災無線や携帯電話による情報提供に努めていた。それが早期避難につながったことは間違いないね。
A ただ、改修が実施されていない河川では決壊が起きた。一人暮らしの高齢者への避難情報の提供方法も課題として浮き彫りになった。東日本大震災を含め、災害対策でのハード、ソフト両面のさらなる強化が必要だ。

スカイツリーなど建設現場ツアー/ゼネコン5社がUIAの一環で募集

建設途中のスカイツリー
 日本建設業連合会の会員ゼネコン5社が建設現場や技術研究所の見学会を企画した。9月下旬のUIA2011東京大会の関連イベントとして募集する。東京スカイツリー現場や、大手ゼネコンの技術研究所、大手町の超高層ビル現場などを体験できる。
 ツアーでは、大林組が東京スカイツリーと技術研究所見学ツアーを、鹿島と大成建設が技術研究所と現場を、竹中工務店が技術研究所を、戸田建設が大手町一丁目第2地区第一種市街地再開発事業(B棟)現場をそれぞれ案内する。
 開催日は9月28日(戸田建設のみ25日)で、募集人数は20人から40人程度だ。参加費は1000円。
 詳細は同大会ホームページのツアー募集要項まで。

2011/08/04

4階建て超える大規模木造に挑戦しよう/NPO法人「team Timberize」が始動

NPOが提唱する表参道を例とした木造都市のイメージ
 4階建て延べ3000㎡以上の大規模木造建築で、社会を変えようという理念のもと、NPO法人の「team Timberize(チーム・ティンバライズ)」が発足した。この法人は、技術者とデザイナーが集まり、木の新しい価値を具現化する組織として結成。4月のNPO法人化で理事長に就任した腰原幹雄東大生産技術研究所准教授は「鉄やコンクリートと横並びになれる、新しい木の価値観を生み出したい」と目指す方向を示し、都市構築に普通に木が使われる「都市木造」を実現したい考えだ。
 公共建築物等木材利用促進法が施行されて、大規模木造建築の機運が高まっている。CO2排出量の削減もあるが、ぬくもりのある触感や造形美にも関心が集まる。NPOでは、木を使った街並みや都市を目指す。実現のためには建設業だけでなく林業、廃棄物処理業など幅広い業界が連携し、新しい社会システムを構築する必要がある。
 2000年の建築基準法改正により、法的には4階建て延べ3000㎡以上の大規模木造建築の建設が可能になった。しかし、一般市民はもちろん、建設関係者の中にも「木造は3階建てまで」といまだに思い込んでいる人が多い。
 NPOの活動は、建築だけでなく、林業や廃棄物業界までも巻き込んだ都市木造の実現を探っている。
 都市木造は、すでに実現しているプロジェクトも多く、東京木材問屋協同組合の木材会館(東京都江東区、設計=日建設計)、埼玉県と春日部市の共同事業として施工が進む東部地域振興ふれあい拠点施設(設計=山下設計)などがある。計画中では、下馬の集合住宅プロジェクト(東京都世田谷区、設計=KUS一級建築士事務所)もある。


青木淳氏、「ぼよよん」がテーマ/マングース・スタジオと協働で企画展

会場で説明する青木氏
 建築家の青木淳氏が、「ぼよよん」をテーマにした企画展を開いている。会場には、らせん状のバネを集めたような白い工作物が並んでいて、触れると「ぼよよん」と音がする。協働したのがクリエイティブ集団「マングース・スタジオ」で音と光を担当した。
 青木氏は「建築というと、きちんとして、カチッとしたもの。そういうものではないものをつくろうと思った。それが『ぼよよん』だった。違う意味でのデザインだと思う。音のイメージからデザインを考えた」と話す。マングース・スタジオによると、音は「ぼよようん」と聞こえるという。34個の加速度センサーが揺れを感知して音と光を演出する。
 この「第9回オカムラデザインスペースR企画展」は、東京・紀尾井町のオカムラ・ショールーム(ホテルニューオータニ・ガーデンコート)で開かれている。岡村製作所主催、同企画実行委員会(委員長・川向正人東京理科大教授)企画で毎年1回、建築家と建築以外の領域の表現者との協働をコンセプトに開いている。川向氏によると、「ぼよよん」は、耳には柔らかいが、外力を加えると形を変えて再び均衡をとって静止する物質的存在形態を想起させるという。
 会期は12日まで。時間は午前10時から午後6時。入場無料。

高校生の橋梁模型を大募集/橋建協らがコンテスト

昨年度の最優秀「錦桜橋」
 高校生を対象にした橋梁模型製作コンテストがことしも開かれる。土木系で将来の社会資本整備を担う東北地方の高校生を対象に、第10回「高校生『橋梁模型』作品発表会」が開かれる。日本橋梁建設協会東北事務所とプレストレスト・コンクリート建設業協会東北支部、東北建設協会、海洋架橋・橋梁調査会東北支部、建設コンサルタンツ協会東北支部、東北地方整備局東北技術事務所の6団体でつくる実行委員会が主催、模型づくりを通じて橋の種類や構造に関する知識を深めてもらうとともに、ものづくりの楽しさを体験してもらう。
 応募は9月30日まで。作品提出は2012年1月20日まで受け付ける。同2月上旬に1次審査、同下旬に2次審査と入賞作品の表彰式を行う予定だ。
 応募資格は、東北6県の土木を学ぶ高校生で、個人・グループとも参加できる。作品の課題は、▽国内外を問わず実在する橋・過去に存在した橋の模型▽実際にはない型式・構造の橋、夢のある橋の模型--とする。構造計算などの裏付けは不要だが、運搬の際に破損・損傷しない強度を求める。
 応募作品の中から最優秀賞1点(副賞3万円)、優秀賞2点(同2万円)、審査員特別賞1-2点(同1万5000円)、努力賞5-6点(同1万円)を選定する。応募全作品に対して1点当たり5000円の参加賞を贈る。
 申し込み・問い合わせは事務局(電話022-365-8047)。http://www.thr.mlit.go.jp/tougi/event/contest/H23/index.html

2011/08/03

石岡市立やさと中央保育所/横須賀満夫建築設計事務所

 2010年4月にオープンした石岡市立やさと中央保育所は、筑波山の山並みを建築に取り入れた。筑波山のすそ野に広がる茨城県石岡市柿岡地区に建築されたこの保育所は、廊下を街道に見立てて両側に宿場があるように部屋を配置し、廊下の先には筑波山が見えるようにした。柿岡地区は、宿場町としても栄えた地区で、園児に原風景、街並みを感じてもらおうと考えてのデザインだ。
 温もりを感じてもらうため、材料には県産材を全面的に採用、構造的には大断面の梁だけでも良かったが、木構造をより意識できるよう梁を支える方杖もそのままの表しとして設けた。
 外観も、筑波山の山並みを連続して取り入れ、建物自体もゆるやかなカーブを描いている。またそのカーブが、職員室から園庭や廊下まで見渡せる管理面でも優れたレイアウトとなった。
 隣には高齢者施設や小学校、寺院などがある。設計を担当した横須賀満夫建築設計事務所(水戸市)の菊地茂光氏は「単に保育所をつくるだけでなく、高齢者、小学生との異世代交流を促すよう周囲の施設との連携を考えた」という。小学校側には玄関、高齢者施設側には中庭を設けるなど工夫している。
 園児が保育室を通らずに直接、園庭と廊下を行き来できる“トンネルみち”も設け、昨年夏にはお化け屋敷としても使われた。室内外の変化に富んだ空間に子どもたちの歓声は絶えない。