2011/06/30

福島第一原発 建屋カバー工事が本格化

 水素爆発などにより原子炉建屋上部が開放されたままの福島第一原子力発電所1、3、4号機で、放射性物質の飛散を抑制する建屋カバーの設置工事が本格化している。施工に当たってはスピードを重視した設計・施工方法を取り、作業員が極力近づかずに施工できるように配慮した。古来から木造建築に用いられてきた伝統工法のほか、3次元レーザースキャンなど最新技術を導入。先行している1号機は9月下旬の完成をめどに、清水建設と日立GEニュークリア・エナジーのJVで本体工事が進行中だ。鹿島と東芝のJVが施工する3号機、竹中工務店と日立GEのJVが担当する4号機では、作業エリア整備などの準備工事が進む。
 建屋カバーは平面寸法約47m×約42mの長方形で、高さは約54m。建築基準法に準じた設計を行い、地震荷重は水平震度0・2、風圧力は風速毎秒25m、積雪荷重は深さ30cmを確保した。外周に建てた4本の柱とそれをつなぐ梁からなる鉄骨架構に、防水性の膜材(塩化ビニル樹脂コーティングポリエステル繊維織物)を張った壁パネル・屋根パネルを取り付け、建屋全体を覆う。
 天井部に設ける吸込口から内部気体を吸引し、排気ダクトを経由して外部のフィルターユニットに導く。高性能粒子フィルター、ヨウ素用チャコールフィルターなどを通して放射性物質を捕集した上で、排気ダクトから大気放出する。

◇750tクレーンで大型ユニット組立て
 本体工事では工期短縮と作業員の被ばく低減のため、さまざまな技術を取り入れた。現在、小名浜港で行われている大型ユニット化作業は鉄骨梁を最大長さ約40m、壁用膜材パネルを約20m角、屋根パネルを長さ約40mに整形。各部材は船で現場に移送し、国内最大級の750tクローラクレーンで組み立てる。
 鉄骨と膜材パネルの接合部は、伝統工法の「嵌合(かんごう)接合」をヒントに新たに開発した。ボルトなどを締める作業が不要になり、作業員は組立現場に近づかなくて済む。 遠隔操作による施工を行うため、最新の計測・制御技術も導入する。具体的には、吊り材の回転制御やワイヤーの無線取り外しが可能なシステム、建屋各部の正確な3次元位置を測定するレーザースキャン技術、組立中の部材位置をリアルタイムに測定・制御できる技術などを採用。3次元CG(コンピューターグラフィックス)を用いた施工シミュレーションも行っている。
 建屋カバーの設置は、あくまでも応急措置として実施するもので、いずれは一部または全部を解体することが前提になっている。飛散防止の本格措置には、コンクリートなどで屋根・外壁を囲む「コンテナ」の設置が考えられており、1、3、4号機とも基本設計が進められている。

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